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気候変動による痛みを誰が負うのか?

日本各地で、世界各地で様々な気象災害が猛威を奮っている。アメリカ・カナダ西部における50℃を超える猛暑、東海・関東地方における豪雨による洪水・土砂災害、ドイツ西部における豪雨による洪水・・・

この1ヶ月で発生した気象災害を挙げただけでも、被害者は数百人に上る。数十年前から地球温暖化が様々な気象災害を激甚化させることは危惧されていたが、まさにそのとおりの世界が出来上がりつつある。温室効果ガスを減らそうと様々な工夫がされてきたが、生半可な工夫では全く効果がなく、世界の温室効果ガスは減るどころか増加を続けている(2020年はコロナのために一時的に減少したが)。いま既に猛威を奮っている気象災害が更に強くなってしまわないだろうかと、確証はないが危惧している。

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このような気象災害の増加に対して、社会のセーフティネットも変わりつつある。まず最初に変わろうとしているのは損害保険だ。火災保険に対して付与できる水災補償について、洪水リスクが高いエリアに対して保険料を高く設定ができるように制度が変更されようとしている。ただでさえ火災保険料が値上がり傾向にある中で、気象災害のリスクが消費者に還元されようとしている。

これは損害保険会社が収益を保てなくなっていることの裏返しだ。日本国内ではここ何年も水害や台風災害が頻発し、損害保険会社の支払う保険金が高い状態が続いている。

また、土地などの不動産についても変化が訪れている。水害に対する対応力を高めるために、7月15日には「流域治水関連法」が一部施行され、「浸水被害防止区域を創設し、住宅や要配慮者施設等の安全性を事前確認」することや、「地区単位の浸水対策を推進」することが盛り込まれた。今後は防災集団移転推進をするなどして、消費者の生活が否応なしに変化を迫られるようになる。

このような対応策により、今この世界に生きている私たちが負担を背負うことになるが、今の気候変動の原因は化石燃料が産業化された200年以上前から排出されてきた温室効果ガスの増加が原因であり、今の私たちが責を負うことではないはずだ。

環境問題では、「世代間格差」という格差について特に若い世代から問題視されている。大人たちが出した負の遺産によって、今の子どもたちがおとなになる頃にその悪影響が現れるという環境問題特有の構造がある。原因を作り出した人と影響を受ける人が時間軸上で異なってしまうのだ。
筆者も約10年前の大学生の頃は、政治家に会ったり国際会議の場で、「将来の私たちのために今温室効果ガスを削減してほしい」と発表したりしたが、その時は大きな成果を挙げられなかった。その時の帰結が今につながり、自分が29年分生きて排出してきた温室効果ガスが今のさらに若い世代を傷つけることになると思うと、非常に申し訳なく思う。

気候変動は化石燃料により成長してきた経済が環境を無視してきたことに対する地球システムのリアクションだ。今は昔と違って、それを予測する技術があり、それを防ぐことができる技術も成長している。どのように問題を解決するか、はたまたできないのかは、これからの私たち一人ひとりの選択にかかっている。

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