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太宰治『黄金風景』全文にツッコミを入れてみた
以下、本文は「青空文庫」からの引用である。
私は子供のときには、余り質のいい方ではなかった。女中をいじめた。
この……ませたお子様め!
私は、のろくさいことは嫌きらいで、それゆえ、のろくさい女中を殊ことにもいじめた。お慶は、のろくさい女中である。
そんな「のろくさい」「のろくさい」言わないであげてください。お慶はなにをしたっていうんですか!
林檎の皮をむかせても、むきながら何を考えているのか、二度も三度も手を休めて、おい、とその度毎にきびしく声を掛けてやらないと、片手に林檎、片手にナイフを持ったまま、いつまでも、ぼんやりしているのだ。
たしかにナイフもったままぼんやりしてたらこわいわな。
足りないのではないか、と思われた。台所で、何もせずに、ただのっそりつっ立っている姿を、私はよく見かけたものであるが、子供心にも、うすみっともなく、妙に疳にさわって、おい、お慶、日は短いのだぞ、などと大人びた、いま思っても脊筋の寒くなるような非道の言葉を投げつけて、それで足りずに一度はお慶をよびつけ、私の絵本の観兵式の何百人となくうようよしている兵隊、馬に乗っている者もあり、旗持っている者もあり、銃担っている者もあり、そのひとりひとりの兵隊の形を鋏でもって切り抜かせ、不器用なお慶は、朝から昼飯も食わず日暮頃までかかって、やっと三十人くらい、それも大将の鬚を片方切り落したり、銃持つ兵隊の手を、熊の手みたいに恐ろしく大きく切り抜いたり、そうしていちいち私に怒鳴られ、夏のころであった、お慶は汗かきなので、切り抜かれた兵隊たちはみんな、お慶の手の汗で、びしょびしょ濡れて、私は遂に癇癪をおこし、お慶を蹴った。
ちょっと一文長すぎませんか???永遠と句読点がつづくんだが!?あと、お慶のいやなところ延々と書いてるけど、めちゃめちゃ好きやん。好きな子につい虐めたくなっちゃう小学生男子かよ。
たしかに肩を蹴った筈なのに、お慶は右の頬をおさえ、がばと泣き伏し、泣き泣きいった。
肩を蹴った…?どういう状況???
「親にさえ顔を踏まれたことはない。一生おぼえております」うめくような口調で、とぎれ、とぎれそういったので、私は、流石さすがにいやな気がした。
アムロの名ゼリフがきた……ッ!(当然だがこっちが先)
そのほかにも、私はほとんどそれが天命でもあるかのように、お慶をいびった。いまでも、多少はそうであるが、私には無智な魯鈍の者は、とても堪忍できぬのだ。
激おこで草
一昨年、私は家を追われ、一夜のうちに窮迫し、巷をさまよい、諸所に泣きつき、その日その日のいのち繋ぎ、やや文筆でもって、自活できるあてがつきはじめたと思ったとたん、病を得た。
急にどん底になったやん。なんでやねん。あ、、、(察し)
ひとびとの情で一夏、千葉県船橋町、泥の海のすぐ近くに小さい家を借り、自炊の保養をすることができ、毎夜毎夜、寝巻をしぼる程の寝汗とたたかい、それでも仕事はしなければならず、毎朝々々のつめたい一合の牛乳だけが、ただそれだけが、奇妙に生きているよろこびとして感じられ、庭の隅の夾竹桃の花が咲いたのを、めらめら火が燃えているようにしか感じられなかったほど、私の頭もほとほと痛み疲れていた。
闇堕ちしたぞ…ッ
そのころのこと、戸籍調べの四十に近い、痩せて小柄のお巡りが玄関で、帳簿の私の名前と、それから無精髯のばし放題の私の顔とを、つくづく見比べ、おや、あなたは……のお坊ちゃんじゃございませんか?
髭はちゃんと剃ろう。無精髭でカッコイイのは斎藤工くらいしか知らないな…。
そう言うお巡りのことばには、強い故郷の訛なまりがあったので、「そうです」私はふてぶてしく答えた。「あなたは?」
「そうです。私が変なおじさんです」が頭をよぎったじゃないか。
お巡りは痩せた顔にくるしいばかりにいっぱいの笑をたたえて、
「やあ。やはりそうでしたか。お忘れかもしれないけれど、かれこれ二十年ちかくまえ、私はKで馬車やをしていました。
Kとは、私の生れた村の名前である。
「馬車や」ってなに???馬貸し出しのサブスクでもやってたの???
