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日本赤軍! 世界を疾走した群像 (重信 房子 他)

 たまたま、いつも行っている図書館の新着図書の棚で目についたので借りてみました。

 赤軍派、連合赤軍、日本赤軍・・・と並べられてもその思想信条等について興味を抱いたことはありません。ただ、赤軍派による「日航機よど号ハイジャック」や連合赤軍が起こした「あさま山荘事件」については、私は当時まだ小学生でしたが、テレビ中継等の映像も含めて記憶には強く残っています。

 本書は、60年代・70年代、日本および世界の社会において特異な活動体であったグループの主要人物をとりあげ、彼らとの書簡のやりとりやインタビューを取りまとめたものです。インタビュアーの小嵐九八郎氏も当時の活動家のひとりでした。

 以下に、それらのインタビューの中から、いろいろな意味で私の興味を惹いた部分をいくつか書き留めておきます。

 まずは、「ハイジャック」について、元赤軍派議長塩見孝也氏の述懐です。

(p47より引用) ハイジャックの基本理念、三ブロック同時革命ね、・・・これは今でも間違っていないと思う。しかし、軍事思想に関しては完全に間違いだったと思う。つまり、近代輸送装置の飛行機を乗っとること自体は簡単だと思うけど、乗客、民衆を盾にして自らの主張を通すという思想が、根本的に間違っていると思います。

 次は、元日本赤軍リーダー重信房子氏の語る「日本赤軍の活動からみた教訓」

(p122より引用) ・・・「現実的な社会変革への地道なかかわり」を育ててほしいと願っています。ラジカルな思想や戦略は、必ずしも急進的戦術であることを意味しません。そのことを経験の中で学びました。ラジカルで根底的な思想と戦略は、却って寛容で多様な戦術を必要とします。小さくても、一つ一つ勝利感をもてるような多様な戦術・方法によって、日本の今の社会を変える力を育ててほしいと思っています。

 個々の単語の意味するところは私がイメージするものと異なるのかもしれませんし、使われている単語も必ずしも共感を抱くものではありませんが、変革への姿勢という点では首肯できるところを含んだコメントだと思います。

 そして、日本赤軍にも所属していた足立正生氏による「アラブにおける民族主義と国際主義」の位置づけについてのくだり。

(p207より引用) ヨーロッパの近代植民地主義が勝手に占領して国境線を引いて分割したけれども、人びとは「国民」になる前に、植民地化される前の地域丸ごとの民族意識の方が先にある。日本でいわれる「民族主義」は、国境の中に閉じ込められた排外主義的なものをいいますが、アラブでは逆で、民族主義が国境を越えた国際主義になる。

 最後に、再び塩見孝也氏からの「今の若者へのメッセージ」。

(p57より引用) ものごとを一貫して考えて、原則をもって哲学していくような思考は、今の若者にはないと思いますよ。しかし、・・・やはりしたいことをしろというか、いったんぶつかった壁を考え続けろというのか、自分を恃みにして自分流に生きろ、というのが一番だと思いますね。

 生きた時代や思想は異なります。また、実際に執られた行動も私にとって理解できるものではありませんが、今まで近づかなかったものにも触れてみると、改めて「相似と相違」という観点からものごとを考えることができますね。



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