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平和をつくった世界の20人 (K.ベラー/H.チェイス)

 本書は「岩波ジュニア新書」のシリーズですが、自分にあまり馴染みのないテーマについて学ぶには、分りやすくて手ごろだと思います。

 登場するのは、様々な取り組みで「平和」を築くことに貢献した20人の人物です。ノーベル平和賞等の受賞者で誰でも知っているような人もいれば、功績に比してそれほど人口に膾炙されていない人も紹介されています。

 たとえば、私にとって、本書を読むまで恥ずかしながら知らなかった人物、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
 19世紀を生きた人ですが、「平和で簡素な生活」の必要性を説いたとのこと。彼のエッセイ「一市民の反抗」は、後に、「非暴力による差別撤廃」を訴えたマハトマ・ガンディーやキング牧師にも大きな影響を与えたそうです。

 そのソローの言葉です。

(p12より引用)
 悪の小枝を切り払おうとする人は数え切れないが、悪の根を断ち切ろうとする人は少ない。
There are a thousand hacking at the branches of evil to one who is striking at the root.

 そして、非暴力により人種差別撤廃を訴え続けたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア

(p36より引用)
 暗闇は暗闇を追い払うことはできません-光のみがそうできるのです。憎しみは憎しみを追い払うことはできません-愛のみがそうできるのです。
 Darkness cannot drive out darkness; only light can do that. Hate cannot drive out hate; only love can do that.

 キング牧師と同様に南アフリカのアパルトヘイト撤廃に尽力したデズモンド・ツツ大主教
 彼がとった「自らが犯した人権侵害を謝罪した加害者を赦す」というやり方に対しては、彼を支持する人々の中からも非難する声があがりました。
 これに対するツツ大司教の言葉です。

(p123より引用) 「おそらく正義にはならない、と言う人もいるかもしれませんが、それは、正義と聞いて思い浮かべる概念が〈応報的司法〉で、その主な目的が罰することである場合のみです」「私たちにはもう一つの正義があるのです。それは〈修復的司法〉です・・・。その主なねらいは、不和を解消し、不公平を正し、壊れた関係を元にもどすことなのです・・・」

 「赦す」ということは、単に「過去のことを水に流す」といったことではありません。「赦す」ことの代償は「新しくやり直すこと」であり、「赦す」ことはそのための重要なプロセスだというのです。

 さて、最後にご紹介するのは、「非暴力主義」で有名なマハトマ・ガンディーの言葉。

(p25より引用)
 私の人生こそが、私のメッセージです。
 My life is my message.

 自信をもってこう語れる生き様は、想像を絶する苦難の連続だったはずです。本当に素晴らしい言葉だと思います。



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