28.沢風大過(たくふうたいか)~重荷を背負う②

六十四卦の二十八番目、沢風大過の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/nabf0bdd507be

28沢風大過

主爻

主爻は、九二と九四です。共に初六との縁があり、剛に過ぎず柔に過ぎず、節度を保って重責を耐えるのです。

初六

藉(し)くに白茅(はくぼう)を用ふ。咎无し。
象に曰く、藉くに白茅を用ふとは、柔、下に在るなり。

純白なる茅(ちがや)を敷いて神聖なるものを載せる。咎はない。

重荷を一身に背負う位置にありますが、陰爻らしく柔らかな物腰で、かつ陽位にありますので柔弱に過ぎることなく、真っ白で清潔な敷物の上に宝物を載せるが如く、うやうやしき態度をもって背負うのです。初六の真上には乾卦があり、金や玉などの宝物の象です。

初六(繋辞上伝)

繋辞上伝の第八章より抜粋します。

初六。藉(し)くに白茅(はくぼう)を用ふ。咎无し。子曰く、苟(いや)しくも諸(これ)を地に錯(お)きて可なり。之を藉くに茅(ちがや)を用ふ。何の咎か之れ有らん。慎むの至りなり。夫(そ)れ茅の物たる薄けれども、用は重かる可きなり。斯(こ)の術を慎みて以て往けば、其れ失ふ所无し。

沢風大過の初六「藉くに白茅を用ふ。咎无し。」を指して、孔子曰く、(直に地面に置いても差し支えないのに、)清潔な柔らかい茅を下に敷いて、その上に物を置く。これが咎められるはずがあろうか。まことに慎みの至極なるものである。そもそも茅は形も値打ちも薄い草の葉に過ぎないが、しかし用いようによっては重大なるものに成り得る。このような道を慎み守って事を行うときは、失敗するようなことはない。

九二

枯楊(こよう)、稊(ひこばえ)を生ず。老夫、其の女妻を得。利しからざる无し。
象に曰く、老夫女妻は、過ぎて以て相興(くみ)するなり。

枯れかかった柳の根元から新たな芽が出る。老父は年若い妻を得る。過ぎたることではあるが、よろしくないはずはない。

九二から九五へと連なる陽爻は、重荷の象徴であり、九二はその始まりです。九二は初六と比しており、九二の重く辛い苦しみを初六が暖かく包容します。それはまるで枯れ柳の根元から新芽が出るようなものであり、あるいは老父が若妻を得るようなもので、不釣り合いではありますが、喜ばしいこと限りないのです。

九三

棟(むなぎ)橈(たわ)む。凶。
象に曰く、棟橈むの凶は、以て輔(たすけ)有る可らざるなり。

棟が重さに耐えかねて垂れ曲がる。助けを得られず、凶。

九三は陽爻にして陽位にあり、剛強に過ぎて荒々しく、物事を適度に処することが出来ません。上六と応じてはいるのですが、上六はあまりにも柔弱に過ぎており、また九三も上六の存在を気にかけようともせず突き進んでいきますので、結局は誰の助けも得られないのです。

九四

棟(むなぎ)隆(たか)し。吉。它(た)有れば吝。
象に曰く、棟隆きの吉は、下に橈(たわ)まざるなり。

棟が下に垂れ撓むことなく、高さを保つ。吉。他人のよこしまな讒言に耳を貸すようなことがあれば恥ずべきである。

九三と九四が棟を構成しており、九三は剛強に過ぎてたわむのですが、九四は応ずる初六との連携が上手く、有益なる助言を得て安定しております。陽爻ですが陰位にありますので、陽剛に過ぎることがないのです。しかし有能にして相性のよい初六を離れて、他人に浮気するようではいけないことを戒めております。

九五

枯楊(こよう)、華を生ず。老婦、其の士夫を得。咎も无く誉(ほまれ)もなし。
象に曰く、枯楊に華を生ずるは、何ぞ久しかる可けんや。老婦士夫は、亦た醜(しゅう)とす可きなり。

枯れかかった柳が花を咲かせるが、そう長くはもたない。老婦人が年下の夫を得るが、咎ない代わりに誉れもない。

重荷の窮まる位置にあります。上六と比しており、枯れ柳は九五、咲く花は上六です。しかし上六は柔弱に過ぎて頼りなく、花はすぐに枯れてしまうのです。もう一つの喩え、老婦は上六、年下の夫は九五です。九五は天子の位置であり、年若い青年ではなく、上六と比べれば多少は若い程度です。共に子を持つべき年齢は過ぎており、何らの実りも得られないのです。

上六

過ぎて渉りて頂(いただき)を滅す。凶。咎无し。
象に曰く、過ぎて渉るの凶は、咎む可からざるなり。

身の程を過ぎて川を渉ろうとするも、力足らずして頭を沈める。凶。しかし咎はない。

大過の窮まりにして、柔弱に過ぎ能力乏しい陰爻です。兌卦の上爻であり、川を渉る位置にあります。そして兌卦の外卦は乾であり、頭が沈んでおります。大過の難事にあって身の危険を顧みずに飛び込む心意気は潔くして咎はないのですが、身の丈を超えた愚行にして、凶なのです。

まとめ

陽位にある陽爻は剛強に過ぎ、陰位にある陰爻は柔弱に過ぎ、共に悪い結果を生じます。陽位にある陰爻そして陰位にある陽爻は、剛強さと柔弱さが程よくミックスされて良い結果を生じます。

陽位にある陽爻は九三と九五であり、共に剛強に過ぎて失敗します。陰位にある陰爻は上六であり、柔弱に過ぎて失敗します。

陽位にある陰爻は初六であり、重荷が宝物であるかのように柔らかく包容します。陰位にある陽爻は九二と九四であり、共に初六の助力を得て重任に耐えるのです。

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