見出し画像

裁判官の爆笑お言葉集 (長嶺 超輝)

 著者の長嶺超輝氏は、法学部を卒業の後、弁護士を目指し司法試験に数度挑戦した経歴をもっています。
 そういう著者が、自ら傍聴した裁判や新聞報道の中で、印象に残った「裁判官の言葉」を収録しそれぞれに短いコメントを加えたものです。

 「語録集」の場合、私が気にするのは、
 ・「どういうテーマ」のことばを対象とするか
 ・テーマにあった数々のことばから「どのことば」を選び出すか
 ・選び出したことばに対して「どういう評価・コメント」を加えるか
という3つの観点です。
 この3点に、選者の考え方や価値観が明瞭に表れます。

 その観点からいうと、まずは、「裁判官の法廷での発言」をテーマに取り上げた点。これは、今までには見られなかった視点であり、オリジナリティのある興味深い着眼だと思いました。

 ふたつめの「選ばれたことば」について。

(p9より引用) 裁判官は建前としては「法の声のみを語るべき」とされていますが、法廷ではしばしば裁判官の肉声が聞かれます。私情を抑えきれず思わず本音がこぼれてしまうこともあれば、冒頭の山室判事のように、人の心に直接響く「詩」や「名言」などをあえて借りるといったこともあります。

 この点、個人的な希望としては、もう少し収録内容が充実していればと感じました。法廷の中では、おそらくは、もっともっと深い言葉・重い言葉が、それこそ山のように埋もれている気がします。

 3点目の著者による解説(評価・コメント)の部分ですが、ここはどうでしょう・・・、それこそ個々人の好みでもありますから・・・

 テーマ設定においては秀逸さが感じられるだけに、収録内容やコメントについては正直なところちょっと物足りない感じが際立ってしまいます。
 残念です。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?