50.火風鼎(かふうてい)~破壊的創造①

六十四卦の五十番目、火風鼎の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/na67c70c64e15

50火風鼎

主爻

主爻は、六五と上九です。六五は周の武王から天下を引き継いだ成王、上九は成王を補佐する周公の如き人物です。

初六

鼎(かなえ)、趾(あし)を顛(さかさま)にす。否を出(いだ)すに利し。妾を得て其の子を以てす。咎无し。
象に曰く、鼎、趾を顛にすとは、未だ悖(もと)らざるなり。否を出すに利しとは、以て貴に従ふなり。

鼎の足を(持ち上げて鼎全体を)逆さまにする(正しい道に悖ることではない=正しい)。(九四の貴人の指図に従って)(塵や埃などの)汚らわしいものを取り除くのがよろしい。(九四の)妾(=初六)が子を産む(予期せぬ嫡子に恵まれる)ようなものである。咎はない。

沢火革の続き、ひっくり返すと鼎の卦になります。その状態を上手く用いて悪いものを一掃します。妾が子を産むのは正しい道に反するように思えますが、子宝に恵まれないときは返って宜しきことになるのです。

九二

鼎、実(じつ)有り。我が仇(きゅう)、疾(やまい)有り。我に即く能はず。吉。
象に曰く、鼎、実有りとは、之く所を慎むなり。我が仇、疾有りとは、終に尤无きなり。

鼎の中に料理の材料が入っている。我が敵(初六)は病に罹って(それを自分に伝染そうとして)いる。しかし私を穢すことはできない。吉。

充実したる陽爻であり、鼎の中も具材で充実しております。比する初六は陰爻にして柔弱なる病人、未だ旧い慣習や制度を脱却しきれていません。之く所を慎むとは、六五の天子を補佐して軽率な行為を慎むことです。

九三

鼎の耳革まる。其の行塞がる。雉の膏(こう)食(くら)はれず。方(まさ)に雨ふれば悔を虧(か)く。終に吉。
象に曰く、鼎の耳革まるとは、其の義を失ふなり。

(火を焚きすぎて)鼎の耳(六五)の形が変わってしまう。行くべき道が塞がって(鼎を持ち運ぶことができない)。(鼎で調理した)キジの脂(美味なるもの)を食べることができない。やがて(六五との縁を得て陰陽和合し)恵みの雨が降れば悔いはなくなるであろう。最後は吉。

九三も同じく中身の充実している陽爻。しかし剛強に過ぎ、むやみに火を焚き過ぎて中身が煮えたぎり、鼎の耳までも熱くなって持ち運ぶことができません。大改革を悦ばぬ人に対して過激に過ぎると、上手く治まらず新しい制度を運用することもできません。中正たる六五は上下と比し九二と応ずるも九三とは縁がありません。陰を兼ね備えて心革めれば最後は吉です。

九四

鼎、足を折る。公の餗(そく)を覆す。其の形渥(あく)たり。凶。
象に曰く、公の餗を覆す。信(まこと)に如何せんや。

鼎の足(初六)が折れる。(初六が)公に振る舞われた膳を引っくり返してこぼす。(こぼれた料理が流れ出て)鼎の姿かたちはずぶ濡れになる。凶である。

不正の陽爻、才能足りない大臣。応ずる初六に重大なる任務を与えるも、初六は失敗します。

九四(繋辞下伝)

繋辞下伝の第五章より抜粋します。

子曰く、徳薄くして位尊く、知小にして謀大(ぼうだい)に、力小にして任重きは、及ばざること鮮(すくな)し。易に曰く、鼎、足を折り、公の餗(そく)を覆す。その形渥(あく)たり。凶と。其の任に勝(た)へざるを言ふなり。

孔子曰く、道徳が薄くして位が尊く、智慧が少なくして大いなることを計画し、力量が小さくして任務が重大であるときは、禍に罹らない者は少ない。鼎の卦の九四に曰く「鼎、足を折り、公の餗を覆す。その形渥たり。凶。」と。その者が、その任務に堪えることができないことを言うのである。

六五

鼎黄耳(こうじ)にして金鉉(きんげん)あり。貞しきに利し。
象に曰く、鼎黄耳とは、中以て実(じつ)と為すなり。

鼎の耳は黄金(中なる六五)にして、金の鉉(上九)が耳を貫いている。正しい道を堅く守り通せばよろしい。

黄色は中正なること、耳は虚心にして人の言葉をよく聞き入れることです。柔順中正なる六五は、九二と上九の賢人の言葉をよく聞き入れるのです。

上九

鼎、玉鉉(ぎょくげん)あり。大吉にして利しからざる无し。
象に曰く、玉鉉、上(かみ)に在るは、剛柔節するなり。

鼎(の最上部)に玉の(如く麗しい)鉉がある。大吉にしてよろしくないはずはない。

鉉は、六五からみれば強固にして貞なる諌めを受けるべき金、上九からみれば温和にして柔和なる玉で同じものです。上九は陽剛にして陰柔、陰陽の徳が程よく調和しているのです。

まとめ

水風井の卦と同じく、上の二爻が良い内容で、片や水が汲み上げられ、片や料理が汲み上げられます。また同じく初爻が悪い内容で、いずれも底に汚物が溜まっております。

自己の内的探求を通じて、その成果を少しずつ発信することにより世界の調和に貢献したいと思っております。応援よろしくお願いいたします。