殿様経営の日本+皇帝経営の韓国=最強企業のつくり方 (金顕哲・野中郁次郎)
近年、サムソンを代表格として「韓国企業」の躍進が大きな脚光を浴びています。同じ業界の日本企業の状況と比較すると、残念ながら、その差は歴然です。
本書は、韓国企業の成功要因を様々な観点から検証し、具体的な実例と平易な文章で分かりやすく解説したものです。
まずは、広く指摘されている点ですが、韓国が意図的にコントロールしている同業種内の「企業絞込み」についてです。
有名な例をあげると、自動車なら現代自動車・起亜自動車、電子産業ならサムスンとLG、鉄鋼業ならポスコといったところですね。
これらの寡占企業は、国内での過度な競争を回避することにより、持てるパワーの大半を国際市場に注力しているのです。
二つ目の韓国企業の特徴は、「会社の位置づけ」すなわち「会社は誰のものか」の答えにあります。
この「オーナー」による強力なリーダシップが、デジタル化時代のスピード経営に大きなアドバンテージをもたらしているとの指摘です。
著者はバルセロナオリンピックのマラソン競技における韓国の黄永祚選手と日本の森下広一選手とのデットヒートをたとえにして、こう解説しています。
このモンジュイックの丘を越えるときには、オーナーの決断力が大きくものを言ったのです。具体的には、現代自動車の大型エンジン開発やサムスン電子の半導体加工技術の選択・LCDパネルへの参入時の意思決定でした。
ここで効くのが「財閥」の力であり、そのトップに君臨するオーナーの決断力です。そして、オーナーは、資金に限らず人材や販売力といった財閥グループ各社のリソースをフル動員するのです。さらに、この決断力は、「不況時ならではの投資」という戦略の実現を可能にします。
とはいえ、完全な「オーナー独裁」ではありません。
オーナーを中心として、その戦略参謀としてのスタッフ組織と実行部隊としての各グループ会社の専門経営者が支えるというフォーメーションが確立されています。
著者は、こういった組織と命令系統が成立するベースには、「格差」を前提にした韓国社会の構造と、「徴兵制」による共通経験があることにも言及しています。
この点、すなわち「格差容認」や「徴兵制」が韓国躍進のクリティカルな構成要素だとすると、そのまま真似するわけにはいかないですね。
(注:本記事は、2010年に初投稿したものの再録です。10年以上を経て韓国企業の隆盛もピークを越した感がありますが、日本はといえば、ずっと低空飛行を続けたままのようです。)
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