ガラパゴス化する日本 (吉川 尚宏)
本書の「はじめに」によると、昨今人口に膾炙している「ガラパゴス化」という言葉は、北俊一氏による論文「日本は本当にケータイ先進国なのかガラパゴス諸島なのか」で使われたのが最初とのことです。
本書では、この「ガラパゴス化」というコンセプトを、まず3つにカテゴライズして論を進めていきます。
「携帯電話」を代表例にしたガラパゴス化は「日本製品のガラパゴス化」です。
これは、正にクリステンセンが「イノベーションのジレンマ」で指摘している「先行者が後続者に逆転される市場構造・競争条件の変化の仕組み」そのものと言えます。
さて、本書では、先の「3つのガラパゴス化」の中で、「日本という国のガラパゴス化」について相対的に多くのボリュームを割いて説明しています。
仮に「日本製品のガラパゴス化」だけが解消され、当該企業がその活動の軸足を海外に完全に移してしまうとどうなるでしょう。それこそ、日本という国は、人口が年々減少しそれと連動して縮小する市場と運命をともにすることになります。
日本企業の「脱ガラパゴス化」はもとより、同時に外資系企業の誘致等による「日本という国の脱ガラパゴス化」も図らなくてはなりません。
それでは、どうすれば「日本という国の脱ガラパゴス化」が実現できるのか。本書の最終章は「脱ガラパゴス化へのヒント」と銘打って、国際競争市場における「ルールの創造・変更」の重要性を指摘しています。
もうひとつ、興味深い提案として示されているのが「霞が関商社化シナリオ」です。
意味するところが不明瞭な「国際競争力」という言葉が先に立って、「国・政府」として具体的に何をするのかがきちんと議論されていないのではないかという問題意識です。
本書で論じられている著者の指摘は、一種の「日本列島改造論」です。
国際的にも核となりうる大都市を中心に「道州制」的発想で、海外との資本・人材・知識のハイブリッド化を推進するとの考えのようです。
このあたり、かなり強引な立論でもあり意見が分かれるところでしょうが、明確な意見を提示するという姿勢は評価すべきですね。
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