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ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? (高野 誠鮮)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 私のSNSでの友人が激賞していたので手に取ってみた本です。

 舞台は、過疎高齢化により“限界集落”となった石川県羽咋市の神子原地区。主人公は、その神子原地区を卓越したアイデアと不屈のチャレンジ精神で復活させた羽咋市役所職員の高野誠鮮氏、本書の著者です。

 高野氏が成し遂げた素晴らしい成果やそのドラマチックなプロセスについての紹介は本書に譲るとして、ここでは、困難な課題に取り組むにあたっての高野氏の基本姿勢が表れている部分を覚えに書き留めておきます。

 まずは、神子原米の売り込みにあたって発揮された高野氏の戦略思考・マーケティング思考を示すコメントです。

(p121より引用) 要するにストーリー性なんですよね。神小原米を買ったお客様が、これはどうでこうでと人に話したり蘊蓄を傾けたくなる商品にしたかったんです。まずはローマ法王御用達米であること。これだけでも人に話せるエピソードですよね。そして袋にはエルメスの作家を起用していることで、もう1つエピソードが加わります。

 こういう特別なエピソードの存在は、つい人に話したくなります。最も強力なプロモーションである「口コミ・口づての評判」が拡散されるのです。

 もうひとつは、高野氏の「人の動かし方」。メンタリティやモチベーションといった観点からの切り口です。

 地域の活性化はすべての市町村の課題でしょう。「町おこし」「村おこし」の施策は、日本全国のありとあらゆるところでそれこそ山のように取り組まれています。そして、その多くが長続きせず失敗に終わっています。
 高野氏は、行政主導型の村おこし施策には否定的です。住民の方々が真に立ち上がらないと成功しないと考えています。

(p175より引用) だったら「心おこし」を最初にやらなきゃいけないと。心をおこさない限りは、みんなのやる気がおこってこないんですよ。いくら立派な道路や立派な施設を造ったり、企業誘致をしたところで、心がおきない限りは何にもならないんです。

 そこで、高野氏が始めたのが「羽咋ギネスブック」の作成でした。羽咋の良いところを見つけること、各家の自慢を持ち寄ること・・・、こういうシンプルな営みからでも、人は活き活きとしてくるのです。

 そして、最後は、高野氏の徹底した実践を伴う「プラス思考」
 「可能性の無視は最大の悪策」というのが、高野氏の信念でした。1%でも可能性があれば、まず挑戦してみる。一言でいえば「プラス思考」ですが、それぞれの人に染み付いた考え方を変えることはなかなか簡単にはできません。
 ここにも高野氏流に工夫された具体的アクションがありました。

(p182より引用) どうしたらマイナスとなったところをプラスとしてとらえるか?ということです。どうすれば建設的に考えられるかというと、一度喜んでみるんです。そうすると、知恵が湧いてくるんです。

 「羽咋村から人が流出していく」。これも、喜んでみる。そうすると、「全国に散らばった羽咋村の出身者を羽咋村の物産の消費者・PRマンとして考えよう」といった発想が生まれてくるのです。

 ともかく、本書に書かれている内容は本物のリアリティに溢れています。ワクワクするような高野氏のアグレッシブな行動力は、ものすごい刺激になりますね。



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