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年金管理って何だ?

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「年金管理って何だ?」について説明します。

 年金と聞くと、大抵は国民年金とか厚生年金を想像されます。
 しかし、特許などの世界では毎年の登録料のことを年金といいます。

 登録料がわからない人のために、先ずはここから説明します。
 特許、意匠、商標では、その出願に登録査定がなされてもそれだけでは登録されません。
 権利を維持するためのお金を納めないと、出願却下になってしまうのです。
 この権利を維持するためのお金が登録料です。

 そして、その後も権利を維持したいなら毎年(商標は5年又は10年おき)、登録料(年金)を納付し続ける必要があります。

 もっとも、特許はその存続期間が出願から20年、意匠は出願から25年と決まっていますので、いくらお金を積んでもそれを超えて権利を維持することはできません。

 これは、あまりにも長期間権利を維持することができると、却って産業の発達を阻害するからです。
 例えば、100年以上前の白熱電球に今でも特許権が残っていたら、特許権者しか白熱電球を作れなくなり、産業界全体で見たら困ったことになります。

 他方で商標は、10年毎の更新登録申請をすることで、原則として半永久的にその権利を維持することができます。
 こちらは、長期間使用すればするほど信用が付いてくるためです。
 仮に、20年くらいでそのブランドが他人の手に渡ってしまうことになれば、誰もブランディングをしなくなります。

 ここまで読まれて、読者の方も気付かれたと思うのですが、特許等の権利が不要になれば、年金の納付を取り止めることでその権利を抹消させることができるのです。
 逆に、権利を維持したいのに年金が未納であれば、同じく権利は抹消されます。

 この権利を維持し続けるために、年金納付のタイミングや費用を管理するのが年金管理なのです。
 大抵の特許事務所なら、納付期限の数ヶ月前に手紙を顧客に出して、次の納付はどうしますか?と伺いを立てます。

 お客さんからすると特許事務所が年金管理をしてくれていると思いがちですが、実はこの特許事務所からの手紙は、正式な年金管理でないことが多いと思います。
 というのも、年金管理を請負って、その状態で期限を徒過して権利が抹消されてしまうと、特許事務所はとてつもなく責められます。
 場合によっては億単位の賠償を求められることもあります。

 特許事務所側も保険に入ってそういった事態に備えていることが多いのですが、そもそも1万円くらいの手数料でそんな重責は負いたくないと思っています。
 ですので、殆どの特許事務所は年金管理ではなく、単なるサービスで通知をしますよというスタンスだと思います。

 今度、特許事務所から年金納付伺いの手紙が来たとき、よく内容を見てください。
 免責事項又はそれに近い内容のことが書かれていると思います。

 このため、特許などの権利をお持ちの場合、自社でも年金管理をしておく方が無難なのです。
 もっとも、期限を徒過しても6カ月間は納付の機会があります。その場合、納付額は倍になります。
 普段から特許事務所に年金納付を依頼している案件ですと、特許事務所に文句を言うと増額分は事務所が負担してくれると思いますが、、、笑
 (特許事務所もそれなりのソフトウエアで期限管理をしていますので、このようなことが起こることはあまりありません。)

 気を付けないといけないのは、自社で出願したり、弁理士ではない変な人に依頼して出願したような場合です(ちなみに弁理士以外が業として出願を請負うと犯罪になります)。
 このようなケースでは、年金という言葉すら知らずに、年金管理という概念が全くないことが多いのです。
 このため、社長は権利を持っていると思いながら実は全部抹消されていた、なんてことがかなりの確率で起こります。

 このようなことにならないよう、年金管理にも注意を払ってください。
 ちなみに、中小企業ですと開発部門に年金管理をさせてもおろそかになりがちです。
 年金管理は、総務とか経理部門の方が向いていると思います。

 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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