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市内の高齢者デイサービスが休業し始めている。

少々問題が起きている。

市内の高齢者デイサービスが休業し始めている。高齢者介護施設は本人や家族の生活に直結するため、基本的に運営を止めないという方針である。

停止する場合には、厚生労働省に申し出が必要なのだが、どうも引っかかる点がある。今入っている情報のみではあるが、介護度の高い高齢者の通うデイサービスが休業し始めている。

それはつまり、重度介護者(要介護3~5)を、受け入れ可能な施設であり、人員・施設基準を満たしている施設だということである。

いったい何が起きているのか――。

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ご覧の通り、要介護3~5の重度者は、自分で立ち上がることも難しい。勿論、トイレ介助・食事介助が必要となってくる。

他のデイサービスへ行けば?

重度者の介護というのは、家族の支援が難しい場合、すぐに他のサービス利用が必要となる。しかし、他の施設をすぐに利用することはなかなか難易度が高い。

ただでさえ、新規利用者を受け入れる場合、本人の身体的・精神的状態を把握してからでないと、事故に繋がる恐れがあるため、施設側からすると、しっかりと準備をしてから受け入れたい。

通常であれば、家族や本人と面談や体験利用を通じて、どのような介護が必要なのかをご納得頂いてからの利用となる。更に、介護現場はチームで動いているため、ケアマネジャーの立てたプランに基づいて、本人・家族・訪問看護・訪問介護・デイサービス事業者、医師ともしっかり打合せが必要となる。彼らが一同に集まり、担当者会議をする必要がある。一度は顔合わせをして、納得してからの利用となるのが望ましい。

況してや、三密を防ぐため、現在、担当者会議は行えない。新規受け入れは、ハードルが高い。よって、すぐには別のデイサービスへは移行出来ない。


家族も自粛なのだから介護が出来るのでは?

自粛出来ない職業であれば、どうやっても仕事には行かなければならない。実家からは遠く離れた地で生活をしている方々も多い。

これだけ核家族化が進んだ今、これから予測される状況を乗り切るには、大家族制の再構成が出来るだろうか。

ロボットが介護をしてくれるなど、現代の技術では不可能である。まだ人類は、ロボットに頼れる程には技術革新を遂げてはいない。

よって、取り敢えず、訪問看護師・訪問介護員などを自宅へ派遣しなければならなくなる。そして、彼らへの負担が大きくなるし、もしこのような状況が拡大していけば、確実に訪問できる職員は足りなくなるだろう。


施設側の意識が低いのでは?

一瞬、私もそのような考えが過った。
しかし、施設側も、重度者がデイサービスを利用出来なくなれば、生活がどうなるのかくらい分かっている。当然、そのような事は理解している。その上で休業を強行せざるを得ないという状況なのだ。

原因としては幾つか考えられる。

これは憶測だが、入所施設が母体で、デイサービスを併設している場合、施設内感染を予防すること、つまり、クラスターを生まないために執っている対処ではないか。

入所者や、その家族から懸念材料として、介護・看護職員の日々の行動について声が上がることもあるだろう。たとえ短時間勤務のパートタイム職員であっても、自己の感染予防を徹底していくとなると、日々の買い物や子育て、保育所などの利用時に感染しないとは限らない。公共交通機関さえ、利用を控えなければならないだろう。


今回の事態には、実は、ある原因が可視化できる。
ここまでで、お気づきの方もおられるかもしれない。

今回のこの困った状況は、ある、高齢者のニーズが引き起こしている現象であると言える。


高齢者のニーズが引き起こす現象

要介護3~5の利用者のニーズの高いものとして、食事・入浴がある。多くの利用者の目的は、その2点であると言って良い。自宅では、困難であるからである。

食事を提供でき、入浴設備も整っているデイサービスは、どんな施設だろうか。

→主に、入所施設を併設している場合が多い。

単独型デイサービスでは、これらのサービスを提供することが難しい。というのも、入浴設備を完備し、そこに人員を配置することは大変コストが掛かる。そして何より、水。一人一人、清潔な水質を保つためには、膨大な水道料金の負担がのし掛かってくる。

更に飽きの来ない食事を提供するためには、冷めた配食弁当では困難で、厨房を備える必要がある。そして栄養士や調理員などの人員の配置も必要となる。つまり、非常に高い運営基準を満たさなければならない。


クラスター発生を防ぐという課題は、この状況を加速させる恐れがある

一度でも集団感染が発生すれば、広島のような、医療施設の整っていない地方では、施設としては恐ろしいことである。個人で開業している医師も力を合わせなければならないし、今以上の感染者が増え続ければ、一気に医療崩壊を招くことになる。

施設としては、多大な損害、何より入所者、家族、そして職員も、死ぬまで引き摺ってしまう程の、深い心の傷を負うだろう。社会的な差別を受ける可能性も、残念ながら否定は出来ない。

運営側として、どのような対応をするべきか。

職員を施設で寝泊まりさせて、行動を封じるのか。
そのような、総合病院で行われているようなことが可能だろうか。

人口の半分が高齢者である現代社会において、彼らに関わっている介護・看護職員の人数を想像してもらえればと思う。総合病院の比ではない。

それだけの職員を施設から出さないために必要な資金は、正しい運営をしている施設にはない。どこもギリギリの運営費で賄っている。

高齢者施設の運営者が、今後、執ると予測されるのは、
運営規模を縮小して、外からウイルスを持ち込まない最善策だろう。

全ては彼らの判断基準によるが、もはや、優先順位を付けなければならない状況に迫られているように思う。


誰とも会わずに自宅で生活し、どうしても必要な買い物は、家族の中で一番免疫の強い者のみが行う。

この様な行動履歴を以てしても、感染は完全には防げない。その事実を、全ての国民が心から理解することだ。ウイルスは媒体がなければ生存できない。しかし、人間の脳の仕組みにおいて、欲求は抑制出来ないようになっている。行動変容を促すには、何らかの強烈なインパクトが必要である。

前回にも書いたが、例えば女性が妊娠した時、身体は急激に変化していく。その過程は非常につらいものであるが、母親はそれを受け入れるしかない。そして、これまでの生活を変容せざるを得ない。逆に言えば、我が子を思う母親だから、そんなことが可能なのかもしれない。

それほどの強烈な状況にならない限り、行動変容を促すのは不可能なのである。今の政府や自治体の呼びかけでは、全く意味をなさない。それほど、人間の脳は優秀なのである。強烈な誘導に紐付いていない我が国では、行動変容は不可能である。そのことをしっかりと受容していかなければならない。


私たちに出来ること。

デイサービスの休業問題から、その原因を模索して来たが、それを食い止めるために必要なことは何か、今の私たちに出来ることは何か。

“ 決して感染者を差別してはならない ”

そんな願いが叶うだろうか。

※弊社の方針とは関係ない個人的なブログです




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