デリバリーを甘く見た飲食店はこれからそのツケを払うことになるだろう
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:コロナ一段落、ビジネス再開したアメリカのデリバリー最新事情。経験価値マーケティング。カスタマー・タッチポイントという現代マーケティング最大の急所の応用の仕方。
デリバリー関係で炎上した作家の言葉とは
コロナで当たり前になったウーバーイーツ等のデリバリー。こんな話がありましたよね。ある有名作家がこんなことを言ったと言うんです。
この発言は一部で炎上してネットで「お金ないからデリバリーの大変な仕事してるのに、金持ちが言うな」という反論が殺到したのです。
しかし、この作家の発言は、ある種いまの企業経営に大きなヒントをくれています。
今日の(11月28日2021年)The Wall Street Journalオンラインはour Favorite Restaurant Might Be Taking Delivery Off the MenuーApplebee’s, Olive Garden, IHOP are among eateries shutting off online orders for stretches
(僕らのお気に入りのレストランがメニューからデリバリーをなくした。アップルビーも、オリーブガーデンも、アイホップもオンライン注文をやめた)という記事を載せて、多くのレストランがお客が戻ってきたのでデリバリーをやめる宣言をしていることを報じています。
ご承知のとおり、アメリカでもコロナで来客が激減、多くのレストランがテイクアウト、デリバリー注文ビジネスに乗り出すことを余儀なくされました。
しかし、今、コロナが一時的に落ち着いて、ぼちぼちお客さんが戻ってきています。多くのレストランはすでにデリバリーの余裕がないのです。
そもそも日本でもそうですが、来店客が比べ、デリバリー、テイクアウトは利益が少ないわけです。
その中で来店客を第一にするのは当たり前です。
原材料も人件費も高騰、相変わらずの人手不足と来ては、デリバリーに割く人も手間もありません。
いま、アメリカの外食業界で何が起こっているのか
デリバリー、持ち帰り(to go)に関してアメリカの外食業界で起こっていることをまとめました。
少し前までは
・ピックアップウィンドウ(持ち帰り専用窓口)に投資
・レストランの客席を改装して持ち帰りピザのコーナーにした
そんな事がありましたが、
今は
・来店客の世話に忙しい時はデリバリー、オンライン注文を休止
・パンケーキチェーンのIHOP では、夕方のそしてウィークエンドの午前中デリバリーをやめた
・コロナが落ち着いて客がレストランに戻っているにも関わらず、ドアダッシュ、ウーバーイーツ等デリバリー大手の7月から9月の第三四半期の売上は伸びている。コロナ前の同時期で比較すると20%増だ。
・ 原材料のコスト増、来店客の激減が利益を圧迫しており、そして労働力は逼迫を続け、多くのレストランがまだデリバリーとテイクアウトをオプションとしてやらざるを得ない。デルタ株、そして「オミクロン株」でまた客足が鈍ってきたからだ。また、政府のマスク規制なども復活して、ますます客が遠のく可能性が出てきたからだ。
・ブルックリンにあるピザレストランフォルニーノ(Brooklyn-based pizza company Fornino)はアプリからの注文を休止、自社のHPからのみの注文に制限した。
日本の外食業界が忘れている大事なこと
さて、冒頭の作家の件に戻りますが、記事によると、外食産業はデリバリーのリスクを軽視している、というのです。
電話の応対も重要です。店内客でてんてこ舞いで注文の電話が来てもぞんざいに「40分後に電話して!」と通話を一方的に切られるなどすると、お客は二度と注文、来店しないというのです。
経験価値マーケティングということが、ここ20年くらいマーケティングの世界で唱えられています。
モノより思い出という日産自動車のCMのフレーズがまさにそれを一言で表しています。
製品やサービスが消費者に渡るまでの”経験“こそが、消費者の求める本当の価値なのです。
多くの飲食店を見て、僕はこんなことを感じるんです。
実践!デリバリー、タッチポイント戦略
例の作家さんのいうことに賛同はできないけれども、配達員の服装まで”客が評価する経験“と考えるならば、理解できます。
これを逆手に取ると、こんな戦略が出てきます。
・有名ホテルは絶対にデリバリーを外注せずに、外商専門、カスタマー専門の係員をデリバリーに派遣する。
・客の要望によって配達員のコスプレサービスを行う
・会席料理などのコース料理のデリバリーを、盛り付け担当スタッフも一緒に派遣し、届け先で会食を整える
デリバリーこそ最高のタッチポイント
最新マーケティングであるプリシジョン・マーケティングの用語に、「カスタマー・タッチポイント」という考えがあります。
それは、文字通り企業と顧客の接点です。デリバリーこそ最上のタッチポイントです。
そこはブランドが試される場所です。企業の、製品、サービスのすべてをそこで爆発させるべきで、このチャンスを逃すべきではありません。
まだまだこのラスト・タッチポイントの使い方はあるはず。また考えてみます。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまたあしたお目にかかりましょう。
野呂一郎
清和大学教授
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