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酪農家が真面目に語る「持続可能な酪農」のお話

持続可能、サステナブル――――。

最近、ますます耳にすることが多くなったこの言葉。ノースプレインファームでは、創業以来変わらず「持続可能な酪農」を追求し続けてきました。

きょうは、持続可能な酪農についての取り組みと考えについて私、ノースプレインファーム代表を務める大黒がお話しいたします。

夏のコムケ湖にて

循環型酪農で
環境面での持続性を保つ

「持続可能」と聞いてまず思い浮かぶのは、環境面での持続性ではないでしょうか。自然環境への負荷をできるだけ少なくしながら酪農を続けていくことが、持続可能な酪農のひとつの形。

ノースプレインファームではその取り組みのひとつとして、牛の排泄物を肥料として活用する循環型酪農を行っています。

牛の糞尿は不適切に処理すると、水質汚染や土壌汚染の原因になるといわれています。しかし一方で糞尿は、適切に処理して微生物の分解を受ければ良質な堆肥になります。

私たちの牧場では、牛の糞尿はすべて堆肥にして、牧草地に活用しています。化学肥料は使用しないので、土壌に過度な負担をかけることがありません。この堆肥を栄養分として、栄養豊富な牧草が育つ。

50年以上前から自社の牛の堆肥を使用した牧草を育てています

その牧草を食べた牛が再び堆肥の原料となる糞尿を排泄し、さらにおいしいミルクも出す、という循環ができるのです。
この循環が守られるためには広い放牧地が必要で、一頭あたり1ヘクタールが必要といわれていますが、私たちの牧場ではその広さも確保しています。

ノースプレインファームの放牧地

原始的な酪農のスタイルに
持続可能な酪農のヒントが

私がこのような方法をとっているのは、実はもともとは、高い環境保護意識によるもの、というわけでもないのです。私はこの地域でかつて行われていた素朴な酪農の方法を実践してきたに過ぎません。

1982年(昭和57年)の大黒牧場

原始的な酪農とは、作物の栽培には向かない土地で牛や山羊などを放牧し、人間の食用にはならない草を食べさせて肉や乳を得たというもの。そして、そういう酪農は環境への負担が少なく、何千年と続けてこられた圧倒的に長い歴史があります。

1950年代、本格的に私の親の世代がおこっぺで始めた酪農も、それに近いものでした。それがある時期、利益追求や効率に重きがおかれ、環境への配慮がなされなくなってしまったという現実があります。

しかし、私はこのおこっぺの土地が大好きで、この地域を大切にしたいという思いがとても強い。この土地の自然体系を上手に利用したいですし、何かを収奪するような方法で酪農をしたくありません。

自分が納得できる方法は何かと考えると、もともと行われてきた循環酪農だろうとなり、今に至っています。

生まれ育ったおこっぺの土地が大好きです

地域をにぎやかにし
酪農が続けられる環境づくりを

持続可能な酪農を考えるときに、もうひとつ大切なポイントは、酪農の経営が持続されていくことです。酪農に従事する人がいなければ、持続可能な酪農はありえません。

特に、離農者が増え酪農家の高齢化が急速に進む現在においては、若い世代の方に酪農を続けてもらうことが大切だと感じています。

若い世代に酪農を続けてもらえると嬉しいです

そのためには、酪農業の労働環境はもちろん大切ですが、それだけではなく酪農が行われる地域での暮らしやすさも大切になってくる。医療だったり教育だったり、暮らしていく上での不便がないことと、地域全体に魅力がないと、若い世代が持続的に酪農に従事することは難しいと思います。

その問題をクリアするには、私個人、あるいはノースプレインファーム一社の力だけでは足りないと思っています。

ただ、同じような志を持つ酪農家は少しずつ増えつつある。その酪農家たちと連携して、一緒に酪農全体を盛り上げ、この地域をにぎやかにする。それが、長い目で見ると酪農の経営を維持し、100年後、200年後にも続けていけることにつながると思っています。

現在は持続可能な酪農に向けた、
試行錯誤の時代

最後に、現在の日本の酪農全体という視点で考えると、土地の制約、システムの問題、過度な利益追求などを背景として、残念ながら持続可能な酪農とは程遠い状況であると感じています。

しかしそんな中でも、私たちにできることはたくさんあると考えています。
その一つとして大切なのが、このように自分たちの考えや取り組みを発信していくこと。私たちの思いに共感してくださる方がひとりでも増えたら、何か変わっていくかもしれません。

牛乳や乳製品の食文化を広めて、それらの生産の背景に興味を持っていただけるようになることも大切だと感じます。

さらに理想をいえば、実際におこっぺに来て牧場をみていただいて、一緒に何かしよう!という方が出てこられたら素晴らしいと思います。

一緒に何かしようと
発信できる場や仲間を作りたいと思っています

数千年も続く世界の酪農の歴史の中で、日本の本格的な酪農の歴史はまだ100年そこそこ。今は、どのようにしたら日本で持続可能な酪農ができるのか、試行錯誤している時代といえるかもしれません。

願わくは、この先200年、300年と日本の酪農が続いて、「あの頃は試行錯誤していたんだな」と今を振り返る時が来たらいいなと思います。

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