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アインシュタイン相対性理論の誕生 (安孫子 誠也)

 現代の物理学に大きな影響を及ぼしたアインシュタイン三大業績(ブラウン運動の理論・光量子論・特殊相対性理論)は、彼が26歳のとき(1905年)、しかもわずか4ヶ月の間に発表されたと言います。

 本書は、アインシュタインを取り巻く種々の文書(各種論文をはじめとしてノートや手紙も含む)から、三大業績さらには一般相対性理論に至る思索の道程を丁寧に辿って行きます。
 物理学に詳しい人にとっては、興味深い内容だと思います。

 ニュートンは、(その真偽には疑義もあるようですが)りんごが木から落ちるのを見て「万有引力の法則」のヒントを得たと言われています。
 同じように、アインシュタインが「一般相対性理論」に至るにも突然の気付きがあったようです。

(p147より引用) 私は特許局における一つの椅子に座っていました。そのとき突然一つの思想が私に湧いたのです。
「ある一人の人間が自由に落ちたとしたなら、その人は自分の重さを感じないに違いない」
私ははっと思いました。この簡単な思考は私に実に深い印象を与えたのです。私はこの感激によって重力の理論へ自分を進ませ得たのです。私は考え続けました。
「人が落ちるときには加速度をもっている。この人間が判断する事柄は即ち加速度のある系に於けるものに外ならない」
 と。そこで私は単に一様な速さで動く系だけでなく、加速度をもつ系にまで一般に相対性原理を拡張しようと決心したのでした。

 本書では、アインシュタインが如何にして「相対性理論」に至ったかの考察のほかに、いくつかの「相対性理論をめぐる論争」についても紹介・解説しています。

 特に「特殊相対性理論はアインシュタインのオリジナルか」とのテーマは、「ローレンツ-アインシュタイン問題」として有名なものです。
 物理学の素人である私にとっては、このあたりの議論の内容は理解しきれません。しかしながら、その議論の過程は結構面白く感じます。

 また、「一般相対性理論」は必要かとの章も関心を引きました。
 「特殊相対性理論」は座標軸どうしの相対速度が一定である場合を扱い、「一般相対性理論」は座標軸どうしが互いに加速度運動をしている場合を扱います。

(p231より引用) 加速度系は、瞬間瞬間に相対速度が変わる等速度系で置き換えることができるから、そこで生じる事柄は特殊相対性理論によって検討することが可能である。

との説明には(私のような素人は)納得してしまいます。

 しかしながら、著者は(もちろんアインシュタインも)否定します。「計算方法」の領域の問題ではなく「概念的問題」の領域だと言いうのです。
 やはり、このあたりを理解するためには、きちんと物理学探求における基本的思考方法を勉強しなくてはだめですね。


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