なぜ特許が推奨されるのか
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「なぜ特許が推奨されるのか」について説明します。
発明はともかくとして、特許出願がなぜ推奨されるのでしょう?
それは、特許が我が国の産業の発展に寄与するからです。
もちろん、その前に特許出願をした企業の発展にも寄与します。
ここで注意点ですが、特許出願が100パーセントの確率で企業の発展に寄与する訳ではありません。
新規事業や新製品の全てが利益を生むわけではないことは、皆さんよくご存じと思います。
どちらかというと、パッとしない方が多いと思います。
特許もこれと同じですので、特許を取得したから大金持ちになれるとか、そういった話ではないのでご注意ください。
本題に戻りまして、特許出願が推奨される理由を説明します。
技術というのは、いきなり1が100に進歩することはあり得ません。
例え話ですが、100年前にもの凄い天才がいても、現在の性能のPCや自動車を作ることは不可能です。
1が2になり、2が3になりという具合に少しずつ進歩して、長年かけて100になるのです。
これを累積的進歩といいます。
当然ですが、累積的進歩はそのときの従来技術を参考にして進歩します。
このとき、企業が技術を全て秘匿化してしまえばどうなるでしょう。
参考にできる従来技術が、社内技術だけになってしまいます。
当然、技術の進歩は遅くなります。
ですので、国としては自国産業の発展のために、発明を公開して欲しいのです。
ただ、公開して欲しいといっても、何のインセンティブもなく企業が公開するわけがありません。
だから、発明を公開する代わりに、出願から最長20年という一定期間(例外あり)、独占排他権を与えますよ、というのが特許制度なのです。
これが、主に我が国の産業の発展に寄与するという理由です。
もう一つ、理由を述べます。
努力してなされた発明を秘匿化できる場合ならまだ良いです。
実際に製品を販売するような場合、秘匿化はかなり難しくなってきます。
殆どの製品は、リバースエンジニアリングによってその技術が丸裸にされてしまいます。
すると、どうなるでしょう。
特許制度がなければ、自分の発明が他人に真似され放題となります。
私のものはあなたのもの、あなたのものは私のものという感じになって、発明意欲や勤労意欲が著しく削がれていきます。
まるで、社会主義国ですね。
これでは産業の発展は見込めません。
(日本もある意味で社会主義国だと思いますが、、、)
これが、特許制度があることによって独占排他権が生じ、優れた発明が公になっても一定期間は特許を取得した企業しか実施できなくなります。
これが、主に特許出願をした企業が受けられる利益です。
特許出願をした企業が受けられる利益は上記の独占排他権だけではありません。
過去の記事(下記URL)にも書きましたが、以下のような間接的な利益も得られます。
https://note.com/norio_sakaoka/n/nc4cc6ce8f01c
・同業他社をけん制することができた
・同業他社との差別化を図ることができた
・自社の信用度が増した
・自社の技術力が向上した
・従業員の士気が向上した
これらの効果によってさらにこんな副次的効果も生まれてきます
・値引きをしなくても売れるようになった
・自社の売上げが向上した
・銀行や知り合いからの顧客紹介が増えた
・融資を受けやすくなった
・従業員が自社製品に誇りを持つようになった
もちろん、特許出願をせずに、あえてその技術を秘匿化する方法もあります。
例えば、製造方法などは権利化しても他人による権利侵害を発見することが困難です。
私が取引のある大企業は、いくら発見されないだろうからといっても他人の権利を侵害することはないのですが、そのような企業ばかりとは限りません。
そういったときはノウハウとして秘匿化することもあります。
但し、人の口に蓋をするというのはかなり難しく、一般には特許出願以上のコストがかかってくるといわれています。
いかがでしょうか、この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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