ビジネスプロフェッショナルの仕事力 (日本経済新聞出版社)
劣後順位
登場するメンバは、今日のビジネス書の世界では超豪華なラインナップです。
御立尚資氏・本田直之氏・勝間和代氏・石田淳氏・糸井重里氏・田坂広志氏・冨山和彦氏(糸井氏は、超有名人ではありますが、あまりビジネス書には登場しませんね)。
本書は、ヘッドハンターとして活躍中の岡島悦子氏が「情報活用力」をテーマに、「心・技・体」という切り口から上記の7名の方々にインタビューしたエッセンスをまとめたものです。
ひとりあたり20~30ページのボリュームなので、正直なところ内容の深さについては物足りなさが残ります。
とはいえ、各氏の著作での主張のリマインドを兼ねて、本書で紹介されているいくつかのコメントをノートしてみます。
まずは、「レバレッジ・リーディング」等、一連の「レバレッジ・シリーズ」で有名な本田直之氏のアドバイスです。
(p34より引用) 「どの情報が大事か」という優先順位よりも、「どの情報が不要か」という劣後順位をクリアにしていかないといけないのです。そうやって仕分けして、どんどんカットして、その中で残ったものがキーとなる。そういう割り切った処理をしていかないと、情報を集めるだけ集めて結局使いこなせないということになります。
私のように、本質的なものを選び出す力が未熟な場合には、明らかに重要でないものを消去していくやり方は確かに現実的かつ有効だと思います。
「レバレッジ・リーディング」という本での本田氏の主張はあまり私には合いませんでしたが、本書でのコメントには共感できるものがいくつかありました。
(p36より引用) 判断基準がないから必要な情報が見分けられないのではなく、必要な情報を見分けようとするうちに判断基準が次第に確固たるものになってくるのです。
(p46より引用) 応用で済ませられる部分は徹底的にライバルや他者のやり方を研究してレバレッジをかける一方で、独自の視点や戦略を練ることには十分に時間も手間もかけることが大切です。力の入れ方にメリハリをつけるわけですね。
「8」を大切に
錚錚たるメンバの中からもうひとり、組織で成果を挙げるための「行動科学マネジメント」を提唱している石田淳氏のコメントをご紹介します。
石田氏の著作としては、以前「すごい実行力」という本を読んだことがあります。
石田氏は、「2:8の法則」の「8」の方に注目し、8割の人を活性化することによるチーム力の向上を勧めています。
その具体的な方法が、「明確な行動目標の呈示」に代表される「行動科学マネジメント」という手法です。
(p79より引用) 行動科学マネジメントが目指しているのは、全ての社員が理解できるようにピンポイントで仕事のやり方を言語化して伝え、それを自発的に再現できる環境を作ること。つまり、情報を最適化することで、社員が喜んで仕事をするための環境を作るということなのです。
「8割」に注目すると、評価方法も異なってきます。
最大多数のやる気を向上させるためには、最終目標を達成した少数を褒めるのではなく、プロセスとしての行動目標を達成した多数を褒める方が望ましいとの主張です。
(p83より引用) 重要なのは、楽しく仕事をしてもらうこと。一番いけないのは、月間・年間のMVPを表彰するようなことです。・・・特定な人を評価するより、ある行動をした人全員を評価するほうが生産性は上がるというデータもあります。「自分も頑張ればできる」という情報の与え方を心がけるということです。
「2:8の法則」については、どうも「選択と集中」といった呪文に囚われて「2」の方につい目がいってしまいます。が、「8」への注目は、そういう思い込み的マネジメントへの反省という意味でも大事な「バランス感覚」だと思います。
「バランス感覚」といえば、最後に御立尚資氏の「ワーク・ライフ・バランス」についてのコメントをご紹介しておきます。
(p26より引用) ワーク・ライフ・バランスという言葉がありますけど、そもそもワークはライフの一部ですしね。ワークは嫌なもの、苦行、仕方なく売り渡している時間で、ライフはそれ以外の楽しむ時間だと考えてしまったら、仕事なんてやっていられないし、プロフェッショナルは苦行が一番うまい人ということになってしまいます。
これも「A or B」という二者択一的な発想ではなく、より俯瞰的な立ち位置からの気づきのコメントです。
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