64.火水未済(かすいびさい)~永遠の未完成②

六十四卦の六十四番目、火水未済の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/nc3befd89ba77

64火水未済

主爻

主爻は六五です。九二と九四の補佐を得て、その柔順中正なる徳は光り輝いて天下に遍く行き渡ります。

初六

其の尾を濡らす。吝。
象に曰く、其の尾を濡らすとは、亦、極を知らざるなり。

(子狐が川を渡ろうとして)尾を濡らす。(未熟にして)恥ずべきである。

不正にして柔弱なる陰爻。坎中にあって、応ずる九四の元へ行こうとするも、経験足らずして川を渡る途中で尾を濡らしてしまいます。尾が濡れて重くなってしまうと、向こう岸まで渡り切ることはできません。軽挙妄動なるが故の失敗であり、恥ずべきです。

九二

其の輪を曳く。貞にして吉。
象に曰く、九二の貞にして吉とは、中以て正を行ふなり。

(軽挙妄動せず車の)車輪を(後ろから)引っ張って(止める)。正しい行為であり吉。

車輪は坎卦の象です。九二は初六とは異なり、中道をもって軽挙妄動せず、車輪を後ろから止めて前進させないようにするので吉です。

六三

未だ濟(わた)らず。征くは凶。大川を渉るに利し。
象に曰く、未だ濟らず、征くは凶とは、位、当らざるなり。

(軽挙妄動を避けて)未だ(川を)渡らない。進んで行けば凶。(ただし賢人君子の助けを得られれば)大きな冒険をしてもよろしい。

互卦の離卦の主爻であり、離卦は中をくり抜いた舟の象です。六三は行き過ぎる卦ですが、むやみに進まず、応ずる上九、比する上下の九二・九四の賢人たちの助けを得るのであれば、前進することが叶います。

九四

貞にして吉。悔亡ぶ。震して用つて鬼方を伐つ。三年にして大国に賞有り。
象に曰く、貞にして吉、悔亡ぶとは、志、行はるるなり。

正しい道を守り通して吉。悔いは滅ぶ。震い動きて蛮国を征伐する。三年経って(敵を倒して)大国に誉れがあろう。

既済の卦の九三と同じく蛮国と戦うのですが、九四は未済の卦が半ばを過ぎて物事が治まろうとしている時にあり、国内はほぼ安定している状況にあって夷狄が押し寄せており、六五の命を受けた九四がこれを三年かけて討伐に成功します。

六五

貞にして吉、悔无し。君子の光なり。孚有り、吉。
象に曰く、君子の光とは、其れ暉(かがや)きて吉なるなり。

正しい道を守り通して吉。悔いはない。(六五の)君子の徳が遍く光輝く。誠実なる心があって、吉。

離卦の主爻であり、文明にして明晰、九二と応じて柔順中正なる徳を大いに発揮します。

上九

酒を飲むに孚有り。咎无し。其の首を濡らせば、孚有れども是(ぜ)を失ふ。
象に曰く、酒を飲み首(こうべ)を濡らすは、亦、節を知らざるなり。

(未済の状況が整理されて)酒を飲んで楽しみながらも、誠実なる心がある。咎はない。(ただし羽目を外し過ぎて)頭を濡らして(川に溺れる狐の如く)であれば、孚はあっても正しい道を失う。

未済は終わって、完成の道へと至ります。酒を飲んで楽しむのは結構ですが、度を過ぎて飲み過ぎれば既済の卦の上六のようになりますので要注意です。

まとめ

既済の卦は、始めは良くて終わりは乱れます。未済の卦は、始めは乱れて終わりはまとまります。

内卦の三爻は、軽挙妄動して前進し過ぎることを制する内容であり、外卦の三爻は、未済の状態が成就して完成へと至ります。しかし上九は浮かれすぎることを堅く戒めます。

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