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「心のマネジメント」のトレンドについて

日経産業新聞での連載をもとに、欧米を中心にビジネス分野においても重要性が増してきている、従業員のメンタルヘルス課題への支援や、組織運営における心理学の知見の活用のトレンドについて紹介してきました。

今回はその最終回です。最初の記事は、「感情」の重要性についてです。私がアドビで働いてきた時も、マネージャー全員に「EQ」研修が義務付けられているなど、「感情」の要素はマネジメントやコミュニケーションにおいて重要な意味を持つという視点が明確でした。

このトレンドはアメリカのハイテク企業では広く共有されており、プロダクトにおけるユーザーからの「共感」の重要性とあわせて、感情的な部分を経営にきちんと組み込んでいく姿勢は参考になります。

また、2つ目の記事"求められる「心のマネジメント」への投資"は、今までの連載のまとめになります。欧米発の「ウェルビーイング」「テクノロジー」「新しいリーダーシップ」というトレンドを整理するとともに、その日本への示唆をまとめています。

ご参考になれば幸いです!


「感情」への理解がマネジメントの鍵

世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップ社の2017年の調査によると、日本は「熱意あふれる社員」が6%と調査対象の139カ国中132位だった。また、リクルートワークス研究所の2020年の調査によると、「仕事に満足している」と回答した人は39.9%にとどまっている。

この原因のひとつとして挙げられるのが管理職によるマネジメントの課題だ。人事コンサルティングのリクルートマネジメントソリューションズの2020年の調査では、管理職の69%が「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」と答え、最も困っていることとして「メンバーの育成」が挙がった。ここからは、目の前の業務に追われて部下とうまく向かいきれてない上司と、それによって仕事への動機づけを失っている部下という構図が伺える。

こうした従業員の「動機づけ」の課題に対していま注目されているのが、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー氏とエール大学のピーター・サロビー氏が提唱した「エモーショナル・インテリジェンス(EI)」の概念だ。彼等はEIを「自己および他者の感情をきちんと捉えられること」「感情を深く理解し課題解決につなげられること」「感情の持つ繊細さや複雑さを理解できていること」「自己および他者の感情を目的の達成に向けてうまくコントロールできること」の4つの構成要素から整理した。

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