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日本の再エネの現状【持続可能エネルギー戦略01】

気候変動への対応が世界中で発展しています。気候変動を緩和するためにも、世界の温室効果ガス排出量を減らす必要があります。日本の温室効果ガスを削減するためにはどうしたらいいのか、電気というテーマから考えていきます。

気候変動と発電

日本の二酸化炭素排出量の内訳は以下のように、「エネルギー転換部門」が4割以上を締めています。「エネルギー転換部門」は発電や原油をガソリンなどに精製する際に発生する二酸化炭素を総計しています。このうち、9割近くは火力発電所などの発電に由来しています。

つまり、日本の二酸化炭素排出量を削減するためには、発電からの排出を減らすことが効果的だと言えます。

日本のCO2排出量割合_直接排出2017

日本のエネルギー事情

日本の電力は現在、約8割が火力発電所から来ています。火力発電の燃料は、天然ガス5割、石炭4割、石油1割ほどという内訳になっています。先程の「エネルギー転換部門」の二酸化炭素の起源は、ほとんどがこの火力発電所になります。エネルギー部門から排出される二酸化炭素を減らすには、火力発電自体を減らすか、火力発電からの二酸化炭素を空気中に出さないようにしないといけません

発電電力量と燃料投入量 2018

引用: 資源エネルギー庁 平成30年度(2018年度)エネルギー需給実績(速報)

火力発電を減らすべき理由

二酸化炭素排出量を減らすためにも火力発電をなんとかしなくてはいけませんが、日本が火力発電を減らすべき理由のうち、特に「企業の経営のリスクとなるから」を挙げたいと思います。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、金融に関する民間組織「金融安定理事会」が設置したグループで、「企業による気候変動への取り組み」を情報開示するよう求めています。これは、気候変動による異常気象などが企業にとっての経営リスクとなるとこから、気候変動を緩和するための努力をすることが企業価値を向上させて、持続可能な企業経営につながるという認識のもと、世界で広がっている取り組みです。

この動きに経済産業省も参加しており、日本版のガイドラインも作成されました。日本の金融機関や企業も200社近くがこのTCFDに賛成しており、それはつまり「気候変動の緩和と適応のための努力を積極的に行います」という宣言を多くの企業がしているということになります。金融機関がこの枠組に参加しているということは、今後国内外の金融機関は投資を検討する際に、その企業の気候変動への対策を審査することになるでしょう。気候変動への対策をするからには、やはり企業活動による二酸化炭素を削減しなければ、企業の将来的な気候変動リスクが高いとみなされ、投資を控えられるリスクが高まります。そのためにも、企業活動には欠かせない電気から排出される二酸化炭素を減らさなければいけません

この金融業界の動きを鑑みると、二酸化炭素排出量の大きい火力発電は企業が次第に使わなくなってきて、発電会社にとっての不良資産となるかもしれません。気候変動リスクを下げるため、日本の発電会社も対応を迫られているということです。

太陽光発電で日本は支えられるか?

ここでやはり検討したいのが、自然エネルギーです。天然のエネルギーを利用することから、発電時には二酸化炭素を排出しないことが何よりの強みです。ただ先程の図が示すように、日本の自然エネルギーの発電量は全体の18%ほどになっています。その中で水力発電が半分くらいを締めていますが、日本の河川には既にダムが限界まで建設されており、将来的に水力発電を増やすことは難しいです。

そこで、今回は自然エネルギーの代表格である太陽光発電と風力発電の実力を検証したいと思います。

2018年度、太陽光発電の日本における発電量は、全体の約7%ほどでした。東日本大震災後、急激に太陽光発電の量が増えて、個人宅だけでなくメガソーラーなどを大規模事業者が設置するようになり、ここまで伸びました。

では、現在の東京電力管内の電気を全て太陽光発電で支えられるかどうか、検証してみたいと思います。

太陽光発電_アイダホ

メガソーラーの出力は1MW以上が多いですが、火力発電所の出力は大きなもので1000MW以上になります。
そして、1MWのメガソーラーに必要な設置面積は、20,000m2(平方メートル)くらいです。ただ、太陽光発電は太陽の日射具合に大きな影響を受けるので、実際に発電できる量は、その13%ほどになります(設備利用率)。
となると1,000MWの火力発電施設ひとつに相当する太陽光発電は、最大容量としては8,000MWほど必要で、面積にすると160km2(平方キロメートル)になります。

現在、東京電力管内の総発電出力は約50,000MWあります。これを全て太陽光発電で発電しようとすると、必要な面積はなんと8,000 km2(平方キロメートル)。東京都の面積の4倍弱の広さにもなります。

風力発電で日本は支えられるか?

風力発電_与那国島

では一方で、風力発電ではどうでしょうか?2018年度の風力発電は、日本の発電量の1%弱しかありません。風力発電の容量1MWに必要な面積は50,000m2(平方メートル)くらいです。発電効率が20%ほどであることを考えると、定格容量のさらに5倍ほどの面積が必要です。
風力発電で東京電力管内の電気を全てまかなった場合、必要な面積は12,500km2(平方キロメートル)。東京都の面積の6倍弱、新潟県と同じくらいの広さにもなります。

まとめ

必要な面積を考えただけでも、自然エネルギーだけで日本の電力をすべて賄うことは困難に見えます。実際に、日本で自然エネルギーの普及が遅い原因の一つだと思います。結局、人口が大きく経済規模が大きいと、それだけ必要な電気が多いので、より広い面積から自然エネルギーを電気として回収しなければいけないということです。

しかし、本当に不可能なことなのでしょうか?実は既に、再生可能エネルギーで国の電力をすべて賄っている国も出現しています。

これらの国は、人口や経済規模は日本よりずっと小さいですし、自然環境も大きく異なります。しかし、温室効果ガスの排出量が世界的にも大きい日本だからこそ、きちんと対策をすれば気候変動にも大きな低減効果を与えることになるでしょう。気候変動の対策をしなければ、近い将来気候によって人類が脅かされることになります。特に日本は、台風や豪雨などの気象災害が昔から頻発しており、その危険性が気候変動によって高まるという研究も発表されています。

気候変動による被害を減らすため、日本の企業が引き続き発展してゆくためにも、気候変動の対策はもっと拡大しなければいけません。そのために、日本の二酸化炭素排出のボトルネックである発電方式を変えることは喫緊の課題です

このnoteでは、引き続き自然エネルギーについて考察を進めていこうと思います。太陽光や風力だけでなく、地熱や海洋エネルギーなど。現在の電力システムに必要な変化などについても考えていこうと思います。何者にも縛られない、ダイナミックな変化やイノベーションも提案していきたいと思いますので、次回作もご期待下さい。

参考サイト:日本の発電設備のことが地図上で簡単に調べられます


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