57.巽為風(そんいふう)~命令の発布②

六十四卦の五十七番目、巽為風の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n90410693c05f

57巽為風

主爻

成卦の主爻は初六と六四、主卦の主爻は九五です。初六は六二を疑い順いかねて、六四は九五に順い功績を挙げて、九五は巽順の時にあって慎重に事を運び大なる吉を得ます。

初六

進退す。武人の貞に利し。
象に曰く、進退するとは、志疑ふなり。武人の貞に利しとは、志治まるなり。

進んだり退いたり(落ち着かない)。武人の如く(志を保つ)がよろしい。

巽卦の始まりにあって、九二に従って進むべきところ、風の如くあっちへ行き、こっちへ行き、志が定まらずして浮付いております。武人の如く、進むべきときは断固として進むべきです。

九二

巽して牀下(しょうか)に在り。史巫(しふ)を用ふること紛若(ふんじゃく)たり。吉にして咎无し。
象に曰く、紛若たるの吉は、中を得ればなり。

へり下ること、腰掛けの足元(初六)に従うが如し。数多の巫覡が(神の思召しを受けるが如く上下との意思疎通を図る)。吉にして咎はない。

腰掛けの足は二本あり、初六の象です。微賤なる者に対してもへり下る姿勢を表します。巫覡の巫は女、覡は男、いずれもシャーマンです。互卦に兌卦があり、上を向いて神の意思を疎通する形です。

九三

頻(しきり)に巽す。吝。
象に曰く、頻に巽するの吝は、志窮まるなり。

しきりにへり下る(真似をする)。恥ずべきである。

陽剛に過ぎており、心の底からへり下ることができません。

六四

悔亡ぶ。田(でん)して三品を獲。
象に曰く、田して三品を獲とは、功有るなり。

悔いは滅ぶ。狩りをして多くの獲物を獲る。

田は狩り、互卦の離は網ないし兵器の象です。六四は柔弱にして応爻なく、九三に乗して悔いあるべきですが、正位にして巽卦の主爻、かつ九五に比して服従しているので、悔いはなくなるのです。

九五

貞にして吉、悔亡ぶ。利しからざる无し。初(はじめ)无く終(おわり)有り。庚(こう)に先だつこと三日、庚に後るること三日。吉。
象に曰く、九五の吉は、位正中(せいちゅう)なればなり。

正しき道を堅く守って吉、悔いは滅ぶ。初めは苦労するが終わりはよろしい。(事を変更して命令を発布するときは)先立つこと三日間は熟慮し、その後三日間は成り行きを熟慮し(然る後に発布する)。吉。

庚の日は物事を変更する日。三日先立つのは丁、丁寧の意味。三日遅する日は癸、取り掛かるの意味。山風蠱の卦に先甲三日、後甲三日とありますが、蠱の卦は弊害を除き去って事を新たにするのであるから甲の字を用い、巽の卦は一部分を変更するので庚の字を用います。

上九

巽いて牀下にあり、その資斧を喪う。貞なれども凶。
象に曰く、巽して牀下に在りとは、上にして窮まるなり。其の資斧(しふ)を喪ふとは、正乎(せいこ)として凶なるなり。

へり下ること、腰掛けの足元(六四)に従うが如くであり、その金銭や斧を失う。正しい道であっても凶。

へり下ること窮まって、功績を挙げた六四に対して、何の縁故もないにも関わらず媚びを売ろうとします。斧は、巽卦の木と兌卦の金の象、万能の器具を表します。金銭や財産を失うが如く、持ち前の剛強さを失ってしまうのです。

まとめ

巽の時といえども、むやみにへり下るべきではなく、正しい道を守り、時と場所を心得るべきことを説きます。

初六と六四は、上の九二と九五に従うべきですが、初六は決心しかねて、六四は大なる功績を挙げます。

九二は、よく巽順の徳を守ります。九五は、巽順にして天子の行いを成すのに初めは苦労しますが、後には吉を得ます。

九三は剛強に過ぎて節操なく、上九は窮まって持ち前の資質を失います。

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