53.風山漸(ふうざんぜん)~着実なる歩み②

六十四卦の五十三番目、風山漸の卦です。
爻辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/nac04088448c7

53風山漸

主爻

主爻は六二と九五です。いずれも急いで進まず、あるいは酒食に楽しみ、あるいは三年の時を待つのです。

初六

鴻(こう)、干(みぎわ)に漸(すす)む。小子は厲(あやう)し。言有れども咎无し。
象に曰く、小子の厲きは、義、咎无きなり。

大雁が(水際から)陸のほとりに上る。小人は(ここからどうやって空を飛ぶべきか知恵が回らず)危い。多少の文句は言われるであろうが咎はない。

互卦の内卦は坎の水、外卦は離の鳥、鳥は水際から陸に上がるのですが、小人なる初六はそこから何をすれば良いのか分かりません。しかし漸次に事は運んでいるので、咎はないのです。

六二

鴻、磐(おおいし)に漸む。飲食衎衎(かんかん)たり。吉。
象に曰く、飲食衎衎たりとは、素飽(そほう)せざるなり。

大雁が大岩の上に進む。(九五の棒禄を得て成すべき仕事を成し)飲食して和らぎ楽しむ。吉。

飲食は坎卦の象。素飽とは空しく飽くこと、つまり功労なくして棒禄を受けること。六二は応ずる九五から棒禄を受けて飲食を楽しむのですが、決して素飽せず、成すべき仕事を成した上で和楽するのです。

九三

鴻、陸(くが)に漸む。夫(おっと)征きて復らず。婦(つま)孕(はら)みて育せず。凶。寇を禦(ふせ)ぐに利し。
象に曰く、夫征きて復らずとは、群醜(ぐんしゅう)を離るるなり。婦孕みて育せずとは、其の道を失ふなり。以て寇を禦ぐに利しとは、順にして相保つなり。

大雁は陸に進む。夫(九三)は(艮卦の向こうに)行って戻らない(初六と六二の仲間を見捨てる)。内縁の妻(六四)が子を孕むが育てない。凶。(反省して止まるべきところに安んじ)外敵を防ぐがよろしい。

陸は水鳥が安んじていられない場所です。九三は艮卦の主爻にして安んじ止まるべきですが、剛強に過ぎます。正妻たるべき上九は不応であるため、六四と内縁を結んで、六四は子を産みますが、ろくに子育てしません。群醜とは、艮卦の仲間です。九三は反省して正しい道に還るべきなのです。

六四

鴻、木に漸む。或は其の桷(かく)を得れば、咎无し。
象に曰く、或は其の桷を得とは、順にして以て巽なるなり。

大雁は木に進む。(木の上に止まることは難しいが、休んずるべき)大枝を掴めば咎はない。

水鳥は木の上に止まる性能を持たず、不安定な位置にあります。九五が六二を抜擢しようとして、六四は九三と共にそれを邪魔しようとしますが、巽卦の主爻でもあり、柔順なる心を取り戻して安んずれば咎はありません。

九五

鴻、陵(おか)に漸む。婦、三歳まで孕まず。終に之に勝つ莫(な)し。吉。
象に曰く、終に之に勝つ莫し、吉とは、願ふ所を得るなり。

大雁は丘陵の上に進む。妻(六二)は(九三と六四の妨害を受けて)三年経つまで子を孕まない。最後はこれに勝つので吉。

中正なる夫婦が、間を割って入る九三と六四の内縁の夫婦に邪魔されて三年も我慢するのですが、最後は結ばれます。

上九

鴻、逵(くもじ)に漸む。其の羽は用つて儀と為す可し。吉。
象に曰く、其の羽は用つて儀と為す可し、吉とは、乱る可からざるなり。

大雁は雲の中に進む。その羽根(が空中を舞う姿)は人のあるべき道としての手本となるべきである。吉。

羽根は儀式の飾りに用いると解してもよいです。吉とは、九五が六二を得て天下が安定したると解してもよいし、無位無官なる上九が世を脱却して超然と道を楽しんでいると解してもよいです。

まとめ

六二と九五が漸次の道の体現であり、初六はその始まり、上九はその結末です。

九三と六四は、その漸次なる進行を妨げるものです。

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