特許で自社の技術力向上を図るには

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、特許で自社の技術力向上を図るにはどうすればよいかを説明します。

 特許というと、中小企業の経営者の人にとって、ある種の魅力があるようです。だから、やみくもに特許を出願するという人も、中にはいらっしゃると思います。
 しかしです、単に特許出願をするだけではあまり効果はありません。喜ぶのは代理人である弁理士だけとなってしまいます。

 では、特許出願に見合う成果を挙げるにはどうすればよいのか?
 ここでは、冒頭にあるように、自社の技術力向上に的を当ててみます。

 事業活動を行なう上で、困ったことを改善していくことは必須の行為です。
 この改善がないと、競争力が次第に低下していき、企業としてジリ貧となる可能性が高いのではないでしょうか。
 では、どうやって改善活動をしていくのか?一番手っ取り早いのは、社内に改善提案制度を設けることです。
 そして、従業員に月に1件以上とかの目標を持ってもらうのです。

 勿論、改善提案制度をするには、それに対する報奨も用意する必要があります。
 棚とか床の表示を追加するようなショボいものであれば、1件あたり100円、技術的な効果が認められる有意義なものであればその程度に応じて500円、1000円・・・と報奨も高く設定します。

 そうやって集めた改善提案の中に、光るものや、効果が大きい優良改善があります。
 この優良改善の中でさらに良いものを抽出して、特許出願するのです。
 すると、特許出願を1件するのに、十数件の優良改善があり、さらにショボいものも含めると全体で数百件の改善提案がなされることになります。

 数百件の改善提案って凄いですよね。
 いくらショボいものでも、数が集まれば企業にとって何らかの利益が出てきますし、技術力の向上を図ることもできます。

 もう一つ話をしますと、従業員のモチベーションが上がるのです。

 特許を出願するとき、願書には「発明者」を記載する欄があります。ここに、発明者である従業員の名前が記載されます。
 そして、特許は出願されると原則として1年半で公開公報が発行されます。すると、公報に発明者として技術者や改善提案をした人の名前が載ります。
 さらに、特許査定となれば、特許公報にも発明者として掲載されます。

 これって、発明者である従業員さんにしてみれば嬉しいですよね。
 益々頑張ろうかって気にもなります。
 さらに、発明者以外の従業員も、次は自分がやってやるという気持ちになります。
 こうしてお互いが切磋琢磨して、社内の技術力向上が図れるのです。
 さらに、中小企業では、朝礼の場などで発明者を表彰してあげると良いですね。
 モチベーションが上がること間違いなしです。

 個人的な話で申し訳ないですが、私(坂岡)は以前、電機メーカーに勤務していました。そのときの職種は、ライン管理であり現場での交代勤務でした。
 当然に、改善提案制度はあるのですが、開発部門と違って特許になるほどの改善というのは中々ありませんでした。
 そんなとき、別工程の同僚が溶接電流の制御方法か何かで特許を取得したのです。
 その同僚は、その後何年もあいつは特許を取ったと言われ続けました。本人としては悪い気はしないと思います。
 また、他の同僚も、あいつにできるならオレもと考えたと思います。

 かなり大きな規模の会社でも上記の様になるのですから、中小企業ではもっと大きな効果が得られるのではないでしょうか。
 特許を活かして出願費用以上の効果を得るのも、出願して終わりとするのも、中小企業では経営者次第です。

 貴社も、特許で自社の技術力向上を図ってみませんか?

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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