『いのちの車窓から』新しい景色を映して。
「過去と未来は変えられない。でも今を変え続けることで、過去の意味は変えることができる」
これは、僕の座右の銘にしている言葉だ。
こうした表現はいくつかの本で目にするが、星野源さんが書かれた『いのちの車窓から』というエッセイの文庫版のあとがきにも、こんな一節がある。
僕は昔から彼の音楽や言葉が好きなのだが、特にこの文庫本は普段持ち歩くカバンのポケットにいつも忍ばせてある。僕にとってはお守りのような存在だ。
いわゆる「旅のエッセイ」とか「旅の言葉」みたいな文庫本を他にも持ち歩いたことがあるのだが、実のところあんまりそれらを日常の中で開くことはなかった。
星野さんのエッセイは、ちゃんと「暮らし」の匂いがする。真夜中まで仕事したりゲームしたり、YouTubeで動画を見たり。
だから、その描かれる日々の中で人気ドラマの撮影をしていたり武道館でコンサートをしたりしていても、それが遠くかけ離れた出来事の感じがしない。
僕らからしたらそれがどんなに特別な事態でも、彼にとっての報われなかった過去や日常の積み重ねが、その景色に繋がっているというのが伝わるからだ。
日常の延長線にある旅。重力を振り切って飛び出していくような刹那的で非日常的な旅も好きだが、暮らしの中に一つ一つ枕木を敷いていくような。
そういう営みの尊さを感じさせてくれるから、きっと僕は星野さんの文章や歌を、暮らしと旅の結び目として、ポケットに入れておきたいのだと思う。
昨年、僕はこれまで乗ってきた大企業という列車を下車した。9年勤めた会社からの独立、フリーランスでの複業、FMラジオのパーソナリティーへの挑戦など、色んなことを決断した年だった。
こうして飛び乗った新しい列車がどこに向かうのか、その車窓が何を映していくことになるのかはわからない。
でもこれらの選択を、「あの時やってよかったなあ」と言えるハッピーエンドの伏線として回収するまで、一歩一歩、出来ることをやっていくつもりだ。
去年立ち上げた「Another Scenery = もうひとつの景色」という屋号とラジオで僕が伝えていきたいのは、きっとこういうことなのだろうなと思う。
同じ一つの現実を生きている別の誰かの車窓を覗いてみることで、「この世界も悪くないな」と思えたなら。もしくは「自分にもできるかな」と、新しい道へと踏み出す一歩の後押しができたなら。
そんな誰かにとっての「暮らしと旅の結び目」になれるのであれば、僕にとってこんなに心躍ることはない。
さあ、これから始まる2023年の旅は、どんな景色を見ることができるだろう?
この文章を最後まで読んでくれたあなたと、いつか隣の席や向かいの席で、素敵な景色を共に見ることが出来たなら嬉しい。
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『Another Scenery 〜はたらく人の旅するラジオ〜』は、毎週金曜日23:00〜23:30 FM西東京にて放送中。ブラウザで全国どこでもお聞き頂けます。YouTubeにてアーカイブや切り抜き動画も発信中!詳しくは下記アカウントをチェックしてみてください。
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