プロレス・デスマッチ団体「フリーダムズ」佐々木貴社長に教わる「デリバリー不要論」。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:飲食ビジネスと経験価値。デリバリーは価値あるリスクか。プロレスと飲食の共通点。こだわりをなくすことはビジネスを失うことと同義という極論。デスマッチファイターはなぜデスマッチをできるかの理由。なぜ、デスマッチ団体フリーダムズだけが後楽園ホールを満員にできるかの理由。
デリバリーのツケがまわってきた?
先日書いたデリバリーに関する記事が、「下司 智津惠|
Geshi Chizue/Ordinary Studio & 月と流星群さま」運営の
「参考になったnote」に入れていただきました。下司さま、ありがとうございました。
さて、これに気をよくしたわけではないのですが、デリバリーについて、もう少しお話させていただきたいと思います。
この記事で、実は僕が言いたくて言えなかったことがあります。
それは、デリバリーをウーバーなどいわゆるデリバリー業者にまかせるレストランの、飲食店の方々はこんな心配しないのかなぁ、という素朴な疑問です。
⚪せっかくのおいしい料理が、ボロい自転車ででこぼこ道を走って崩れたり、ばらばらになったりしないのだろうか
⚪せっかくのおいしい料理が、デリバリーに時間がかかりすぎて、まずくならないのだろうか
⚪せっかくのおいしい料理も、待たせ過ぎたら、お客さんの機嫌が悪くなって、食べるより先に怒るのじゃないだろうか
⚪せっかくのおいしい料理もデリバリーの人の手が汚れていて、消毒もしてなかったら、コロナは大丈夫なのだろうか
⚪せっかくのおいしい料理も、デリバリーの人が調理のこだわりについて教えてくれなければ、価値が下がるんじゃないだろうか
⚪せっかくの料理も、熱々の状態で食べてもらわなければ、本来の美味しさをお客さんに味わってもらえないのではないか
前回も申し上げましたが、食事をするという「経験価値」とは、その経験のはじめから終わりまでの間でお客さんが感じた満足度、ということです。
お店ではこの経験価値を計算し、コントロールすることができます。
店主の目が行き届くからです。しかし、デリバリーでは料理を作ったあとは、完全に目が離れます。
ここを空白にするリスクが、先に上げたあなたの心配なのです。
「お客様に、料理本来の味を美味しく味わってもらう環境や条件が整わなければ、お客に『本来の経験価値』を届けたことにならない」、そう考えるあなたは正しいと思います。
前回の記事のタイトルはこうでした。
デリバリーを甘く見た飲食店はこれからそのツケを払うことになるだろう
想像するに、すでに多くの飲食店がそのツケを払っているのではないでしょうか。
それは、さっき書いたような、「本来美味しく食べてもらう条件が整わない」ことによって、お客様の飲食機会という経験価値が落ちてしまったからです。
デリバリーは飲む価値のあるリスクか
こんなことならば、いっそのこと、デリバリーなんてやらないほうがよかったのでは?
「お前黙って聞いてれば、飲食店の大変さをわかってない。そんなこと百も承知だけれど、店を存続させるためにはしょうがないだろう。うちはデリバリー中に多少味が落ちたって、十分美味しいわい。」
そうおっしゃる読者の皆様がいらっしゃることは承知で、この人物の話を聞いてほしいのです。
その人物とは、プロレス団体フリーダムズ(Freedoms)の代表取締役社長・佐々木貴(ささき・たかし)さんです。
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彼はこう言うのです。
「オンラインでプロレスは配信しない」。
これは飲食店に例えると、
「うちはデリバリーはやらない」。
って言うことです。
具体的に、佐々木社長のお話を聞いてみましょう。
「ウチの団体はコロナ禍でも、オンラインライブ配信はしませんでした。これからもしません。なぜならば、ウチの団体のプロレスは、あくまでお客さんに生で見てもらってなんぼだからです。
オンライン配信、ストリーミングとかで見てもらっても、ウチのプロレスの良さはわかってもらえません。
僕は、プロレス界の流れがオンライン配信が常識、という感じになっていることに危機感を覚えます。それは本来のプロレスじゃないと思うんです。
もちろん、ウチもコロナで大変だから、オンライン配信やったほうが収益的にいいに決まっているけれど、プロレスの未来を考えると、僕らの方針は正しいと思っています。このこだわりこそが、フリーダムズ、ですから」。
以上、必ずしも正確ではありませんが、佐々木氏は、最近の週プロ(週刊プロレス)にこんなことを語っていたのです。
