「マネージャーへの期待値上がりすぎ」問題について
最近よく思うのは、経営陣からもメンバーからも、マネージャー(中間管理職)への期待値が上がりすぎてるのではということ。経営陣からは事業を現場でリードする責任者として、メンバーからは頼れる相談者・メンターとして、というのを「同時に」期待されるようところがあって、これはとても難しい。私も日々の仕事でマネージャー達を眺めながら、苦戦している人が多いなという印象を持っている。
まず、事業の責任者としての役割。この点については、この記事で書いたように、マネージャーの仕事は「意思決定」である、というところでつまづく人が多い。
マネージャーになる人は、多くの場合は現場の仕事で優れた実績を上げてきたことが前提となっているので、いざ管理職になったあともその強みで勝負しようとしてしまう。
けれど、組織がマネージャーに期待しているのは意思決定だ。限られたリソースを前提に、それをどこにどうやって割り振り、メンバーたちに方向性を示しながら事業を動かしていく。自ら手を動かすのでなく、分岐点となる重要な場面で意思決定することで組織を正しい方向に導けるかがポイントになる。
ここがうまく理解できずに、メンバーたちと一緒になって手を動かすことをマネージャーの仕事と勘違いしてしまい、その結果として質の高い意思決定ができずに、組織としてうまく機能していない例は多い。
次にマネージャーが抱える困難は、部下の心理的サポートについて。
当然だけれど、企業組織におけるマネージャーというのは、多くの人が心理学の教育も受けていないし、カウンセリングやコーチングなどの臨床経験も無いことが普通。
けれど、最近は1 on 1やコーチングなどが流行っていたりして、部下の内面に寄り添うこと、中長期のキャリアの相談に乗ること、などがマネージャーに期待されていたりする。
でも、これはそう簡単ではない。人の内面というのは見えないので、相手が話していることからその感情や真意を類推し、それを踏まえて適切なアドバイスをすることが必要になるが、これってまさにカウンセラーなどのプロが訓練を積んだ上で身につけるスキル。
企業組織におけるマネージャーは、現場で挙げた実績をもとに昇進しているわけで、こうしたカウンセリング的手法を身につける機会はほぼないと言って良い。なので、マネージャーになったからといって部下の心理面の課題解決ができるかというと、多くの人はうまくこなせない。
さらに大きな問題は、人事権を握っている上司、もしくは相性が合わないなと感じている上司に、そもそも部下が本音を話すのかというもの。これは自分を振り返ってみればすぐ分かるけれど、仮に1 on 1であっても、上司に自分の悩みをそのまま話すかと言うとそんなことは稀。大抵の場合は、少しオブラートに包んだ形で話すし、もし相性が合わないと感じている上司には、そもそもそういった話すらしない。
こういう状況で、部下が持っている悩みに寄り添ってその解決を手助けしたり、中長期のキャリア構築をサポートしたり、というのはとても難しいことが理解できるだろう。
こうした中間管理職としてのマネージャーが抱える困難は、経営における重要な論点で、どういった形で対応していくかを日々考えている。どういった方向性での解決がありうるかはまた書いてみたい。
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★ボーナス・トラック★
本文での議論に加えて、「人は自分の悩みを実はよく分かってない」問題について書いています
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