59.風水渙(ふうすいかん)~四分五散②

六十四卦の五十九番目、風水渙の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n0b888af31414

59風水渙

主爻

成卦の主爻は九二と六四、主卦の主爻は九五です。九二は艱難の中にあって落ち着き安んじ、六四は公明正大にして九五を補佐し、九五はその助力を得て天下和合を果します。

初六

用つて拯(すく)ふに馬壮んなり。吉。
象に曰く、初六の吉は、順なればなり。

天下を救うに馬(九二)が意気盛んである。(柔順にして九二に従い)吉。

渙の卦の初めにして、天下の散乱がまだ甚だしからぬ時でありますが、柔弱なる初六は自力で救済する術を持ちません。しかし強壮なる九二に比しているので、これに柔順に従うときは吉です。

九二

渙のとき其の机(き)に奔(はし)る。悔亡ぶ。
象に曰く、渙のとき其の机に奔るは、願(ねがい)を得るなり。

渙の(散乱したる)時にあって(安んずるべき)机に向かう。悔いは滅ぶ。

渙の乱れが激しくなり、九二は奔走する最中にあって落ち着き安んずるべき初六の元へと向かいます。初六は机の足であり、九二は机の身の部分です。初六は九二の剛強さを頼みとし、九二は初六の人民を頼みとします。九五の天子と不応にして連絡することは容易ではありませんが、今はまだ天下の人民を愛撫し、後に天下の散乱を救う端緒となるので悔いはないのです。

六三

其の躬(み)を渙(ちら)す。悔无し。
象に曰く、其の躬を渙すとは、志、外(ほか)に在るなり。

(志を上九に向けて)我が身を散らす。(能力足らずして散るとも)悔いはない。

互卦の艮卦は身体であり、巽の風が我が身を吹き散らします。能力の乏しい六三の身は散じますが、世の乱れを救うべく一身を投げ出して上九の元に向かうのであり、たとえ失敗したとしても悔いはありません。

六四

其の群を渙す。元吉。渙のとき丘有り。夷(つね)の思う所に匪ず。
象に曰く、其の群を渙す、元吉とは、光大(おおい)なるなり。

自分の党派を散じて(私欲を捨てる)。大いに吉。天下の散乱したる時にあって(人民が)丘の如く(六四を慕って押し寄せる)。(六四の志は)万民の考えの及ぶところではない。

九五に比する大臣の職ながらも、己の私党を捨てて天下のために我が身を投げ出します。万民はその態度に敬服し、互卦の艮卦の丘陵の如く六四の元に慕い参じます。渙を治むるに渙をもってするのです。

九五

渙のとき其の大号(たいごう)を汗にす。渙のとき王居(お)る。咎无し。
象に曰く、王居り、咎无しとは、位を正しくするなり。

天下の乱れたる時にあって、大号令を(体から汗が噴き出るが如く)発する。乱れたる時にあって、王は(どっしりと安んじて)居る。咎はない。

命令の発布は巽の象。九二と応じてはおりませんが、柔順なる六四が傍に控えております。九五の天子は慌てふためくことなく、その椅子に座って天下にあまねく命令を発し、無事に天下の乱れは収まります。

上九

其の血を渙す。去りて逖(とお)く出づ。咎无し。
象に曰く、其の血を渙すとは、害に遠ざかるなり。

血(を流すような惨事)を吹き散らす。遠くに去って行く。咎はない。

血は坎卦の象。天下の乱れから遠い場所にあって、超然として世を避ける人です。

まとめ

初六は能力足らずして九二に従い、九二は九五と連絡取れずも初六の人民を安撫して時局を救済すべく尽力します。六三は初六と同じく能力足りないながらも、身を投げ出して時局の救済に尽力します。

六四は公明正大にして、私党を投げ出して九五に従い時局を解決すべく奮闘します。九五は六四の助けを受けて、天下に命令を発布して乱れを解決します。

上九は無位無官にして時局から離れたる者であり、自分の身を損うものから遠ざかっています。

自己の内的探求を通じて、その成果を少しずつ発信することにより世界の調和に貢献したいと思っております。応援よろしくお願いいたします。