43.沢天夬(たくてんかい)~窮鼠猫を嚙む②

六十四卦の四十三番目、沢天夬の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n44f7422e9e9b

43沢天夬

主爻

成卦の主爻は上六、主卦の主爻は九五です。最後まで居残る上六の小人が、遂に九五の天子によって、過激でなく中庸なる仕方によって取り除かれるのです。

初九

趾(あし)を前(すす)むるに壮(さかん)なり。往きて勝たず。咎と為す。
象に曰く、勝たずして往くは、咎なり。

足を前に進めていくこと意気盛んである。しかし行ったところで勝利の見込みがあるわけではない。(軽挙妄動なる蛮勇につき)咎をなそう。

初九は卦の最下位にありますので、足の部分です。応爻も比爻もなく、意気盛んなることは結構ですが、無鉄砲のそしりを逃れることはできません。

九二

惕(おそ)れて號(さけ)ぶ。莫夜(ぼや)、戎(じゅう)有るも恤(うれ)ふる勿れ。
象に曰く、戎有るも恤ふる勿れとは、中道を得ればなり。

恐れて泣き叫ぶ(ほど慎重である)。(かような慎重さをもってすれば)夜中に敵襲を受けたとしても憂うることはないであろう。

九二は初九のような蛮勇一辺倒に非ず、中道を心得ております。君子側の圧倒的なる状況下においても、常に警戒することを怠りません。真夜中に敵勢力の不意打ちを喰らったとしても、その慎重さをもって適切に対処し得るのです。

九三

頄(き)に壮なり。凶有り。君子は夬夬(かいかい)たり。独り行きて雨に遇ひ、濡るるが若くにして慍(いきどお)らるる有れども咎无し。
象に曰く、君子は夬夬たりとは、終に咎无きなり。

血気盛んなること顔色に表れ過ぎている。凶があろう。器量大きい君子たるもの(はそのようにせず)、決然たる姿勢を貫き通す(応ずる上六を斬り捨てる)。(上六を斬り捨てるがために)独り出かけて上六と出逢い(雨降り陰陽和合し)、双方雨に濡れつつ和合して(九三の真意に気付かない)周囲の人々は憤るのであろうが、咎はない。

九三は中道を過ぎて意気盛んなること余りに激し過ぎており、その血気が顔に出ているようでは上六を斬ることが出来ません。君子は情欲を抑えて冷静沈着であるべきです。九三は上六を応じておりますので、これを斬り捨てるには絶好の立場なのです。冷静なる心をもって上六と合い、その九三の真意を理解しない人達からのひんしゅくを買うことがあっても、気に病む必要は全くないのです。

九四

臀(とん)に膚(ふ)无し。其の行くこと次且(ししょ)たり。羊を牽(ひ)けば悔亡ぶ。言を聞きて信ぜず。
象に曰く、其の行くこと次且たりとは、位、当らざるなり。言を聞きて信ぜずとは、聴くこと明かならざるなり。

臀部の皮膚が破れる(が如く落ち着いて座っていられない)。進んで行こうとしても怖気付いて進めない。羊の群れに紛れて後ろから付いていくように進めば(最前列を進まぬようにすれば)悔いは滅ぶであろう。(聞く耳を持たず)他人の忠告を信じない(傾向があるので注意すべきである)。

陰位にあって中道を外れており、心が定まらずして臆病に過ぎます。上下にある陽爻の仲間たちと共に進んで、かつ後ろから付いていく態度であれば、辛うじて悔いることはないでしょう。ただし是非善悪を正しく判断する知恵に欠けている状態であり、人の声に耳を傾けないのは惜しむべきことです。

九五

莧陸(けんりく)、夬夬たり。中行にして咎无し。
象に曰く、中行にして咎无しとは、中(ちゅう)未だ光(おおい)ならざるなり。

(地中に根を生やす陰気な)山ごぼうを断固として除き去る(が如く上六を斬り捨てる)。中道をもって過度の乱暴さを抑制し得れば咎はない。

上六の真下にあって比しており、植物の根に喩えております。邪悪なる上六の正体を見抜くことが出来ずしてようやく気付いたのであり、これを完全に取り除くまでは天子としての徳を完全に発揮するには至らないのです。

上六

號(さけ)ぶ无かれ。終に凶有り。
象に曰く、號ぶ无きの凶は、終に長(なが)かる可からざるなり。

泣き叫んだところで無駄である。(栄華の時は長からず)遂には凶となろう。

九五に媚びを売り続けて最後まで居座り続けていた上六も、遂にその栄華の時を終える時が来ました。他の小人は皆駆逐されており、今更泣き叫んだところで誰も助けてはくれないのです。

まとめ

初九から九五までの各陽爻が上六を追い詰める構図ですが、各陽爻の態度に一長一短があります。

初九は能力足らずして軽挙妄動に過ぎます。九二は逆に慎重に過ぎますが、警戒するに過ぎることはなく、その慎重さが功を奏します。九四は軽挙かつ臆病に過ぎ、独りでは行動できないので他の陽爻に紛れて後ろから付いて行くのが精々です。

九三は上九に応じ、九五は上九に比します。彼らが直接に上六を倒します。いずれも断固たる決意を持たねばならず、九三は努めて冷静沈着に、九五は中道なる心をもってこれを処置すべきです。

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