タッチパネルは客を来なくする悪魔の選択(高校生向け)
高校生のキミがこの記事を読んで得られるかもしれない利益):いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)は日本のGDPを押し上げたりしないこと。経済発展のカギはクリエイティビティにあり。
真に経済を動かすのは創造性だ
高校生の皆さんこんにちは。
さて、きょう日、どこへ行っても飲食店はタッチパネルだよね。ファミレスから、回転すし、僕はこれが日本経済をダメにすると言いたいんだ。
きのうはおとな向きの連載で、マーケティングがライバル分析が下手だから、いや、そもそも世界の現状を把握してなくて、未来が見通せてないから経済が発展しないんだ、と言った。
しかし、別の観点から考えると、日本経済がダメなのは、クリエイティビティ(創造性)がないからだ。
クリエイティブとは、たとえば、新しいテクノロジーの開発で、新規事業を打ち立てることだ。マイクロソフトがIT技術で、世界を変え、アメリカ経済を復活させたのは、その最も劇的な例といえるだろう。
すべてのクリエイティビティは、考えから始まる。
あらゆる考えは、一人でいたときにぱっと思いつく、というのではなく、他者とのかかわりの中で、生まれることが多い。
特に他人と話しているときに、それはおこる。
僕の大学の授業は私語禁止ではない、むしろ奨励する。
他人との何気ない会話の中で、アイディアは、クリエイティビティは生まれるからだ。
経営学とはつまり、クリエイティビティの学問だ。
どんな理屈よりも、新規の発想の方が重要なのだ。
既存の理論より、イノベーションの方が大事なのだ。
板前が育たないタッチパネル
タッチパネルが経済をなぜダメにするのか。
それは、板前が、店員がお客と話さなくなるためだ。
板前は、お客が目の前に座ると、こう言って迎える。
「いらっしゃい、きょうは生きのいいサザエが入ったよ」
「お客さんの好きな八海山を仕入れたよ」
お客は板前のすすめるままに、料理を酒を頼む。
うまい料理が酒を呼び、話が弾むとまた酒が進み、料理が欲しくなる。
客の好みを覚えておいて、この板前のように酒を料理を上手に進めることができれば、間違いなく彼(彼女)は、売り上げに貢献できる。
もちろんお客の満足度も。再訪率もあがり、リピーターになること必至だ。
しかし、タッチパネルで注文をするシステムでは、こうしたやりとりは一切ない。
客は画面とにらめっこ、注文を確定するのに必死だ。
リピーターを遠ざけるタッチパネル
タッチパネルは、決してユーザーフレンドリーな仕組みではない。
寿司を一貫頼むごとに、ワサビがいる、いらない、たれをつけるつけない、早くボタン押して注文したいのに、「これでいいですか」などと聞いてくる。
指でパネルを押しても反応しないことも、ままある。
そもそもコロナなのに、他人の指の跡がたくさんくっついているのに、なぜこんな不衛生なものを使わせるんだろう。
客にやらせるという態度自体が、サービス業として間違ってはいないか。
タッチパネルは、目先の労働を省いて、効率を上げるように見えて、サービスの質とお客の満足度を下げている。
結局長い目で見れば店は損をしているのだ。
そんなこといったって、現実は労働力不足だからしようがない。
しかし理由はどうあれ、タッチパネル導入は悪魔の選択だ。
なぜか。
それはもうけがどうのこうのではない。
クリエイティビティの問題なのだ。
ナレッジという宝の山を捨てるバカ
客との会話で、板前は、店員は、そして店も考えがひらめくからだ。
客の何気ない一言で、看板料理が生まれたとか、店の業態、レイアウトの変更を思いついたなどの事例は枚挙にいとまがない。
最新の経営学にナレッジという言葉がある。
直訳すると知識、だが、知識とかアイディアとか、知恵とかありとあらゆる知を総称した言葉である。
ナレッジをどうゲットし、経営に生かすが、経済を拡大するのである。
タッチパネルはお客のナレッジという、宝の山をみすみす捨てる暴挙だ。
それに気づいてない無数の飲食店。経営学を勉強してないのかなあ。
高校生のキミ、大学では経営学を専攻することをおすすめする。
今日はここまで。
また会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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