政治家の殺し方 (中田 宏)
(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
著者の中田宏氏は前横浜市長。
多選現職市長に替わり若手改革派として当選、世間の脚光を浴びましたが、任期途中、数々のスキャンダル疑惑でマスコミを賑わせました。それらの疑惑から派生した裁判の結果は中田氏の勝訴、しかしながら、政治的には大きなダメージを受けました。
本書は、その中田氏が、自らの身の潔白を示すために当時の実態を語った告白の書です。
紹介されているエピソードからは、地方政治のある側面からみた現実を垣間見ることができます。もちろん、本書での中田氏の主張の正否については、何の傍証・反証を持たない私には判断不可です。
ただ、少なくとも、なんらかの意図的な工作があったこと、また、それらを十分な検証なくして増幅させた一部マスコミの動きがあったことは事実だったのでしょう。
中田氏の批判の矛先は、矜持を無くしたマスコミにも向けられます。
さて、参考までにですが、本書で中田氏から、スキャンダル疑惑の発信源とされたベテラン議員からの反論は今でもネット上でチェックすることができますし、当の市議自身のブログでも取り上げているようです。こちらにもざっと目を通さなくてはフェアとはいえないのでしょうか・・・。
それら以外にも、本書をめぐってはいろいろな意見が開陳されています。(たとえば「櫻井よしこ」さんのブログ)
何が真実なのかという点は、もちろん重要です。ただ、正直なところいい加減にして欲しいという感じも抱いてしまいます。そんな議論を延々としている場合ではないだろうと。(真実を主張しているであろう関係者には申し訳ないのですが・・・)
せめて、こういったスキャンダラスな案件の追及が、不透明な政治決断・行政執行の実態を顕かにし、それらを根絶やしにする生産的な契機となればと思います。
中田氏も、本書の中でこう語っています。
私は、政治的に中田氏を支持するものではありませんが、中田氏が市長在任中に多くの旧弊を是正し、具体的な改革施策を推し進めたのは事実でしょう。
最近の地方行政において勢いづいている「善悪二元論」的な政治手法も、その根底にある精神の正否により、単なる「手段選択」の問題なのか否かが判断・評価されるものだと思います。
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