WWE的「善vs悪」では世界を救えない。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:昨日「塩梅」という日本の価値観について触れたその続き。両極端という西欧文明に対して、その中間もありなのが、日本的価値観。それをあえてよく言うなら「柔軟性」だ。アントニオ猪木がWWEに進出しなかったわけ。
両極端という西欧文化
きのうの記事で、スタジオジブリは知らず知らずのうちに、アニメ創造の黄金律を作りつつあるのでは、という勝手な説を展開しました。
つまり2Dと3Dの最適比率を、ジブリはわかっており、落とし所をそろそろ見つけるのではないか、そしてそれはとりも直さず世界が称賛する 「日本の知恵」にほかならない、という主張です。
わたしはそれを「塩梅」と形容しましたが、読者のHさんから、こんなコメントを頂いたのです。
要するに西洋人の判断基準はシロかクロか、しかないというわけです。
もちろん欧米人をいっしょくたにしてはいけませんが、何事にも旗幟鮮明(きしせんめい。態度・主義・主張などがはっきりしていること『広辞苑』読みもできないのに使ってみました)であるという価値観を強く持っている、ことは間違いないと思います。
時として、それは西洋人の価値観と言うよりも、強迫観念に近いのかな、と思うこともありますね。
おそらく幼少の頃から、「自分の意見を持て」と家庭や学校で教育されてきたこともあるのでしょう。
何事もはっきりさせるという精神は、物事を善と悪に決めつける態度につながり、社会もそれに拍手喝采を送ります。
アメリカン・カルチャーとしてのWWE
アニメが日本のカルチャーならば、アメリカのカルチャーはプロレスだと思うんですよ。
そうです、WWEです。
WWEはベビーフェイスvsヒール、つまり善玉vs悪玉の勧善懲悪ストーリーが、その根本的な価値観です。
善と悪が対立する社会に、入り込めないものはスターになれないのです。
アントニオ猪木がなぜ、WWE(旧WWF)に本格侵攻しなかったかの理由は、アメリカでの猪木の立ち位置はベビーフェイスでもないし、ヒールでもなかったからです。
かつてブッシュ大統領がいった言葉が思い出されます。
2002年の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクの三国を名指しして、「悪の枢軸The axis of evil」と決めつけたのです。
この背景にある同時多発テロ事件はセキュリティが不十分だったという意味で、ブッシュ大統領は大いに責められるべきだったのに、この発言で彼は国家的ヒーローになってしまいました。
アメリカにとって「善vs悪」の構図は、ある種、成功の方程式なのです。
アメリカ的価値観では世界を救えない
いま世界はロシアvsウクライナ、イスラエルvsハマスという戦争に巻き込まれて、解決が見えないでいます。
これらの紛争の原因を「善と悪」に決めつける限り、世界に平和はこないでしょう。
善が悪を叩きのめしたところで、遺恨は残り、それが新たな戦争の火種になるのは歴史が証明するところだからです。
ジブリにみる、というか勝手に僕がそう見ているだけですが、「塩梅」つまり白でもなく、クロでもない絶妙なさじ加減という、日本の精神文化が必ず今の世界に貢献できると僕は考えています。
神道的世界観が答えかも
H氏はこんなことも言うのです。
僕は思わず「そうだ!その通りだ!」と膝を打ったのです。
自然と共存し、自然を敬い、崇めてきた日本人の心情は、いま世界が向かっている環境との共存にも期せずして合致します。
日本ブームではなくて、日本の時代が来ている、そう思うのです。
野呂 一郎
清和大学教授
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