56.火山旅(かざんりょ)~放浪の旅①

六十四卦の五十六番目、火山旅の卦です。
爻辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n3541eabbf46e

56火山旅

主爻

主爻は六五です。放浪先にてお上に真心が通じて、遂に官職を得るのです。

初六

旅にして瑣瑣(ささ)たり。斯(こ)れ其の災(わざわい)を取る所なり。
象に曰く、旅にして瑣瑣たりとは、志窮まるの災なり。

旅の途中にして、せわしなく落ち着きがない。これは災いを受けるべき態度である。

艮卦は小石の象であり、小石のごとくこせこせとして度量が小さく、それがかえって災いを招くのです。もっと大らかであるべきです。

六二

旅にして次(やどり)に即く。其の資を懐く。童僕(どうぼく)の貞を得。
象に曰く、童僕の貞を得とは、終に尤(とが)むる无きなり。

旅の途中にして、宿屋に立ち寄る。費用を支払うべき財貨は十分にある。随行する召使いも正しき態度を順守している(ので咎はない。)。

艮卦は門の象であり、宿屋の門に入る形。互卦の巽は利益の象であり、六二の懐が暖かいことを表します。

九三

旅にして其の次を焚(や)く。其の童僕の貞を喪(うしな)ふ。厲(あやう)し。
象に曰く、旅にして其の次を焚く。亦た以(すで)に傷(いた)まし。旅を以て下に興(くみ)する、其の義喪ふなり。

旅の途中にして、宿屋が火災で焼失する。随行する召使いは(九三の横暴なる態度に腹を立てて)反抗的な態度を取る。危うい。

外卦の離は火の象であり、六二にて立ち寄った宿屋が火事に遭うことを指します。九三は中正を外れて剛強に過ぎており、かような態度で旅を続けていては宿を失い、下僕や財産をも失います。

九四

旅にして于(ここ)に処る。其の資斧(しふ)を得。我が心、快(こころよ)からず。
象に曰く、旅にして于に処るとは、未だ位を得ざるなり。其の資斧を得とは、心未だ快からざるなり。

旅の途中にして、久しく落ち着くべき処にいる。(地元の君主に認められて)資金と斧(万能なる器具)を得る。しかし(十分なる待遇を得るには程遠く)自分の心は晴れない。

互卦の内卦の巽は木、外卦の兌は金、合わせて斧となり、あらゆる用途に使える器具を総称します。九四は陰位にあって陽徳と陰徳を兼ね備え、かつ貴い身分にして才能を認められますが、まだ十分ではありません。

六五

雉を射て一矢(いっし)亡ふ。終(つい)に以て誉命(よめい)あり。
象に曰く、終に以て誉命ありとは、上逮(およ)ぶなり。

(仕えるべき君に献上するための)雉を射るも(得られずして)矢を失う。しかし最後は官職の命を得よう。

離卦は雉の象、矢は坎の象ですが離卦の裏であり消失する意。命令は巽卦の象です。六五は旅先において、その国の君主に仕えたいと思い、献上するための雉を射ますが、得られず矢と共に失います。しかし君主は六五の道徳才能を認めて、遂に十分なる官職を得るのです。

上九

鳥、其の巣を焚く。旅人(りょじん)先には笑ひ、後には號咷(ごうとう)す。牛を易に喪ふ。凶。
象に曰く、旅を以て上に在り、其の義焚(や)かるるなり。牛を易に喪ふ、終に之を聞く莫(な)きなり。

鳥がその巣を焼かれる。旅人は最初は(居心地の良い場所を得て)笑い、最後は(居場所を失い)嘆き悲しむ。牛(の如き柔順なる徳)を失ったからである。凶。

離は鳥と火の象、巽は木と風の象。鳥は木の上の巣にいるものですが、その巣が焼けてしまいます。旅人が途上の居場所を失うことを指します。上九は驕り高ぶっており、人の同情を失ってしまったのです。

まとめ

本国を去って他国に逃れ、その地で新たなる官職を得るには、柔順にして中正、かつ明晰なる徳が必要であることを教えるものです。

それらの徳が足らずして困窮するのが初六と九三と上九です。

六二は落ち着くべき宿を得て、九四は満足なる官職を得る手前まで進み、六五にしてようやく十分なる官職を得ます。

自己の内的探求を通じて、その成果を少しずつ発信することにより世界の調和に貢献したいと思っております。応援よろしくお願いいたします。