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eternal flame… 永遠の愛 2

~前回のあらすじ~

日本から訪ねてきた雑誌記者恭子の質問に答える悦子。
悦子はエジプトという異国の地でエジプト人の彼と幸せな日々を
送っている…恭子の質問に答えながら、悦子は今までの彼アミールとの
数々の奇跡を回想していた。
自宅を拝見したい!という恭子の申し出に、もう一つの住まいである
紅海広がるフルガダの自宅に招くことにした。




カイロの空港はいつも埃っぽさを感じる…さすが、砂漠の国だと
毎回同じ感想を抱く自分を悦子は
”私はあの頃のままなのかも…”と不思議な気持ちになるのだ

初めてエジプトを訪れた日のことは色あせることなく心に残っている

全てが悦子にとって初めてのことばかりだった
ひとり旅、航空券の取得、チェックインの仕方、ボーディング、
トランジット、出国と入国…

何度か海外には足を運んでいるにも関わらず
いつも誰かが全てをやってくれるし、後をついて行けばいい
いつも自動的に事が運び、到着。そして、帰国。
今思えば、自ら欲して向かった国なんていうのは無かったのかも
しれないと、今更ながら気が付く自分に苦笑した


「悦子さん!アミールさんとホントに仲が良いですよね…兄妹のように
 思えるんです。何ていうんだろう…お互いを尊重しているみたいな
 対等な関係っていうんですかね。ほら、日本だとその辺はまだ
 男尊女卑みたいなのが薄っすら残っていたりするじゃないですか?
 私も対等な関係性を望むんです…ま、彼氏はいないんですが、
 あはは💧」

恭子にはアミールとの詳しい関係性やここまで来た馴れ初めを全く
話していない…ただ人生のパートナーであることだけを伝えただけ。
悦子はまだ公にしてはいけないと何となく思っていたし、
相手あってのことだから…決して彼を傷つけるような言動やぶっちゃけ
話もしたくはなかった。

「恭子さん、ボーイフレンドはまだいらっしゃらないのね?
 忙しすぎるんじゃない?ホントはもうとっくに出会っていたりして♡」

悦子はあえてアミールの話題から話を逸らそうとしていた。

「え~っ!もう出会ってるんですかね?確かに仕事がどんどん面白くなって
 出会う人全てを仕事と結び付けて考えちゃうんです…この人の話はネタに 
 なるな!とか、この案件、この人だったらどんなふうに解決するんだろ?
 って、頭の中そればっかりですよ。あぁ、私…大丈夫かな?」

恭子の感覚を悦子はとても懐かしく思っていた。
出会う人全てを仕事と結び付けて考えるところはまさに!だった。
とにかく今は仕事を優先!…でもそこには具体的な目標はなかった…
悦子の場合はお金を稼ぐことで、何となく当時の生活から離れられるが
目標だったのだ。

一度、そんな姿を人に
”悦ちゃんは目隠しをしてゴールを目指しているようにしか見えない…”と
言われたことがあった。
図星過ぎて、悦子は何も言い返せなかった。


「悦子さん!ね、悦子さん!こっちこっち!搭乗始まってますよ」
ぴょんぴょん跳ねながら恭子は手招きをした
そんな恭子がとても可愛く、妹のような存在にも思えた。

悦子には妹ではなく、姉と兄がいる。
妹ってどんな感じなんだろう?きっと今、恭子に感じた可愛いという思いが
そうなのかも…


フルガダに向かう機内、隣の席で無邪気にフルガダの街を検索している
恭子の姿が悦子の気分を上げてくれた。

「悦子さん、フルガダにはどれくらい行ってるんですか?」

「そうね、数え切れなくなってるわ(笑)…そうそう、昔は飛行機で行く所
 なんて思ってなくてね。バスで6時間かけて行ってたわ」

「ろ、ろ、6時間!往復12時間じゃないですか!しんどそうなんですけど…」

「そうね、大変だったような…楽しかったような…今は良い思い出よ」

悦子は初めてアミールがフルガダを案内してくれた時のことを
思い出していた。



「明日、朝5時に君をピックアップに来るから、部屋の荷物をまとめて
 チェックアウトを済ませておいてね」
アミールが別れ際に悦子に声をかけた。

エジプシャンは夜が遊ぶ時間なのだ。夜通し遊ぶ、本気で遊ぶのだ。
私は時差ぼけと戦いながらもせっかく来たんだから!と
アミールと彼の友達達と夜の街へと向かった…
特に木曜日の夜は次の日が休みということもあり、街は大勢の人で
賑わっていた。
中には小さな子供まで…子供なんだから、早く寝なさい!はこの国では
ナンセンスなのだろう。

夜遊びと言っても、色々な遊び方がある。
クラブで踊ることもあれば、ビリヤード、ボーリング、シーシャ
(水たばこ)を吸いながら永遠に続くおしゃべり etc.

