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昭和の名人この一席 (稲田 和浩)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 落語を聴くのは好きです。ただ、好みの落語家さんは数人に限られているんですね。三代目古今亭志ん朝師匠、三代目桂米朝師匠、二代目桂枝雀師匠・・・、と並ぶとかなりオーソドックスです。

 本書は、いつも利用している図書館の新着本リストで見つけたのですが、もっといろいろな落語家さんのことを知っておきたいと思い手に取ってみました。

 柳家金語楼をはじめとした東西50人の落語家さんを取り上げ、その略歴、エピソード、「この一席」を紹介したものです。
 その中から、印象に残ったくだりをいくつか書き留めておきます。

 まずは、八代目橘家圓蔵師匠
 昭和40年代、五代目月の家圓鏡のころからテレビ・ラジオで大人気でした。

(p200より引用) 圓蔵は「よいしょの圓鏡」と呼ばれていたくらい気遣いの人。 だから、主人の気持ちがわかるのだ。気遣っても、それが届かないもどかしさ。そして、気遣いの辛さも。
 圓蔵は弟子たちに言っていた。「お前たちと飯を食うのが楽しい。気遣いしなくていいから」。弟子といる時が心休まる時であり、また、その言葉も弟子たちへの気遣いであった。

 圓蔵師匠の心優しい人柄が表れたエピソードですね。

 そして、二代目桂枝雀師匠
 本書では、上方落語の噺家さんは5人しか紹介されていません。“四天王” と呼ばれた六代目笑福亭松鶴師匠、三代目桂米朝師匠、三代目桂春團治師匠、五代目桂文枝師匠に、二代目桂枝雀師匠です。私の大好きな噺家さんの一人。師匠の十八番のひとつ「代書屋」の「せーねんがっぴ!」は何度聞いても最高です。

(p243より引用) どんな時も枝雀ワールドは枝雀一人のエンターテインメント。 面白くて、面白くて、ただただ面白い。いま、CDを聞いても、仕草や表情を思い出し、泣きたくなるくらい面白い。その面白さを構築するのが、どれだけ大変だったのか。
 枝雀の死は突然やって来た。まさかという死に方には、ただただ言葉がなかった。

 さて、一通り読み終えてです。

 私も、本書で紹介された落語家さんのCDは少しはコレクションしています。せっかくですから今まで食わず嫌いだった落語家さんの話も、これを機にまた改めて少しずつでも聞いてみることにしましょう。



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