小説「星の子」読了
ありがち、なことが起こらないだけでも、ほんとに貴重な小説だと思います。
わかりやすいパターン、にはめ込むことを多くの人が好むわけで、
この、多くの人が好む、というのは、言い換えれば「市場がひろい」ということにもなる。
したがって、売れる、ことを前提にするならば、何事もどうしてもわかりやすく、「そうそう!そうなったら感動する!」という黄金パターンを、いかに気持ちよく作り出すか、というのがドラマ作家の目標になってしまいがちだと思う。
わたしのようなひねくれ者はそういう、「ありがちな感動する話」を聞かされると、はなくそをほじって「ケッ」と言い出してしまうわけですが、じゃあ、わたしのようなひねくれ者に対応した作品、というのは、少数派向けのもの、ということになるので、たいして売れないのですね。
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この「星の子」はカルト宗教の家庭に育った女の子「ちひろ」が主人公である。
カルト宗教、たとえばオウムでよいですが、「オウム真理教」と聞いたときに、人々が何を想像するか、どういう物語を期待するか、というものは、たぶんあると思うんですね。
森達也が「A」「A2」を撮った時、「オウム真理教というフィルターを通して社会を見る」ということを目論んでいたわけですね。カルト宗教のサイドに潜ることで、社会の歪みや気持ち悪さがかえってよく見える。
しかし、それもそれで、あるいみ我々が期待してしまうものでもあるのです。
本作「星の子」は視点を一人称視点に設定し、5歳、小4、小5、中1、中3,この年齢の少女、林ちひろの視点からはみ出さないように世界が描かれる。
その効果は絶大で、いいことも悪いことも、何一つ確定しない。
カルト宗教だろうが、なかろうが、思春期の女の子が通っていくだろう「ごく普通の日常」というものが淡々と描かれる。
これは「この世界の片隅に」に描かれた、浦野すずの日常と似ている。戦争、戦時中、と聞いて我々が脊髄反射的に想像する悲惨さ、絶望、苦しみ、そういうものとは切り離された、バカバカしく、おだやかな日常。
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カルト宗教はこんなにも恐ろしい
という立場ではなく、かといって
カルト宗教はそんなに悪いものじゃない
という立場でもない。
何事かを安易に決めつけない視点、こそがこの作品の最も愛すべきポイントなのだと思います。
題材の宗教はなんなのかな?
あんま宗教のことは知らないけれど、
オウムはもちろんベースにありながら、統一教会みたいな感じもあるし、信仰心は薄いけれど部活みたいな感覚でいろんな人が入信してコミュニケーションの場として宗教を役立ててる感じは創価学会のようにも思える。
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おとうさんも、おかあさんも、我が子がほんとに大事で好きで、そういう愛の中から、カルトにはまる道もできてしまったが、
では家族は崩壊したのか、というと、すれちがいながらも、おたがいが愛を伝えよう、としている。
すべてのたとえ話としてのラストは圧巻で、
涙がでそうになりました。
映画化するそうで、楽しみです。
※追記コメント
映画の実名がたくさん出てくる小説でした。
・ターミネーター2
・幸福の黄色いハンカチ
・真夏の出来事
・となりのトトロ
▽
中1~中3ぐらいのシーンは芦田愛菜でもちろんいけるだろうが
小4、小5あたりの年齢は誰がやるんだろう?
いまの芦田愛菜が小学生やるのはそうとうきつくないかな・・・
5歳のシーンは別の女の子でやるしかないけれど、芦田愛菜自体が子役として活躍してきたので、ちいさいときの芦田愛菜のことをみんな知ってるのがネックよね。
「誰やこいつ、芦田愛菜とちゃうやん」と言い出す俺みたいなやつが出てくる。
[2020.03.22 facebookから]
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