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倉山満『桂太郎』

【桂太郎の人生に老害の二文字無し】

存在自体が有益だと勘違いした人間、それが老害である。稼ぐ能力、社会的地位、教養(何が大事か判断する為の下地になる知識)。この3つのバランスが崩れると老害が発生すると考えられる。

能力と地位が伴っていない人間はあなたの身近にもいるだろう。政治家、官僚、経団連、労働組合、社会を動かす立場でも既得権益層は老害ばかりだ。
徳川幕府という歴史に残る老害を消毒した偉人が元老だが、それでも時代の流れに合わせて自身を高め続けていくのは難しかった。影響力が強い分、老害化すると手が付けられない。山形有朋はその典型である。

魂にも脂肪はつく。それを防ぐのが教養であり、より高みを目指そうとする知識欲なのだ。時代に流されないところに学問の本質がある。桂太郎は病弱だったが、時間を作っては留学しようとする。政軍関係を学び、金の工面に奔走し、元老、政党の調整に消耗しつつも、慣れない財政に取り組み自信をつけていく。

誰しも老いていくしその過程で病気になることも事故に遭うこともある。自分が平気でも旧知の仲間に先立たれると、弱気にならざるをえない。桂の晩年も晩年に焦りがみられるが、これを耄碌したと突き放すことは私には出来ない。安倍政権は桂太郎を抜き、通算最長記録を更新した。日英同盟を結び、日露戦争を勝利に導いた桂太郎。日銀人事に介入しデフレ脱却に向かうと見せかけ2度も増税した安倍政権。政治家として主体性に行動したのはどちらか今一度比較して欲しい。

文章から人物像が読み取りやすく、何も知らない一般人でも流れが掴める。私もそれに倣って、歴史や政治に関心が無くとも重要性が伝わるような文章を心がけていきたい。

補足;千葉功『桂太郎』同じ人物が主題でも著者が違うとこんなに違うものか。一方は研究者の内向きな一冊であり、もう一方は桂太郎を知らなくても読める一冊である。「桂は政党を軍隊と同一視していたきらいがある」「藩閥第一世代に比べて明確で強固な国家観がない」それを言うなら原敬でしょう。小村寿太郎のが優秀な外交官だった事も少し触れただけで、原敬の有害さがほとんどスルーされていた点は大いに疑問だった。

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