フリーダムスと言えば、いま、日本で最も過激なデスマッチを行うことで知られる、プロレス団体です。
デスマッチのカリスマ・“狂猿”こと葛西純(かさい・じゅん)選手を擁し、
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カルト的な人気を誇っており、いま後楽園ホールの興行を満員にできるのは、新日本プロレスでなくて、葛西純が登場する時のフリーダムズだ、という声もあるくらいです。
プロレスを料理に例えれば、佐々木氏の考えは理解できます。
佐々木氏は熱々の出来たての料理、つまり生のプロレスを、その場で食べてもらいたい、つまり目の前で見てもらいたい、のです。デリバリーつまりオンライン配信をするくらいなら、プロレスをやらない、と言っているわけです。
フリーダムズがライブ配信をやらない本当の理由
オンラインで致命的なのは、レスラーのモチベーションだと思われます。
観客がいない。拍手もない、視線もない。観客席の熱も、ない。
当たり前です、お客さんがいないのだから。
レスラーたちは「テレビカメラ、映像モニターの後ろにいるお客さんを意識するようにしている」、そんなことを言いますが、オンライン実況を見てくれるファンのためのリップサービス、でしょう。
ましてや、フリーダムスはデスマッチが売りです。
デスマッチとは、通常のプロレス以上に、ノリ、なんです。流れなんです。
言葉を変えれば、お客に乗せられないと、偶然の流れができないと、いいデスマッチができないんです。
有刺鉄線バットや蛍光灯、無数の画鋲なんかを持ち込んでも、お客さんがぎゃ~とか、ワーとか反応してくれなければ、使えません。お客さんが盛り上がらなければ、レスラーは命がけのファイトはできないのです。
オンライン配信では、本来のフリーダムズがお客に保証できる品質のファイトが提供できないのです。
結局飲食もプロレスも「こだわり」を売ってるんじゃないか?
佐々木社長のこの姿勢は、飲食に限らず、ビジネスの根本を問うものとも言えるでしょう。
それは、「こだわりはあるか」ということです。
こだわりとは、商売が成功するとか、売れるとか売れないとか以前の、人間としての態度であり、信念です。
ゼニカネじゃなく、守り通したい理想です。
それがなければ、どんなにお客さんが入っても、売上が上がっても意味がないのです。
実はプロレスの本質って、そこなんですよ。
プロレスファンは「こだわり」を観に来ているんです。
こだわりのないプロレスは、どんな高度なテクニックの応酬があっても、プロレスじゃあないのです。
逆に言うと有名レスラーがいなくても、団体が知られてなくても、強い外人レスラーが来てなくても、いいんです。
初期のFMWが、W★INGが、なぜあれだけ爆発的な人気団体になったのか。それはただひとつ、「こだわりがあったから」に他なりません。
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佐々木社長にとっては、オンライン中継した時点でプロレスに対してのこだわりはなく、こだわりのないプロレスはプロレスではないのです。
僕が関わっている新潟プロレスも、飲食関係の企業が多数スポンサーになってくださっています。
なぜか、プロレスと飲食って、通じるものがあると思うんです。
両者とも「こだわり」を売っている、そういう経営者が多いんですね。
まあ言いすぎなのはわかってますよ。でも年末だから・・😁
でも、いらっしゃるんじゃないかな、飲食の皆さんの中にも。
「本来の俺っちの味を味わってもらえないなら、デリバリーなんてやらねえ」(葛西純の口ぶりで)と、おっしゃる方々が。
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多くのプロレス団体が、オンラインの生配信サービスに舵を切りました。
しかし、それはプロレス衰退への道なのかもしれません。フリーダムス以外の。
今年1年のご愛顧に感謝いたします
さて皆様、今年5月くらいからnoteを始めて今日で230数回目になります。
皆様が読んでくださるから、こうして続けられてきたことに心より感謝申し上げます。つたない内容ばかりで、お目汚し多々あり、申し訳なく思っています。
でも来年も全力でやります。毎日書きますよ。
また来年も、よろしければ、ご愛読下さい。
質問やこんな記事を書けなどのリクエスト、お待ちしております。
それでは皆様、オミクロン株にはくれぐれもお気をつけになり、良いお年をお迎え下さい。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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