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さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (山田 真哉)

 たまたま図書館の棚を眺めていて目についたので、今ごろになって読んでみました。

 「会計」の基本的な知識を、身近な事象を材料に紹介していきます。
 「機会損失」「キャッシュ・フロー」「在庫」・・・、ちょっとでも会計関係の知識のある人にとっては、もの足りない説明です。が、それでも、「話題の取り上げ方」や「初心者への説明の仕方」という点では結構参考になります。

 もちろん、頭ではわかっていても、実際の行動がともなっていない場合もよくあることです。そういう人(私も含めて)にとっては、「反省」のきっかけにもなります。
 たとえば、「費用削減」について。

(p41より引用) 費用の削減はパーセンテージで考えるべきものではなく、絶対額で考えるべきものなのだ。・・・
 ・・・毎日100円節約して、たまにパッと5万円を使った場合、・・・残念ながら赤字である。・・・要は、節約した気になっているだけで会計を見ていないのである。

 こういうことはよくあります。
 ただ、必ずしも「絶対額」だけが絶対指標とは限りません。最終的には、確かに重要なのは「絶対額」です。が、ひとつひとつの施策に取り組むモチベーションを高めるような場合には、「額」が小さくても「率」を目標にすることは有効です。他方、施策間の優先順位をつけたり、それらの結果を総体として評価したりする場合は「額」が重要になるでしょう。
 「率」と「額」は、「結果」だけでなく「プロセス」も重視するときには、うまく使い分けなくてはなりません。

 その他、説明の仕方という点で参考になったのは、「機会損失」の会計的考え方から「目標設定のあり方」をコメントしている部分でした。

(p102より引用) どうせやるならできる限り最大限まで目標を高めに設定したほうがいいということだ。
 最初にモチベーションが湧いたこと自体がチャンスなのである。そのせっかくのやる気、せっかくのチャンスをみすみす逃す手はない。・・・
 ・・・目標の設定値が低いと、どうしても途中で「これくらいでいいか」と思ってしまう。これは、自分ではある程度やったつもりでいるからプラスだと思うかもしれないが、会計的にいうと明らかなマイナスなのである。

 著者の「会計学」の意味づけは、実践的で首肯できるものです。

(p207より引用) 「どうすれば物事を的確にとらえることができるようになるのか?」ということにチャレンジしつづけているのが「会計」という学問なのです。

 会計的な思考・手法を用いて、物事を多角的にとらえたり、その本質をシンプルに表現(数字による可視化)したりするのです。


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