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背中が語る浪漫と癒しの焙煎コーヒー。〈Tomita coffee roastery _学園西町〉

藤乃木で膨れたお腹を抱えて、学園西町の市役所通りを歩く。ここはいわゆるノスタルジーな街並み。線路沿いの建物はほとんどが古く、飲み屋や昔ながらの商店の看板が、なつかしい風景を演出している。

通りを北に向かって歩くとあらわれる不自然な三角地帯。このあたりにはかつて一橋大学駅があったいう。一橋学園駅から歩いてもさほど遠くないこのエリアにもうひとつ駅があったとは。
子どもが小さかったいつかの夏に、このロータリーで盆踊りをしたっけ。お祭りデビューにちょうどいいアットホームなお祭りだったと、ぐるりと腹ごなしをして思い出に浸る。

冬には謎のイルミネーションが光るロータリーの向かいに、青い軒先テントにガラス張りの明るい店頭。
2021年にオープンしたTomita coffee roastery(トミタコーヒーロースタリー)は、店主の冨田さんがこだわりの豆をそれぞれの好みに合わせて焙煎してくれる。

「こんにちは〜」
と店内に入ると
「お久しぶり〜」
冨田さんの笑顔で迎えられホッとする。

この日はクリスマス目前の平日だった。おすすめのクリスマスブレンドが店頭に並んでいたので、カフェスペースで1杯いただくことにした。

レジの奥でカラカラと回りながら、焙煎機の中でコーヒー豆が色を変えていく。
冨田さんは豆が焼ける音の変化を聞き逃さず、お客さんのオーダー通りに、ちょうど良い焙煎具合を判断して、さっと豆を引き上げる。その一瞬で味が変わるのかと思うと、コーヒーは本当に奥深い。

今度はわたしが注文したドリップコーヒーと向き合う。ゆっくりじっくりとポタポタ落ちる雫が時を刻んでいく。湯気に乗って香りが立ち昇り、ふんわりとわたしのもとに届く。そのやさしい香りを、胸いっぱいに吸い込む。

不思議と表情まで見えるような、なんともあたたかい冨田さんの後ろ姿からはコーヒーへの愛を感じる。

「お待たせしました」
と目の前にカップが置かれると、たちまち鼻腔をくすぐる心地よい香り。
ゴクっと一口。やさしい口当たりでほんのり甘い。二口、三口と飲む。さっきのとんかつが一気に消化されるような爽やかさもある。
これは…クリスマスのごちそうの後にケーキと一緒に飲みたい!目の前にクリスマスの団欒が浮かぶよう。

「冨田さん、これめちゃくちゃおいしいです!」
「でしょ?」とにこり。
味に自信を持っている職人の顔。毎日本気で向き合っているからこその揺るぎない自信。その表情に全幅の信頼を置いている。

じっくり一杯を味わって、お腹もだいぶ落ち着いた。
忘年会で会う予定の知人へのお土産にクリスマスブレンドを購入し店を後にする。

冨田さんの人柄を含めたこの空間とコーヒーは焙煎アロマテラピーだ。藤乃木からのトミコ、満腹と癒しを堪能できるおすすめのコースです。

(お)

【Tomita coffee roastery】
東京都小平市学園西町1丁目20−11 稔ビル 1F

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