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のり子'sリュック 夏の選抜

明日、家を出る。
行き先は和歌山県。祖父母の家だ。

五日間滞在することに決めている。
居心地のいいあの和室。
静かな田舎町の片隅で、思うぞんぶん紙を弄んでやろうというわけだ。

で、まいど頭を抱える問題が、
「ではどの本を持って行くか?」
これである。

毎年、毎季節、意味のない不安症で必要以上の本をリュックに詰め、無駄に重たい思いをして、実際読むのはそのうち三、四冊程度。
私の和歌山帰郷に成功例はない。

今年はその反省を活かし、選定に関し今まで以上にシビアになろうと決意している。

さて、今年夏(九月初旬は秋?)リュックに詰められるのは?


まず決まっているものがある。

語学の用意。
ドイツ語の教材と、英語の問題集。
これは決まりである。前回はサンスクリット語の教材を持っていき、嫌というほどやった(実際は嫌ではなく楽しかった。言葉の綾だ)
今年はドイツ語にする。近頃ずっとサボっているのもあって、せっかく初級の門をくぐり始めたのにまた後退するわけにはいかない。必死に齧り着こう。

それと、
『論集 日本仏教史 7 江戸時代』圭室文雄編 雄山閣出版
『東アジアの仏教史 13 日本Ⅲ 民衆仏教の定着』末木文美士編 佼成出版社

この二冊。
どちらも江戸時代の仏教について。
大学の図書館で、夏休み故に貸出期間が長いので満を持して借りた。が、まだ全く読んでいない。だから読めるだけ読んでおく。

以上だ。

語学二種と論文集二冊。

うーむ。

私の脳内のそろばんによると、……パチパチパチ……残り三冊……三冊は、持っていける。

さて、たった三つの椅子をかけた、読みかけの本たちの奪い合いが始まる。


エントリー、一覧(ざっと見渡して、持っていってもいいなと思った本たち)

『至福千年』石川淳
『空間の詩学』ガストン・バシュラール
『新古今和歌集』
『「絶対」の探究』バルザック
『坑夫』夏目漱石
『フラニーとゾーイー』サリンジャー
『心』ラフカディオ・ハーン
『薔薇の名前(下)』ウンベルト・エーコ
『ワールズ・エンド・ガーデン』いとうせいこう
『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

なるほど。

……。

なるほどなるほど。

……。

……。

ちょっと、四、五十分もらいます。




お待たせしました。

読んでる方は一瞬の、単なる空白の数行であろうが、こっちとしては大変である。
頭を捻らせ、体をくねらせ、そのうち全身が渦巻きの蚊取り線香みたいになってしまった。重さを比べたり、長さを測ったり、一冊一冊の吉凶を調べたり、とんとん相撲でトーナメントをしたり、果てはワールドカップの勝敗を当てたタコに選ばせてみたりと大仕事なのである。

ともかく本は決定した。

順番に紹介する。

一番……サード……というのは冗談として、

『薔薇の名前(下)』
理由は多くは語らない。読むのである。

『新古今和歌集』
すぐにこの本は決まった。
まず、細かく空いた時間に読みやすい。それにこの本はこれまで電車で読む本として活躍していた。和歌山までの電車でも私を助けるかもしれない。

『至福千年』
ここ最近の一番熱い小説である。
なかなか思うようには読み進まない。
が、この本には畏れている。この世に無数の小説あるが、時に読み始めるなり「この本はすごいぞ!」とほんの数行(時に一行目)で思わされるものがある。これがそれだ。とにかく龍頭。
まだ先は長いが、たっぷり時間をかけて読みたい本なので、事情・ニーズにも符合する。

『フラニーとゾーイー』
『薔薇の名前』にしろ『至福千年』にしろ、それなりに重さがある。文体の重さである。その点、さすがサリンジャー、この本は軽い。良い気分転換になるだろう。

『THE CATCHER IN THE RYE』J.D.SALINGER
エントリー外からの不意の登場で、いきなりの選抜入り。
洋書も一冊欲しいと思った。『フラニーとゾーイー』とサリンジャー被りしているが仕方ない。

『ロバに耳打ち』中島らも
これもエントリー外から入選。
エントリーを発表した時、何かが足りない、欠けていると、漠然とした不安感があった。本を眺める間も。そして中島らもがないことに気がついたのである。
中島らも不足になって禁断症状が出ては危険である。今読みかけの『ビジネス・ナンセンス辞典』というエッセイ集もあるが、読み切るのが怖いので、まだ開いてない本を出してきた。


以上が選抜メンバーである。

三冊と決めて六冊になったのだから、どれだけ私が部屋の中を転がり回ったか想像つかれよう。

さて、明日は早い。
遅くなる前に寝よう。

その前に、持って行く本をもういちど確認して……

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