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あなたが報告書を書けない本当の理由。

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:昨日既報の米超党派機関の活動に見る、アメリカの強さ。日本はポテンシャルとしてはアメリカ人に劣ってないけれど、価値観と文化、そして教育の質が、決定的な社会的意思決定能力の差になってしまっているという暴論。

米戦略委員会の早業

昨日、今後数十年を見渡しての、アメリカの国防はどうあるべきかを政府に提言する組織、Commission on the Strategic Posture of the United States(アメリカの戦略的態度に関する委員会)について触れました。

驚くべきことに、2022年に結成されたこの委員会は、すでに報告書を2023年10月にまとめて、すでに議会に報告し、インターネットにも発表しているのです。

僕はこの委員会の仕事に、アメリカの強さが凝縮されていると考えています。

アメリカの強さ1:多様性

今さら言うまでもないダイバーシティ(diversity)ですが、多様性の原点は男女の区別なく実力で要職のポストに起用することです。

この委員会の会長はマデリン・クリーダムさん(Madelyn R. Creedon)という女性です。

クリーダムさん。https://qr1.jp/qTSvDq

この委員会はアメリカという国家の命運を左右する重要性を持っており、チェア(Chair会長)は、そこで進行役、まとめ役、そして報告書の編集・作成の総責任者をになう実力が求められます。

その重要ポストに差別なく女性を起用することは、アメリカが多様性を確立している証拠です。

もちろんこのことは、かつて男性中心社会であったアメリカが、紆余曲折を経て、ダイバーシティ(diversity)尊重の国になった、その果実でもあります。

僕の経験をお話しすると、サラリーマン時代もう30年以上前のことですが、アメリカの出版業界をくまなく調査する仕事に携わった時、10社以上のそうそうたる出版社を訪ねたことがあります。

その時、対応してくれたマネジャークラスが、すべて女性だったのです。

その頃は日本では、女性が管理職につくなど考えられないことでした。

女性に機会を与えない日本、積極的に与える、というよりジェンダーに関係なく平等に与えるアメリカ、この差は半世紀くらいあるのではないでしょうか。

アメリカの強さ2:書いてまとめる社会的要請

例えば日本でコロナ対策の委員会がありましたよね。

あの委員会ってもう解散しましたけれど、活動報告をまとめた報告書なんて作ってないでしょ。

ご存知尾身さん。https://qr1.jp/roeISj

日本は何でもそうですよ、戦争にしたって、災害にしたって、報告書なんて作ったためしがない。

それどころか、証拠やデータを消そうとさえする。

アメリカが強いのは、例えばどんな小さな紛争でも克明にその報告書をまとめ、そして公表するところです。

出来事の端緒から、概要、経過、そしてレビュー(反省)を報告書としてまとめるのです。

このことにより、アメリカは二度と失敗をしない智慧を身につけてきたのです

日本は太平洋戦争の総括すら、できていません。

誰もまとめないからです。

出来事を総括し、レビューするなんていう社会的な習慣とコンセンサスがないからです。

そう言うと、歴史に強いあなたはこういうでしょうね。

「馬鹿言うな、戦争みたいな利益が相反し、解釈が政治的、社会的立場によって違う出来事を、筋道をつけてまとめることなんてできるわけないだろ!」と。

それは一見もっともらしいですが、本当のところは、書いてまとめてレビューするという価値観が、日本は極めて弱いからです

まあ、あなたの

「戦争の事実、何人犠牲がでたとか、爆破されたとか、勝ち負けさえ、上に忖度して改ざんすることが当たり前だった日本は、報告書なんて作れねえよ」、

あなたの反論

という指摘はあたっているかも、ですね。

アメリカの強さ3:仕事のスピード

冒頭でも述べましたが、この委員会は22年に結成、そして委員会の目的でもある報告書作成は翌年に完成しています。

1年くらいで、報告書をまとめ上げているんですね。

日本だと、もし報告書を作るとなると、3倍から10倍はかかると思いますよ。

理由は3つ、集中力を発揮する社会的環境がないこと、議論の進め方を学んでないこと、書いてまとめる力が弱いこと、です。

集中力を発揮する社会的環境がないこと

あなたは、いつも会社で書類をきっちり作る時間がなくて、あるいは邪魔が多くて腐ってますよね。

外部の電話を取らなくてはならない、他の部の若手が相談に来る、上司があれこれ言いつける。

文書作成は集中力が必要なのに、籠もる自分の部屋さえなく、周りは邪魔ばかりする。

これが僕の言う「集中できない日本的環境」なのです。

https://qr1.jp/tPOS3t

これは話すと長くなるので、今日はここまでにします。

議論の進め方を学んでないこと

報告書をまとめるのは、議論をへないとだめですよね。

アメリカ人はケース・スタディをやっているから、議論がうまいんですよ。

ケース・スタディって?

これもまた後日説明しますけれど、ここでは議論のやり方、と言っておきます。

キーパーソンになるのは、この委員会で言うとチェアの女性です。

彼女が議論を上手に仕切るんです。

だから短時間で効果的な議論ができて、それを報告書にまとめられるんです。

書いてまとめる力が弱いこと

日本の弱さは受験に顕著です。

マルバツ、暗記、形式だけ。

自分の意見を理路整然に書け、なんてのはでない。

その理由は採点ができないから、なんて言っていますけれど、それは「管理」に便利な暗記教育を崩したくないからですよ。

結果として、書いてまとめる力が、大学を卒業してもまったくつかない。

あなたも若手を見て、学歴がこんなに高いのに、なぜ企画書や報告書が書けないのか、不思議に思うでしょ。

受験のせいなんですってば。

だから、物事をしっかり概観できないし、全体をまとめられないし、意見の調整もできないし、レビューという反省もできないんです。

日米の差はね、結局、教育の差なんですよ。

今挙げた3つのウィークポイントは、非常に複雑で深い事情があり、またの機会にお話することにしましょう。

野呂 一郎
清和大学教授


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