見出し画像

高専が生み出す競争力の秘密は「型」にあり。

この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:読者からのメールで考える「高専」とは何か。高専の技術力、創造性の秘密は「身体性」にある。身体性にもっと踏み込むと、そこには「武道の型」があった。トップ画はhttps://qr1.jp/7P5xtH

読者からのメール

読者Hさんからのメールをご紹介します。

大学vs企業大学の話 面白いです。
更に野呂さんに触れて欲しい話として、高専 6年生工業高等専門学校 の台頭です。
ロボコンで昔から話題にはなっていたけど、機械学習(俗に言うAI)の進化と共に高専生とその先生達の優秀さが、機械学習界隈で注目を浴びています。先生には教授の肩書が付いています。
先週横浜で開催された学会で石川県の石川高専の教授がわざわ来ていました。水中ドローンをやっていると言っていました。
彼等の優秀さは、大学生と比べて手も頭も同時に、圧倒的に早く動く、もっと言うと、手の補助に頭を使う。これが機械学習やドローン等の小型化ハードウェアの台頭と、極めて相性が良い。
この2つは、先ず手を出して、失敗して、改善して、また手を出す、このプロセスを高速に繰り返す。彼等の台頭が世の中を面白くする、と思っています。

Hさんよりのメール

生成AIのあやうさ

実験と実習に多くの時間をとって、頭だけでなく体験を通じて技術者を養成する高専。

Hさんが言うように、「手の補助に頭を使う」ことが、クリエイティブな技術を育てているのです。

すっかり現代の代名詞になっている生成AIですが、僕はAIの開発者に
「身体性」がないことに危惧を覚えています。

身体性、とは、まさに高専の生徒のように手を使い、時に全身を使って何かを生み出そうとする営為のことです。

それがない技術や製品は、そこに「人間」を感じないのです。

手は第二の脳

手を使うと脳の広範囲を刺激し、活性化できるということは、よく知られています。

https://qr1.jp/TGeb1N

科学的なことをここで云々するつもりはありませんが、手が第二の脳であることは、我々の経験上真理であることは、疑いの余地はありません。

僕らが大学生の時代はやった、ルービック・キューブ。

四面体をくるくる回すことで、各面を同一色に合わせるパズルです。

https://qr1.jp/oFoDOu

ルービック・キューブは手指の刺激があるからこそ、完成できるのであって、頭だけでは誰も色を合わせることは出来ないでしょう。

易者が、筮竹といって占う時に長い細い木片をジャラジャラとさばいてみせますよね、あれは木片で手指を刺激して、インスピレーションを得ているのです。

https://qr1.jp/SQiN3o

易占いって、最近は筮竹じゃなくて、サイコロでやるのが主流ですが、占い好きの僕としては、筮竹をさばくという手間をかけたほうが、的中率が高いと感じています。

手と指を刺激すると脳が働くことは、noteを書くときにも感じます。

今日も、パソコンのキーを叩いていると、何か着想が湧くし、何者かが執筆を助けてくれることを実感します。

だから、僕はnoteを書くときは、キーワードだけで始めることも多いのです。

ええい、構成が全然できてないけど、書いているうちになんとかなるだろう、態度でいても、なんとか収まりがつく、という具合です。

皆様もそうですよね?

最適化を脳に覚え込ませる「型」カタ

僕は、この高専の「身体性を重視する教育」は、武道の型に似ているんじゃないかと睨んでいます。

僕は空手と合気道と棒術をやっていますが、それぞれに「型」があります。

型とは、相手を制したり、自らを守るために合理的に編成された、一連の身体の動きのことです。

https://qr1.jp/DIDXCY

これを繰り返すことにより、身体が危急の場合に、反応するのです。

型を批判する人がいます。

「あんな架空の状況を想定している時点で、使えない」等というものです。

しかし、それは型をやりこんでないものが言うセリフであり、実際は型を身に着けているものは、どんな状況であってもそれを応用して、最短かつクリエイティブに動き、相手を動けなくしてしまうのです。

思うに、ものづくりというのも、完成のために合理的な身体の動きが、身についていると、ある時にクリエイティブな着想が降りてきて、画期的な製品が出来上がるのではないでしょうか。

高専の生徒の皆さんは、日本の伝統のものづくりの基礎=型をどこかで教わり、それを繰り返しているのではないだろうか、H氏の高専の実態報告を効いて、その様に感じた次第です。

まあいずれにせよ、日本の生産現場には、「身体性」というものが息づいているのは間違いないことで、この伝統を活かし、伸ばすことが、日本の競争力を復活させるきっかけになると信じるものです。

野呂 一郎
清和大学教授


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?