「ごらんの通り」私は、にこりともせずに応じた。「私も、いまは落ちぶれました」
あぁ、過去の栄光を忘れられないタイプだきっと。
「とんでもない」お巡りは、なおも楽しげに笑いながら、「小説をお書きなさるんだったら、それはなかなか出世です」
私は苦笑した。
「あなたの半生、本にしてみませんか?」と依頼をする出版社みたいな言い方やん。
「ところで」とお巡りは少し声をひくめ、「お慶がいつもあなたのお噂をしています」
このお巡りさんとお慶が知り合いなのはもはやご都合が良すぎる展開…
「おけい?」すぐには呑みこめなかった。
船橋に住んでいたら聞かない名で驚くのも無理ない
「お慶ですよ。お忘れでしょう。お宅の女中をしていた――」
思い出した。ああ、と思わずうめいて、私は玄関の式台にしゃがんだまま、頭をたれて、その二十年まえ、のろくさかったひとりの女中に対しての私の悪行が、ひとつひとつ、はっきり思い出され、ほとんど座に耐えかねた。
回想シーンはだいたいエモいってあるよね
「幸福ですか?」ふと顔をあげてそんな突拍子ない質問を発する私のかおは、たしかに罪人、被告、卑屈な笑いをさえ浮べていたと記憶する。
宗教勧誘みたいなしゃべりだし。普通は「元気にしてますか?」じゃない…?
「ええ、もう、どうやら」くったくなく、そうほがらかに答えて、お巡りはハンケチで額の汗をぬぐって、「かまいませんでしょうか。こんどあれを連れて、いちどゆっくりお礼にあがりましょう」
ええお巡りさんじゃん。
私は飛び上るほど、ぎょっとした。いいえ、もう、それには、とはげしく拒否して、私は言い知れぬ屈辱感に身悶みもだえしていた。
昔虐めてた女中が今幸せだったら嫉妬するんやろか。
けれども、お巡りは、朗かだった。
「子供がねえ、あなた、ここの駅につとめるようになりましてな、それが長男です。それから男、女、女、その末のが八つでことし小学校にあがりました。
お慶のそれからの人生、順風満帆やなぁ
もう一安心。お慶も苦労いたしました。なんというか、まあ、お宅のような大家にあがって行儀見習いした者は、やはりどこか、ちがいましてな」すこし顔を赤くして笑い、「おかげさまでした。お慶も、あなたのお噂、しじゅうして居ります。
やめて!主人公のライフがあと少しよ!このまま話し続けたら主人公の命が危ない!
こんどの公休には、きっと一緒にお礼にあがります」急に真面目な顔になって、「それじゃ、きょうは失礼いたします。お大事に」
それから、三日たって、私が仕事のことよりも、金銭のことで思い悩み、うちにじっとして居れなくて、竹のステッキ持って、海へ出ようと、玄関の戸をがらがらあけたら、外に三人、浴衣ゆかた着た父と母と、赤い洋服着た女の子と、絵のように美しく並んで立っていた。お慶の家族である。
まさかの一家総出でお出迎え…
私は自分でも意外なほどの、おそろしく大きな怒声を発した。
「来たのですか。きょう、私これから用事があって出かけなければなりません。お気の毒ですが、またの日においで下さい」
茶の1杯出してあげなよ〜〜〜
お慶は、品のいい中年の奥さんになっていた。八つの子は、女中のころのお慶によく似た顔をしていて、うすのろらしい濁った眼でぼんやり私を見上げていた。私はかなしく、お慶がまだひとことも言い出さぬうち、逃げるように、海浜へ飛び出した。竹のステッキで、海浜の雑草を薙ぎ払い薙ぎ払い、いちどもあとを振りかえらず、一歩、一歩、地団駄踏むような荒んだ歩きかたで、とにかく海岸伝いに町の方へ、まっすぐに歩いた。私は町で何をしていたろう。
主人公の闇堕ちpart2
ただ意味もなく、活動小屋の絵看板見あげたり、呉服屋の飾窓を見つめたり、ちえっちえっと舌打ちしては、心のどこかの隅で、負けた、負けた、と囁く声が聞えて、これはならぬと烈しくからだをゆすぶっては、また歩き、三十分ほどそうしていたろうか、私はふたたび私の家へとって返した。
人間、考え事するときは出歩きがち
うみぎしに出て、私は立止った。見よ、前方に平和の図がある。お慶親子三人、のどかに海に石の投げっこしては笑い興じている。声がここまで聞えて来る。
「平和の図がある」ええな〜〜〜いい表現だ
「なかなか」お巡りは、うんと力こめて石をほうって、「頭のよさそうな方じゃないか。あのひとは、いまに偉くなるぞ」
「そうですとも、そうですとも」お慶の誇らしげな高い声である。「あのかたは、お小さいときからひとり変って居られた。目下のものにもそれは親切に、目をかけて下すった」
私は立ったまま泣いていた。けわしい興奮が、涙で、まるで気持よく溶け去ってしまうのだ。
負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える
時代がたがえばパワハラといわれてもおかしくないのに、主人公の悪行をなんともなかったかのように振る舞うの好きだ〜
今回も太宰治『黄金風景』をとりあげた。1,2を争うくらい好きな短編作品である。最初は「好きな女の子にいじわるをする小学生男子」のような描かれ方をするが、主人公も大人へと成長してお慶のやさしさに涙する。という、なんという素敵な結末なことでしょう。15分くらいで読める超短編なのでぜひ読んでみてほしい。
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