AFURI商標について思うこと
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今年度、初めての投稿となります。
実は、4月から私が日本弁理士会東海会の副会長を拝命しており、そちらに時間を取られて更新をサボっておりました。約5ヶ月ぶりの記事となります(^_^;
単なる言い訳ですね、すみません、、、
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/
今回は、「AFURI商標について思うこと」を書きます。
インターネット記事で色々と書かれているので、ご存じの人も多いかと思います。
概要を説明すると、商標権者であるAFURI株式会社が、日本酒に商標「雨降/AFURI」を使用している吉川醸造株式会社を提訴したということです。
提訴されたことに対して、吉川醸造は以下のコメントを出しました。
「当サイトにも記載の通り、「雨降(あふり)」銘柄は、丹沢大山の古名「あめふり(あふり)山」と、酒造の神を祀る近隣の大山阿夫利神社(以下「阿夫利神社」といいます)にちなんで命名したものであり、ラベル「雨降」の文字も阿夫利神社の神職に揮毫していただいたものです。
また、当社は「雨降」の読み方としてローマ字のAFURIと記載していること、またそもそも「阿夫利」「あふり」は地域・歴史・文化に根差した名称であることから、当社商標の使用はAFURI社の商標権を侵害するものではないと考えております。AFURI社にご理解を求めてきましたが、訴訟に至ったことは誠に残念です。」
※https://kikkawa-jozo.com/blogs/news/sosho1より引用、下線は坂岡にて記載。
このコメントについて、当時、世間では吉川醸造が正しい、吉川醸造がかわいそう、AFURI社は傲慢だといった意見が大勢を占めていたように思います。
本当にそうでしょうか。
一応、私も法律家といえる職業ですので、商標法の観点から意見を述べてみます。
吉川醸造の主張を極簡単にすると、「あふり」等は山の名前であり地名であるから、他人の登録商標に関係なく使用しても良いということです。
確かに、商標法第3条第1項第3号には、「産地」等を普通に用いられる方法で表示する商標は登録できないとの規定があります。
いわゆる記述的商標は自他商品識別力がないため、登録できないと規定している訳です。
(商標法第26条(商標権の効力が及ばない商標)についても述べるとよいのですが、長くなるので省略します。)
そして、審査基準を見てみると、地理的名称には山岳等の名称も含まれ、当該土地において、商品が生産等されているであろうと一般に認識するときは「産地」に該当して登録されませんよと書いてあります。
とはいっても、AFURI社の登録商標として「AFURI」(指定商品:清酒)は登録されています。
(商標登録第6245408号、出願は平成31年4月)
これは、商標「AFURI」が特許庁の審査において、産地に該当しないと判断されたことを意味しております。
一方、吉川醸造も「雨降」(指定商品:清酒)の商標権を持っています。
こちらは、令和3年1月の出願で商標登録第6409633号です。
念のため説明しますと、商標は出願しても、他人が出願した同一類似の先願商標があれば登録されません。
なぜ、後願の吉川醸造「雨降」が登録されたのかというと、「雨降」から普通に「アメフリ」の称呼が生じ、「アフリ」の称呼は一般的でないからだと推測します。
もし、吉川醸造の出願にかかる商標が「雨降/AFURI」だった場合、AFURI社の商標と類似であると判断され、拒絶される可能性が高くなると考えます。
(実際に吉川醸造は、後で商標「雨降/AFURI」の出願をしていますが、拒絶理由通知が来ています。但し、結果は確定しておらず、今後どうなるかはわかりません。)
さて、ここまで述べて、私なりに吉川醸造の良くなかった点を述べてみます。
1.吉川醸造が「雨降」の商標をいつから使用しているのか定かでないが、仮に古くから使用しているならば、使用を始めた時点で出願していない。
商標に新規性という概念はないため、先に使用していたという主張は原則通用しません。
早い者勝ちです!
2.仮に、AFURI社の出願後に「雨降」の使用を始めたのであれば、わざわざ他社の商標権侵害となる可能性がある商標を使用している。
吉川醸造の「雨降」は、AFURI社の「AFURI」より後の出願であり、出願前の調査でAFURI社の商標がわかっていたはずです。
個人的な考えですが、そこで商標の変更を検討すべきだったのではないでしょうか。
また、「雨降」はともかくとして、「AFURI」の使用は避けるべきだったのではと考えます。
3.登録商標と使用している商標が同一でない
登録商標「雨降」 使用商標「雨降/AFURI」
登録商標に類似する商標を使用した結果、他人の登録商標と誤認混同を起こすと、レアケースですが取消審判の対象となります。
また、自ら「雨降」の称呼が「アフリ」と言っているようなもので、「雨降」に対して無効審判が請求されたときの不利な証拠になります。
(実際に、AFURI社から吉川醸造の商標「雨降」に対して無効審判が請求されています。)
では、逆にAFURI社の行動をみますと、商標法の観点から見ると悪いところはなく、むしろ当たり前だと考えます。
何のために費用を掛けて商標権を持っているのか。
AFURI社の行動が悪いと言われたら、商標の意味がなくなってきます(商標ゴロみたいな会社は除きます)。
もっとも、決着を付けるのは裁判所ですので、ここではあくまでも私見を述べているに過ぎないことをご承知おきください。
反対の意見もあるでしょうし、それはそれでご自由にされてください。この記事に関してのコメントは原則無視します。
最後に、山について他の登録例を見てみましょう。
商標登録第2045059号に商標「富士山」(指定商品:日本酒)というのがありました。
他にも、お酒について「○○山」という商標は多数登録されています。
つまり、お酒に関しては、山岳名の商標は産地に該当しないと判断されていることが多いのではと考えます。
結論を書きますと、吉川醸造が商標「AFURI」の使用を希望するならば他人より先に出願すべきであり、他人に先をこされた以上は異なる商標を使用すべきだったと考えます。
やはり、商標は重要ですね、皆さまも何かある前に商標登録しておきましょう。
いかがでしょうか?
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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