55.雷火豊(らいかほう)~盛大の窮まり②

六十四卦の五十五番目、雷火豊の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n206f84ff2717

55雷火豊

主爻

成卦の主爻は六二、主卦の主爻は六五です。共に不応ですが、明晰なる六二の徳が、やがて不明なる六五の心に通じて大いなる喜びを得ます。

初九

其の配主(はいしゅ)に遇ふ。旬(ひと)しと雖も咎无し。往きて尚ばるる有り。
象に曰く、旬しと雖も咎无しとは、旬しきを過ぐれば災(わざわい)なり。

その主人(九四)に会う。双方の能力は等しいが、咎はない。共に進んで行けば尊ばれるであろう。

初九は離卦の初爻、九四は震卦の主爻、不応ですが共に陽爻であり、協同一致すれば大なる事業を成し得ます。旬しきを過ぐれば災なり、同等を通り越して相争うようになれば、災いを得ます。

六二

其の蔀(ほう)を豊(おおい)にす。日中に斗を見る。往きて疑疾(ぎしつ)を得。孚有り発若(はつじゃく)すれば、吉。
象に曰く、孚有り発若すとは、信以て志を発するなり。

灌木雑草が大いに茂る(日光を遮る)。(暗くなったせいで)日中に北斗七星を見る。(かくの如く無暗に)進めば上から疎んじ憎まれる。誠実なる心をもってお上の心を啓発すれば吉。

互卦の巽卦は灌木雑草の象、震卦は草木の繁茂する象、内卦の離卦はそれらに覆われて日光が遮られます。六二の邪念なき虚心をもって六五に接すれば、やがて心が相通じます。

九三

其の沛(はい)を豊にす。日中に沫を見る。其の右肱(うこう)を折る。咎无し。
象に曰く、其の沛を豊にすとは、大事に可(か)ならざるなり。其の右肱を折るとは、終に用ふ可からざるなり。

湿った沼地(に生える灌木雑草)が大いに茂る。(六二よりも一層暗いので)日中に小さな星を見る。(自分を用いてくれるものはおらず)自分の右腕を折る。(しかし自分に非は無いので)咎はない。

互卦の兌卦は沼地の象、裏返すと艮卦となり、腕の象です。応ずる上六は豊の卦が窮まりて有頂天になっている小人物であり、九三を上手く用いてくれません。

九四

其の蔀(ほう)を豊にす。日中に斗を見る。其の夷主(いしゅ)に遇へば、吉。
象に曰く、其の蔀を豊にすとは、位、当らざるなり。日中に斗を見るとは、幽(くら)くして明かならざるなり。其の夷主に遇ふとは、吉の行(こう)なり。

灌木雑草が大いに茂る。日中に北斗七星を見る。(微賤なるも能力高い初九の)主人に会えば吉。

六二と九三の暗きは上の責任ですが、九四の暗きは己の能力が乏しい故であり、かつ暗愚なる六五と比している故です。しかし初九と会って協同一致することができれば、難を逃れます。

六五

章(しょう)を来(きた)す、慶誉(けいよ)有り。吉。
象に曰く、六五の吉は、慶(よろこび)有るなり。

(暗愚なる君なれども)明らかなる賢人(六二)を招いて従うときは、大いなる喜びと誉れがあろう。吉。

柔弱なる天子にして、補佐する九四も不正、暗黒なる世を作り出したのですが、柔順にして虚心となり、下の六二の賢人たちを招いてその助言に従えば吉です。

上六

其の屋(おく)を豊にす。其の家を蔀(おお)ふ。其の戸を闚(うかが)ふに、闃(げき)として其れ人无し。三歳まで覿ず。凶。
象に曰く、其の屋を豊にすとは、天際(てんさい)に翔(かけ)るなり。其の戸を闚ふに、闃として其れ人无しとは、自ら蔵(かく)るるなり。

(権勢を誇り)広大なる宮殿を豊かにする。(しかし灌木雑草が)その宮殿を覆う。入口から内側を窺えば、静かにして人は誰もいない。三年の久しき間、この人を見た者は誰もいない。凶。

道徳才能の乏しい小人が、一時の権勢を誇って大宮殿を造るも、後に失敗して何もかも失ってしまうのです。

まとめ

内卦の離卦の三爻はいずれも明らかなる徳を持っておりますが、活動する力に欠けております。外卦の震卦の三爻はいずれも活動する徳を持っておりますが、明らかなる徳に欠けております。これらの両徳が一致することで、初めて豊の卦は完成するのです。

自己の内的探求を通じて、その成果を少しずつ発信することにより世界の調和に貢献したいと思っております。応援よろしくお願いいたします。