39.水山蹇(すいざんけん)~険阻なる障害物②

六十四卦の三十九番目、水山蹇の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n4305fd2dc74f

39水山蹇

主爻

主爻は、九五です。大蹇難の中にあって、他の爻と共に一致協力して乗り越えるのです。

初六

往けば蹇(なや)み、来(きた)れば誉(ほまれ)あり。
象に曰く、往けば蹇み来れば誉ありとは、宜しく待つべきなり。

行けば悩み、止まれば誉れを得る。時の宜しきを待つがよい。

蹇難の始まりにあって、応爻も比爻もなく、孤立無援の状況にあります。進めば進むほど苦しむであろうことは明らかであり、立ち止まって時機を待つのが最も賢明であり、後にはその先見の明を称えられるのです。

六二

王臣蹇蹇(けんけん)たり。躬(み)の故(ゆえ)に匪ず。
象に曰く、王臣蹇蹇たるは、終(つい)に尤(とが)无きなり。

君臣ともに蹇難続いてまた蹇難。(この苦しみを耐え抜くのは)我が身を想う故にあらず(天下国家を想うが故である。よって咎はない。)

王は九五、臣は六二です。九五は坎卦のど真ん中にあって、六二もまた互卦の坎に入り込み、君臣ともに苦しみの真っ只中にあります。ここで吉凶の是非を問う必要はありません。ただ一身を顧みずして尽力するしかないのです。

九三

往けば蹇み、来れば反(かえ)る。
象に曰く、往けば蹇み来れば反るとは、内、之を喜ぶなり。

行けば悩み、止まれば安らぎを得る。仲間内に喜ばれるであろう。

互卦の坎中にあります。正位ですが陽剛に過ぎており、応ずる上六に向かって進むのは賢明ではありません。立ち止まって比する六二に親しむことによって、六二と初六は喜び、かつ六二を通じて間接的に九五と通じることが出来るのです。

六四

往けば蹇み、来れば連なる。
象に曰く、往けば蹇み来れば連なるとは、位に当りて實(じつ)なればなり。

行けば悩み、止まれば同志との連携を得る。

二つの坎卦に挟まれており、進むことは賢明ではありません。立ち止まって正位の同士である九三を仲間に得、かつ九三を通じて六二と初六との連合を成し、共に難局に当たるのです。位に当りて實なるとは、正位であって柔順なる正しき徳を持つことをいいます。

九五

大蹇(たいけん)なり。朋来る。
象に曰く、大蹇なり朋来るとは、中節を以てなり。

大なる艱難にある。中なる徳をもって仲間の助けが来るであろう。

大なる艱難の最中にあって、応ずる六二ばかりでなく、六二と比する九三、九三と応ずる上六、九三と比する六四、下にある庶民の初六など全ての爻が九五を救い出すために動き出して、難局の打開を図るのです。九五が威張らず誇らず、中徳をもって節度を保つが故です。

上六

往けば蹇み、来れば碩(おおい)なり。吉。大人を見るに利し。
象に曰く、往けば蹇み来れば碩なりとは、志、内に在るなり。大人を見るに利しとは、以て貴に従ふなり。

行けば悩み、止まれば大いなる功績を得られよう。吉。貴い賢人君子に従うがよろしい。

蹇難の終り、これ以上は進むべきではありません。上六自身は柔弱にして能力は乏しいのですが、六三と応じ、かつ九五と比しております。志、内に在るとは、九三と共に難局を打開することです。大人は九五であり、これを補佐することで自身の能力を役立てることが出来るのです。

まとめ

坎卦が二つ連なる中にあって、初六は距離を置いて止まりますが、六二より上は皆坎残らず蹇難に巻き込まれます。しかし応爻や比爻の連携によってこれを乗り越え、上六にしてようやく吉となります。

初六は蚊帳の外にありますが、蹇難に対処すべき原理原則を説いているものと解釈すべきでしょう。

九三の豪傑が間接的に九五との縁を持つ構図は、水雷屯の初九とよく似ております。屯卦においては六四が、蹇卦においては六二・六四・上六が、それぞれ九五と連絡する役割を果たします。天下の泰平なる時代においては、柔順なる六四の補佐で十分対処し得られるのですが、屯卦や蹇卦のような難事においては、屯卦の初九や蹇卦の九三のような微賤ないし民間の豪傑が待たれるのです。

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