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ノルウェーのスーパーで見かける意外な日本語

Sushi、ramen、anime、karaokeなど海外で使われる日本語は近年増えている。それぞれの言語に訳されないまま、日本語がそのまま使われているのは、これらのモノが世界で浸透しているからであるだろう。最近ではkawaii、omakase、mottainaiなどの単語も世界に浸透しつつある。

このムーブメントは北欧ノルウェーにも来ている。僕もノルウェーのスーパーで様々な日本語を発見する。「わさび」や「のり」など和食によく使われる食品は以前からローマ字で商品名として使われている。

だが、最近は意外な日本語もスーパーで見かけるようになった。今回は、まだ日本人に知られていない海外で使われている日本語を紹介したい。

筆者がスーパーの果物コーナーを歩いていたら「Nashi pære」と言う表記を見かけた。聞き馴染みのある言葉に惹かれて商品を覗いてみると果物の「梨」であった。「pære」とはノルウェー語で洋梨のこと。スーパーの商品名を直訳すると梨洋梨になる。似たような事を二回繰り返している。もちろん「nashi」という単語はノルウェーを含め海外で浸透していない。ノルウェーの消費者に商品を正確に伝えるために、後ろにノルウェー語の「pære」を付け足したのだろう。

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しかし、なぜ世界で浸透していない無名の単語「nashi」を商品名に使ったのだろう。筆者は日本を梨大国と思ったことは一度もない。実際、梨の生産量トップは アルゼンチンやイタリアであり日本はランキング上位に入っていない。日本で一世風靡した梨の妖精ふなっしーが海外に浸透しているわけでもない。ではなぜノルウェーのスーパーの商品名に「nashi」という単語が使われていたのだろう。


よく考えてみると日本とノルウェーで販売されている梨は品種が違う。日本のスーパーで販売されている一般的な梨は丸く黄色く、見た目はりんごに似ている。その一方、ノルウェーのスーパーで販売されている梨は厳密に言うと洋梨であり、ひょうたんの様な形をしている。品種が違うにも関わらず、両方の言語をミックスするのは不自然ではないか。日本語とノルウェー語の両方の言語を知っている者からすると「Nashi pære」は違和感を感じる商品名である。


実は日本語+ノルウェー語の表記は他にも存在する。筆者は冷凍食品コーナーで販売されている「Edamame bønner」を見かけたことがある。「bønner」とはノルウェー語で豆のこと。直訳すると枝豆豆と再び繰り返しがされている事が分かる。世界最大の枝豆の生産国は中国であり、枝豆=日本文化というイメージが世界で定着しているわけでもない。まして去年のゆるきゃらグランプリで344位を獲得した岐阜県の枝豆畑で産まれた「まめたん」が世界的スターになり、枝豆という単語が世界に浸透しているとも考え難い。なぜ枝豆という単語がノルウェーのスーパーで使われているのだろうか。

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ここでつべこべ言ってもノルウェーのスーパーの食品担当者から連絡は来ないだろう。少なくとも「nashi」と「edamame」だけではノルウェーの消費者にどのような商品か伝わらないため、後ろにノルウェー語の単語を付け足した事は予想できる。ノルウェーには新商品やあまり知られていない異国の食品に積極的に挑戦するような人が日本ほど多くない。そのため、日本の食品メーカーやコンビニのように頻繁に新商品が発売されるようなことはない。これはシャイな国民性も関係しているのかもしれない。商品名にノルウェー語を付け足すのは、馴染みあるノルウェー語を付け加え、梨や枝豆の売り上げを伸ばすための対策なのかもしれない。

モヤモヤな感情がスッキリし始めた頃、スーパーで新たな日本語を発見。果物コーナーの「kaki」だ。梨と枝豆の様に日本語をそのまま取り入れた商品名である。ノルウェーの食卓ではあまり見かけない果物であるが「persimon」と「sharon」と二つの単語がノルウェー語にある。しかし、今回はノルウェー語の単語を商品名に取り入れていない。これではシャイなノルウェー人に商品が正確に伝わらない⁉

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梨と枝豆の商品名にはノルウェー語を付け足すが、柿の商品名は日本語のみ。もしかしたら、ゆるキャラグランプリで27位を獲得した和歌山県出身の「かきたん」が筆者が知らない間にノルウェーで浸透していて、既に「柿」という単語がsushiやramenのようにノルウェーで浸透しているのかもしれない。買い物を終え、氷点下十度のなか家へ向かいながら「かきたんパワー」に驚く僕であった。

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