60.水沢節(すいたくせつ)~物事の節目②

六十四卦の六十番目、水沢節の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/ncbe81ded7472

60水沢節

主爻

主爻は九五です。他の爻は自分自身だけを節制しますが、九五は自分だけでなく天下万民にも節度を与えます。

初九

戸庭を出でず。咎无し。
象に曰く、戸庭を出でずとは、通塞(つうそく)を知るなり。

(行く手が塞がり通行できず)戸内の庭より外へは出ない。咎はない。

正位にして志正しい陽爻ですが、身の程をわきまえて節度を守り、応ずる六四の元へは行かずして引き籠るのが最良であることを知っているのです。

初九(繋辞上伝)

繋辞上伝の第八章より抜粋します。

戸庭を出でず。咎无し。子曰く、乱の生ずる所は、則ち言語以て階と為す。君、密ならざれば即ち臣を失ふ。臣、密ならざれば即ち身を失ふ。幾事(きじ)、密ならざれば即ち害成る。是を以て君子は慎密にして出さざるなり。

水沢節の初九の爻の言葉を指して、孔子曰く、天下が乱れるところは、(節度のない)言葉が(その乱へと向かう)階段となるのである。君たるものが(言葉を慎まず)言ってはならぬこと言うときは、臣下が君を離れて去ることになる。臣下が(言葉を慎まず)秘密を漏らすときは、自分の身を滅ぼす。機密なることをうっかりと漏らすときは、大いなる損害が出る。それゆえに、君子は常に慎んで、軽々しく言葉を出さないのである。

九二

門庭を出でず。凶。
象に曰く、門庭を出でず、凶とは、時を失ふこと極まれるなり。

(時機を失うこと窮まって)門の内側の庭より外へは出ない。凶。

門庭は、初九の戸庭よりも外に近い場所にあります。互卦に震があって進むべき時ですが、九二は節の時であることにこだわって、かつ互卦の艮があることで足が止まり、動くべき時期を逸します。九二は沢の水が相当集まった時であり、この水を上手く使うべき時であるのに、九二はそれを怠っているのです。

六三

節若(せつじゃく)せざれば、則ち嗟若(きじゃく)す。咎无し。
象に曰く、節せざるの嗟(なげき)は、又誰をか咎めんや。

節度を守れずして、嘆き叫ぶ。(しかし反省すれば)咎はない。

六三は兌卦の主爻であり、沢が溢れ出る場所にあって、かつ喜ぶこと甚だしく、節制せずして有頂天になっているのです。

六四

節に安んず。亨る。
象に曰く、節に安んずるの亨るは、上の道を承くるなり。

節度を守って安んじる。(九五の下にあって柔順であるから)亨る。

正位なる陰爻、九五の真下を承けて節度規律に安んじて従っております。

九五

甘節(かんせつ)なり。吉。往きて尚ばるる有り。
象に曰く、甘節の吉は、位に居ること中なるなり。

(中徳をもって適度な)節度に(他の爻も)甘んじる。吉。進んで行動すれば尊ばれるであろう。

甘節は、上六の苦節の対義語。厳しすぎず優しすぎず、その節度が程よいものであり、天下万民はその節度に甘んじるのです。

上六

苦節なり。貞なるも凶。悔亡ぶ。
象に曰く、苦節なり、貞なるも凶とは、其の道窮まるなり。

節度(の立て方が甚だ厳しく)苦しむ。正しい道であっても凶。(後悔して改めれば)悔いは滅ぶ。

節度に安んずることなく、節制し過ぎて我が身を苦しめます。正しい道ではあるのですが、やり過ぎてはいけません。

まとめ

初九は家の中の庭で節度を守って引き籠り、九二はやや外に近い庭で節度を守り過ぎて動くべき時を見失い、六三は節度を守らず軽率にして嘆き悲しみます。

六四は九五の定める節度に甘んじて安んじ、九五は天下に程よい節度を与えて万民はこれに甘んじます。上六は節度が厳しすぎて身を滅ぼします。

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