見出し画像

賞味期限1年前のちょっと特殊なクラフトビールを飲んだら化けていた

面白いものを飲んだ。
チリだと思ったらベルギーだった。って感じです。

今日は何のビールを飲もうかなと思い、冷蔵庫を物色。
すると、いつも視界には入っていたが避けていた瓶に何故か今日は手が伸びた。

それが「イリーガル」。
チリ産のクラフトビールとチリ産のソービニヨンブラン種の白ワインをブレンドし、瓶内二次発酵させた特殊なビール。(正直ビールなのかワインなのか不明。ちなみに区分は発泡酒。)
https://www.arcane.co.jp/news/20170417/

そんな世にも珍しいビールなのだが、賞味期限は2019年2月
すなわち1年以上前に飲み干さなければならなかった商品だ。
確か面白がって仕入れたけど、売り切らないでほっといたから期限間近になって買わされた記憶がある。ずっと冷蔵庫に入れてたから大丈夫だろう。
ということで今夜のお供はこいつに決まり。
しかし、フレッシュ&フルーティーだと思っていたこのビールは、なかなかファンキーな味わいに姿を変えていたのだ。

まず栓を開ける。
賞味期限1年切れにしては炭酸は抜けていない。さすがは瓶内二次発酵。色も明るくクリアなイエローである。

しかし、グラスに鼻を近づけるとすぐに違和感を感じた。
臭う...
香るじゃなくて臭う。

でもあくまで不快感ではない。とは言うものの、いろんなビールを飲んだことがある自分だからこそこの匂いに動じていないのかもしれない。
というのも、この臭いはベルギーのランビックなどの野生酵母ビールで良く感じるタイプのものだからだ。
独特のカビや埃、チーズ、濡れた布、図工室みたいな感じ。
あまり好感を持てる例えではないが、ほんとにそんな感じの臭いなのでこれが苦手な人もたくさんいるであろうことは事実だ。

そんな自分はこの臭いはけっこう好きだったりする。
だから「ふーん、こう来たか。」それくらいの感覚だった。

次に味を見てみる。
口に含むと、程よい炭酸が舌や喉を刺激し、酸のあるキレのある味わいが楽しめた。もちろん”あの臭い”を纏ってはいるが。
率直な感想としては、ベルギーのランビックという印象を受けた。むしろランビックよりは香りも酸味も穏やかなので、セッションランビックのような味わいで好感すら持てた。
けっこううまいぞこれ!当たりやんけ!

こんな感じで今夜の晩酌は歓喜の祝杯へと変わったわけなのだが、問題はなぜこんな味と香りが生まれたのかということである。

もともとこの「イリーガル」は、ビールの麦のコクとワインのフレッシュな酸味、そして瓶内二次発酵のきめ細やかな炭酸がウリの商品だ。
それがベルギーを代表するくせ者ビールのランビックのような味わいに変貌を遂げている。

最初に疑ったのは還元臭だ。
還元臭とは、瓶の中に残った酵母やオリによって瓶の中の酸素量が減少することによって発生する硫黄などの香りのこと。瓶内二次発酵のワインや自然はワインによく見られる。
このビールも瓶底に酵母のようなものが溜まっていたし、瓶内二次発酵なのでその可能性を考えた。還元臭は酸化すると揮発するので、グラスをよく振ってから飲んでみた。そうすると確かに独特な香りは減った気がする。
ただ、正直あまり還元臭に慣れていないせいか、その説に自信がもてない。

その次に考えてみたのが、野生酵母の混入だ。
もしかしたらブレタノマイセス酵母がどこかのタイミングでビールの中に入り込んだのかも。
ブレタノマイセス酵母とは野性酵母の一種で、非常に活動が旺盛で発酵度が高く、独特の馬小屋臭をビールにもたらす。還元臭というよりも、このいわゆるブレタノ臭と言われたほうがビール慣れしている自分にはしっくりくる。実際、あの香りをかいだ時に真っ先に思い浮かんだのがランビックだった。

ここで仮にあの香りがブレタノ臭だとすると、ブレタノマイセス酵母は瓶詰した後でもビールの中に入り込むということが考えられる。
その辺については今パっと調べてもわからなかったので、今後調べていきたいと思う。

いやぁ、それにしても思わぬところで疑似ランビック体験ができてしまった。
ちょっと今日はホクホクしながら床につくことができそう。
実は同じ状態のイリーガルがもう一本あるので、もう少し寝かしてからまた飲んでみようと思う。どうなるか楽しみ。

おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?