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フリーになりました

2018年6月、マガジンハウスを退職しました。創刊間もない『Hanako(ハナコ)』から始まり、『anan(アンアン)』、『Tarzan(ターザン)』、『POPEYE(ポパイ)』、『Casa BRUTUS(カーサブルータス)』、新雑誌準備室、書籍編集部、ムック編集部と、いろいろな雑誌やムックや書籍の編集を30年近く経験しました。『POPEYE(ポパイ)』、『Hanako(ハナコ)』では副編集長を、『anan(アンアン)』では編集長も務めました。

次に何の仕事をするか具体的なビジョンもないまま、“とりあえず”ぬるま湯を飛び出したわけですが、思いがけず、webメディアのディレクションやコンテンツマーケティングなど、紙に限らない「編集」の仕事はいろいろあるものです。フリー編集者として、いくつかのプロジェクトに声をかけてもらううちに、2つのことを思うようになりました。

まず、必ずしも「編集」という仕事が理解されていないこと。「編集」は資格ではないし、手に職があるとも言えません。仕事内容も出版社によって編集部によってまるで違ってくるし、実際いろいろなタイプの編集者がいて正解があるわけでもありません。だから仕事を発注する側の認識もまちまちで、「webメディアですべての原稿に目を通す」ことを求められたり、「セミナーのサマリーを書いて」と言われたり、「適任のライター、カメラマンを紹介して」ということもあります。原稿を読んで校正もするし、要約(サマリー)も書くし、ライター、カメラマンのスタッフィングも編集の仕事ですが、核はそこではないのです。その核になる部分は見えにくく、記事の本数のようにカウントできるものではないので報酬も決めにくい現実があります。

2つ目は、「編集」については圧倒的に“外注”丸投げが多いこと。プロジェクト内の人は本業で忙しく「コンテンツ制作、編集は外注で」という流れです。そもそも私に声をかけてくれる時点で“外注”ですが、「編集力」を付ければ誰でも「編集」ができるのに、プロジェクト内に「編集者」を置かないのはもったいないと思います。プロジェクトに深く関わる人が「編集力」をつけ、あるいはチーム内に「編集者」を育て、その上で制作を“外注”するのはいいのですが、「クリエイティブはわからないからプロの制作会社に」という丸投げでは、後々まるでクオリティが違ってきます。「編集」のどんな技術より、プロジェクト内の熱い想いに勝るものはないからです。

そもそも「編集力」というのは、いわゆる編集者にだけ必要な能力ではありません。セールス、マーケティング、PR、宣伝、広報はもちろん、すべての業界、業種、職種に役に立つ技術です。自己紹介、営業トーク、接客、打ち合わせ、上司への説得、他部署へのメール、部下への説明、プレゼンテーション、スピーチ、企画書、報告書…、日常の業務のほとんどに、もっと言うと、仕事以外でも、家族、友達、恋人、地域社会…、あらゆる人間関係にも関わります。

noteでは、30年を振り返りながら、「編集力」というのはどういうことか、「編集力」をつけるにはどうしたらいいのかを、考えてみたいと思います。「時代が違う」ところはもちろんありますが、私自身、3年前の仕事より30年前の仕事に考え方のヒントがあったりします。なので、どこかひとつでも、そのプロジェクトに役立つことがあればうれしいです。

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