実際この時、アミールにこの選択肢の中から選んで!と言われた。

シーシャ!やってみたい!…迷わずにリクエスト

悦子は彼の友達の車に乗るように言われ、乗ったはいいが…
車の進む方向がどんどん山奥に向かい、坂をどんどん上って行く💧

”えぇっ💦大丈夫かな?私は一体どこに連れていかれるんだろう…”

”そういえば、ガイドブックにエジプトで用心した方がいいことが書いて
 あったな…レイプ、痴漢にはご用心!特に外国人女性は!
 どうしよう…アミールは別の車だし”


そんな悦子の心配をよそに車は頂上に着いた
駐車場で止まっていると、悦子の座っている方のドアをノックする人がいた

アミールだった。

悦子は全身から力が抜けた…

アミールは笑顔で
「ここからの夜景を君に見せたかったんだ!」とカイロの街が一望できる
 カフェへと悦子を手招きした。

そこは何も遮るものもなく、キラキラと輝くカイロの街が広がっていた。
悦子は先ほどの緊張と美しい景色を観ての感動のギャップに
気持ちがなかなか追いついていかなかったが、
アミールの気持ちがとてもとても嬉しかった。

「ここにはよく来るの?」
悦子はカイロの街から結構離れた気がしたので、距離も気になり
アミールに聞いた。


「悦子、エジプシャンは本気で遊ぶんだ。夜通し語り合い、お互いの友情を
 深めるんだよ。そして、金曜は家族との時間を楽しむ…この繰り返し。
 この場所は大切な友人と来る特別な場所。普段はあまり来ないけどね…
 今日は特別な君がいるから、僕の友達もこの場所を勧めてくれたんだよ、
 lucky you!」


どんなに甘い言葉よりも、何よりも彼の友達を紹介してくれたことが
悦子は嬉しかった。そして、悦子をみんなに紹介してくれたこと…

頂上にあるカフェにはシーシャがあった。
吸うとポコポコポコと可愛らしい音が鳴る。

ひとりひとりに1台のシーシャではなく、その時は二人に1台のシーシャ…
悦子はアミールと1台のシーシャ…パイプを口に咥えて吸うのだが、パイプは
もちろん一つ…最初にアミールが吸い方をやって見せてくれた。
そのパイプを悦子に渡して、try it!  と促す…
悦子はドキドキしていた…アミールと間接キス…そんな小学生みたいなことを考えている自分が恥ずかしくなった。


彼らのおしゃべりは尽きない…
アミールと友達はアラビア語で話し、私が会話に入るときは英語に
切り替わる。こんな何気ない気遣いにも感動していた。

彼らは仕事の愚痴よりも夢を語り合う…
サラリーマンが上司の愚痴を酔った勢い任せに話すのとは訳が違う
この違いはどこから出てくるんだろう?文化?宗教?
悦子の頭の中にはたくさんのクエスチョンマークがあった。

「悦子、明日はフルガダに行くよ!朝早い出発だから、
 今日はもうホテルに戻った方がいい。送っていくよ」


普段だったら、時間も気にせず語りあうのかもしれないなぁ…
と思うと、ごめんよ友達たち!と思った。
時計を見ると、もう明日から今日になっていた…午前三時
出発まで2時間。
その2時間で荷物のパッキングとシャワーを浴びることにした。


2時間後、またアミールに会える!
今度は二人きりの旅だ。
そう思うと悦子はずっと忘れていた感情、
どこかに隠しておいた宝箱がやっと見つかった感覚、
その蓋を開ける不安と期待…
一瞬にしていろんな思いがあふれていた


その時、アミールからの着信があった
「Hey hi!」
彼の声は不安な気持ちをすぐに落ち着かせてくれた…



次回、eternal  flame…永遠の愛 3 をお楽しみに♡







 
 





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