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おフランスの日本酒を飲んで思った、日本酒のすごいところ

先日、フランス産の日本酒を飲んだ。

海外の日本酒を飲んだのはこれが初体験。
アメリカやフランスでは日本酒造りにチャレンジする人が増えていることは前々から聞いていたが、なかなか飲める機会が無かった。そんな中でようやく飲むことができた海外の日本酒は、意外にもしっくりくるものだった。

ということで今回飲んだフランスの日本酒についてのレビュー的なものと、それを飲んで考えた日本酒のことについて書いていきたいと思う。

飲んだ日本酒は「昇涙酒造」という蔵の3アイテム。
酒蔵についてはこちらを参考に。
https://intojapanwaraku.com/travel/3242/

1. 昇涙酒造 「浪」

色は薄めの緑茶のような感じ。
香りは熟成香が強い。はちみつやカラメル、キノコを思わせる。
味わいは甘味が強く、香ばしい。とはいえ甘味は後引かず、ほのかな苦味・旨味が残る。余韻は中程度。
70%精米・アルコール13.5%。常温でいただいた。

2. 昇涙酒造 「雷」

色は濃いカツオだしのよう。透明感のある琥珀色。香りは非常に強く、濃厚なみりんの風味。紹興酒のようなカラメル感がある。味わいはとてもどっしり。甘味は抑えめで酸味も強すぎない。後味に来る苦味が印象的で、余韻に紹興酒に似たカラメル香が長く続く。80%精米・アルコール度数17.5%。上燗でいただいた。

3. 昇涙酒造 「風」

色は薄めのりんごジュース。香りはリンゴ系の熟したフルーツのニュアンス。香りのレベルは中程度で、麹の要素と熟成香も少し感じられる。味わいは甘味がはっきりしている。酸味は中程度でアルコール感は強め。後味に旨味と苦味があり、綺麗なフィニッシュ。余韻のほろ苦さが心地よい。50%精米・アルコール16.5%。常温でいただいた。

4. 全体を通して思ったこと

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フランス産の日本酒ということでワクワクして注文したところ、出てきたのはゴリゴリに伝統的な純米酒だった。しかもお燗で美味しいタイプだという徹底ぶり。
でもこの「温めて美味しい」という点こそが、日本酒の特徴であり良いところなのではないかと思う。

お湯割りにして飲むお酒はたくさんある。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒や一部のリキュールなどのことだ。
では醸造酒ではどうかというと、日本酒のほかには紹興酒くらいしか思いつかない。紹興酒は日本酒と同じ米と麹を使った並行複発酵でつくられる醸造酒だ。作り方は似ているが、完成したお酒の特徴は似ているようでかなり異なる。

日本酒は紹興酒に比べてクリアな味わいだ。
そのため大抵の日本酒は冷やしても温めてもうまい。この懐の深さこそが日本酒の一番の強みなのではないか。
特に食事とのペアリングを考えるとき、一つの日本酒に対して冷酒・常温・熱燗の温度帯によってアプローチは変わってくる。温度変化によって味覚の感じ方と香りの立ち方は変わる。

今回飲んだ昇涙酒造のお酒の中で私の一番のお気に入りは「雷」だ。
精米歩合が80%で、日本酒の中ではあまり米を削っていないほうに分類される。いわゆる低精米酒ってやつだ。それを熱めの温度で飲んだ。

このお酒を飲みながら食べる〆鯖サンドはとてもうまかった。
〆鯖の酸味と旨味、トーストの香ばしさ、わさびマヨネーズのコクと辛味。これだけでも十分美味しそうなのだが、これに雷を合わせたところグッと味の奥行きが広がった。追加された味の要素は主に甘味と苦味。これによって味覚の5つの要素が揃った。口の中に広がる5つの味わいは何層にもわたる美味しさを生み、なんとも言えない満足感をもたらしてくれた。熱燗を合わせたことも美味しさに寄与しているはずだ。おそらくこの雷は低温では豊富なアミノ酸や乳酸によって味が濁ってしまうはず。さらに温度を上げれば熟成香が良く立つので、〆鯖の生臭みをマスキングしてくれる。
このペアリングがあったこそ、私のなかで低精米の雷が印象に残っているはずだ。

この体験から、ペアリングは本当に素晴らしいものだと再認識させられた。さらにその中から考えさせられたのが、日本酒の強みは温度帯の広さであるということ。
最近離れていた日本酒の世界にまた引き込まれそうだ。熱燗万歳。

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