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気候と共に変化する社会のあり方

気候変動に対する社会からの関心が徐々に高まっている。ニュースの中で気候や二酸化炭素について触れられない日は、もはや見つけることが難しい。様々なセクターが気候変動に対応することを宣言するのはとても良いことだが、実態としてどれほどの部分が変化することが必要だろうか。

ビル・ゲイツが2月に出版した「How to Avoid a Climate Disaster」を今読んでいるところだが、その中では二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを本当に削減するために、どれほど多くの変化が必要か、とても丁寧に説明している。電気や移動、建物や食生活、政策やビジネスとの関係について、多角的な視点で気候変動による大災害を避けるための考え方はとても参考になるものだ。英語ではあるが、難しい言葉は極力使わず、彼の体験から生じた疑問を、簡単な数学を使いつつ、二酸化炭素をゼロにすることの難しさもよく表現してくれている。

読みながら思うこととして、現代生活はあまりにも化石燃料に依存していることである。化石燃料はとても安く、エネルギーを多く取り出すことができ、様々な素材の原料にもなる。これほど便利は世の中になったのは、化石燃料があったからと行っても過言ではない。そして、その化石燃料に関連する産業によって、気候変動だけでなく様々な環境破壊や公害を引き起こしてきたことも事実である。人類のここ数百年の発展は化石燃料とともにあり、そして環境破壊とともにあったのだ。

今その人類の成長の法則から外れ、新しい道を開拓しようとしている。化石燃料をベースに作られてきたこの社会から、化石燃料をなくすために数多くの研究が行われ、資金が投じられ、政策が作られている。だからこそ、この大変革はこれまでの社会を壊す可能性を十分にはらんでいる。いや、これまでの社会を壊して新しく作り直すくらいの考え方の変化が必要だと思う。これまで化石燃料で回してきた様々な産業を「代替物」により回し直すというのはあまりにも難しい。

移動のための車や飛行機、船舶は、化石燃料による内燃機関を持ち、そのエネルギー供給により走り、その価格で提供されるからこそ、今のような大量輸送が成り立つ。化石燃料を否定した時、それを基盤として作られてきた交通システムを回し続けるのはあまりにも遠い道のりである。新しいエネルギー源により達成できるゴールについて、つまりは移動手段と交通システムについて考え直し、社会が何を目指すべきかゼロから考え直すべきだと考えている。

社会インフラについてもそうだ。鉄やセメントを中心に都市は作られているが、その材料には石炭が書かせず、大量の熱源も必要である。鉄とセメントをなくした時、建材には木材と石材くらいしか残らない。これからの社会に、鉄やセメントがない世界などあり得るのだろうか?自分は、それはありえないと考えている。もちろん使用量を極力減らすべきではあるが、素材を作るときに排出される二酸化炭素を大気中に逃さないために、様々な技術が現在開発されている。その技術が完全に商業利用されるまで、世界の温室効果ガスの10~20%ほどを占める部門からは排出を止めることはできない。

温室効果ガスを実質ゼロにすること。日本を含め多くの国が目標を掲げるようになったが、その道程は長く険しいものである。産業革命レベルの大変革が必要になるだろう。一方で社会が大きく変化する時、そこから取り残される人々がいることも歴史が物語っている。環境問題は格差問題だと言われることもあるが、誰ひとり取り残さないというSDGsの理念は、そのような背景があってのことだろうと、改めて感心している。

温室効果ガスを排出し続ける限り、気候の変化も止まらない。2021年4月18日現在、台風2号が最低中心気圧900hPaを下回るという最強クラスにまで発展しており、これからどんな経路を通るのか目が離せない。今年も豪雨が来て台風が来て猛暑が来れば、気候変動への関心はますます高まってくる(そうならないことを願うが)。twitterなどのSNSも荒れてくるだろう。気候変動への物理的な脅威に耐えながら、温室効果ガスを地道に減らしていく努力を続けなければならない。そして、それは次なる新しいデザインの社会につながっていく。


Benjamin ZochollによるPixabayからの画像

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